綿ダッコ / 第49話

第48話 勘違い!?

 「安良子、大丈夫だったの!?」  部屋に着いた瞬間、舞子は安良子さんに駆け寄った。  その後、飛びついて心配していた。  安良子さんは、その衝撃で後ろに倒れそうになっていた。  しかし、安良子さんも舞子も泣いている。  そんなことには気付いていない様子だった。 「部屋が荒らされている様子もありませんでした。不届き者は居なかったかと」  安良子さんが言葉を発せないほど泣いていたから、代わりに報告した。 「安良子、安良子…………」  …………舞子の耳には届いていなさそうだった。 「(雅道、舞子様がああなると、しばらく離れないわよ)」  清見女房の様子を見ると、どこかゲッソリしているような気がした。 ◇ ◇ ◇ ◇  気が済んだのか、舞子が安良子さんから離れた。  安良子さんもさっきよりゲッソリしている様子だった。 「良かった。清見女房も安良子も、もし戻らなかったらって心配してた…………」 「「舞子様…………」」  この様子だと、いじめにも気付いているのか…………?  でもそれなら、舞子は止めるはずだよな…………。 「3人とも、しばらく休みなさい。私は大丈夫だから」  舞子なりの優しさなのだろう。  しかし、意図が読み取れない。  そもそも、いじめであることを気付いているのかすら、確証はない。 「「「承知致しました…………」」」 ◇ ◇ ◇ ◇  休みを貰ってから数日、舞子は未だに休み状態を解除する気は無さそうだった。 「(長くないですか?)」 「(そうですよね…………)」  休みと言っても、何もすることがないから、連日、安良子さんの部屋に行って、色々話し合った。 「(雅道、安良子、いるの?)」  外から清見女房が話しかけてきた。  安良子さんが御簾を上げる。 「(清見女房さん、なぜここに…………?)」 「(厠に行ったら、声が聞こえてきたから…………)」 「(声、漏れていたんですか…………!?)」 「(良く聞かないと聞こえないから、大丈夫よ)」  良かった…………。  内宮と同じで、人は滅多に来ないからと油断していた。 「安良子、辞めるの!?」  清見女房が何かを言おうとしたところで、和子さんの声がしてきた。 「清見女房も…………あなたたち三人、舞子様の元を離れるの!?」 「「「はい…………?」」」  どういうことだ?  そんなこと、安良子さんの口から聞いてないし、毎日部屋に来たが、そんなことを言いに行っている様子もない。  どっちにしろ、2人の様子を見るにそんなこと言っていないのだろう。  ましてや、俺は辞める気はさらさらない。 「休みが長いから、『謹慎されたんじゃないか』って噂になっているわよ」 「そんなことありません…………!!私が舞子様の元を離れるわけありません」 「そうです。なぜ、離れないといけないのですか」 「そんなことを言われても…………」  和子さんは信じていなさそうだった。  多分、安良子さんと清見女房が言っていることの方が、正しいだろう。 「色んな人が口々に言っているわよ?上級女房たちも」  噂に流されすぎだ。  そんなこと、この2人がするはずがない。 「そんなはずがありません。信じてください…………!!」 「舞子様のお耳にも入っちゃてるし…………」  へ?舞子にもこの噂は広がっている?  もしかして、休日が長いのも…………。 「安良子さん、清見女房さん、休日が長いのって…………」 「「あっ!?」」 「いや、それは——」 「行きましょう!!」  和子さんが何か言ったが、急いでいたから何も聞こえなかった。  舞子の部屋に着いた俺たちは、許可を貰って部屋の中に入った。  部屋にいる舞子は、一子と桜晴どっちも抱っこしていた。  どっちも笑顔なような気がした。  しかし、舞子の表情は良くない。 「舞子様、私たちは辞めるなど致しません。お許しください…………!!」 「良かった…………。けれど、許すって何が?」 「舞子様、謹慎処分を解いていただきませんか…………!!」 「え、謹慎処分なんかしてないわよ?」  はい?  謹慎処分してたんじゃないの? 「「「え…………?」」」 「私は、ただ休んで欲しいって思って、長く休ませているのだけれど…………」  ただただ、休んで欲しいってだけ?  噂は耳に入っているけど、謹慎処分ではないってことか…………。  いつの間にか、舞子の顔はキョトンとした顔に変わっていた。    というか、急に暑くなってきた。  本当に秋だよね…………? 「そ、そうだったのですね…………」 「そうよ。何を勘違いしているのか分からないけれど、辞めないのなら安心したわ」  ま、まぁ、結果オーライか…………? 「そうね…………、明日に戻って来てちょうだい」 「「「承知致しました」」」  部屋に戻った俺は、2人に対して謝り倒した。  「気にしないで」とは言ってくれたが、えらい勘違いさせてしまった…………。
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