綿ダッコ / 第53話
第52話 来た!?
一体、なんやったんや。
右手から視線を離せない。
でも、おまじないって言ってたし、俺が知らんかっただけかな?
「安良子、雅道、おかえり」
部屋には、清見女房と舞子しか居なかった。
いつも通り、上級女房は部屋に帰したのだろう。
…………というか、帰す基準が分からんな。
「雅道」
「は、はい」
「昨日のことを気にしているの?」
…………まだ、顔に出ているのだろうか。
「来た時から顔に出ているわよ」
「も、申し訳ありません…………」
「謝らなくて良いわよ」
舞子は、真剣な表情をしていた。
「私はあなたを信じるって言ったでしょう」
「…………はい」
「なら、いつも通りにしてちょうだい。何も処罰しないから」
「…………承知致しました」
◇ ◇ ◇ ◇
漢詩の授業が始まった。
…………舞子を信じよう。
あの目はきっと、本当のことを言っている。
きっと。
「舞子様、少しよろしいでしょうか?」
始まってすぐ、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
…………然子だ。
何をしに来たんや。
「…………ええ、清見女房、上げてちょうだい」
そこには、最初に会った時と同じ服装をした然子が居た。
「…………何かご用?」
桜晴のことは、舞子と俺しか知らない。
けど、部屋の空気が凍っている。
「ええ、少し桜晴様にお会いしようかと」
相変わらず、不気味な笑みを浮かべている。
然子は、何も言わず桜晴の頭を撫でていた。
…………違和感しかない。
「…………用は済んだかしら?」
一刻も早く、然子から離したいのだろう。
明らかに、桜晴を守ろうとする姿勢になっている。
「ええ、ありがとうございました」
然子は潔く出ていった。
…………それすらも、不気味に感じる。
「舞子様、あのお方は…………」
「……清見女房、あの方は然子さんよ。八子さんの妹さん」
「でも、内妃様になられたとの噂はありませんが…………」
「|女妃《にょうひ》よ」
そういえば、女妃は何人居るのだろうか。
ただ、今のところは舞子だけが正妻になれる位。
…………もちろん、史実改変が起きなかったらやけど。
「……さぁ、再開しましょうか」
桜晴、どうなるのだろうか。
…………舞子の元にいる間は、絶対に守る。