綿ダッコ / 第25話

第24話 気遣いは大事

 「舞子姉さまだからですよ。私にとって、大事な姉さまなんですから」 「…………雅道は?」 「…………側で警備する以上、舞子様に気遣いできないで、存在価値はありません」 「でも、侍司は…………」 「分かっています。けど、これは私の信念ですので」  誰かが気付かないといけない。  今回は治輔が居たけど、毎日居るわけじゃない。 「…………ありがとう」  舞子の顔色が少し戻った気がした。 ◇ ◇ ◇ ◇  宴の後の夜は治輔がずっと居た。  治輔が少し寝ていいと言ってくれたおかげで、今日一日も働けるだろう。  舞子の顔色も、起きた頃には良くなっていた。  一子を抱えた安良子さんと、その後に和子さんが部屋に戻ってきた。 「皆、ありがとう。寝れていないでしょう?」 「いえ、交代しながら寝ましたので」 「私たちも、雅道と交代で寝ていますので」  有能な上司って、こういう人達のことを言うのかもしれんな。 「そう。巳之助は居るかしら?」 「はい、舞子様」  …………聞こえてたの?  直接確認する音量ではなかったで…………? 「今日一日は、誰も入れないでちょうだい」 「承知致しました」  まぁ、体調的にもそれが一番ええかもしれんな。 ◇ ◇ ◇ ◇  舞子達が寝るまで何も無かった。  この日だけを見れば、平和そのものだった。  夜になって、安良子さんと一緒に下がろうと、廊下に出た。 ——ガシャーーン 「「何事ですか!?」」  安良子さんと帰ろうとしたその時、部屋の中から何かが崩れる音がした。  俺たちは慌てて部屋の中に入る。  中は、月明かりだけしか光源がなくて暗かった。  安良子さんが、持っていたロウソクに火をつける。  そこには、倒れた机と謎の紙、尻餅をついている清見女房がいた。  舞子も心配して近寄ってくる。  一子は寝ていた。  …………起きる基準が分からんな。 「いたた…………。申し訳ありません!!」  清見女房は、尻餅をついた腰を慌てて起こして、見たことないほどの土下座をしていた。 「…………こんな夜中にどうしたの?」  舞子は困惑しながらも、清見女房に声をかけていた。  俺ならこんな対応出来んやろな…………。 「それが、この文をお渡ししようと思っていたのですが…………」  清見女房は、散乱していた謎の紙を舞子の前に差し出した。 「誰からの?」 「舞子様のお母様からでございます」  舞子は封を開いて、中身を確認する。  中からは、2枚の紙が出てきた。  危ないものではなさそうだ。  安良子さんは、持っていたロウソクを舞子の近くに置く。 「…………そう。なんで、そこに置こうと思ったの?」  舞子は紙を一読した後、清見女房に尋ねていた。  清見女房は、おどおどした様子で目を泳がせていた。 「その…………寝ておられましたので、起こすのは失礼かと…………」 「そう。清見女房なりに考えたのね?」 「はい…………。ご無礼、失礼いたしました…………」  そう言って、清見女房はもう一度土下座をしていた。 「なら良いわ。3人ともお休みなさい」 「「「お休みなさいませ」」」  舞子は布団の方へ戻っていった。  俺たちも、外へ出る。  未だに清見女房はオロオロしながら、戻っていった。 「雅道さん、お休みなさい」 「お休みなさい」  安良子さんは、俺に一礼をして去っていった。  その顔には少し笑顔が混じっていたような気がする。  どっちにせよ、月明かりが背後にあって、なおさら綺麗だった。

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