綿ダッコ / 第18話

第17話 緊急事態!!

 今日は、早く起きた…………気がする。  今何時かが分からないのが困る。  とりあえず、次の知らせの鐘を待とう。  俺は、さっさと着替えて身支度をする。  今日も何もないといいのだが…………。 「……雅道さん、朝でございます」 「はい」  俺は、ここでの出来事を紙に記すことにした。  昨日、夕飯を食べている時に舞子の使者から、紙の束を渡された。舞子からの贈り物らしい。  ここに来るまでの出来事を昨日の夜から急いで、記していた。  その紙は、制服と同じく厳重に見えないようにしておいた。 「……一昨日、伝え忘れていたのですが、雅道さんが作ってくださったらお食事、大変美味しかっです」 「それは良かったです」 「あの…………私に教えていただけないでしょうか?」 「別に、普通に作っただけですけど…………」  そんなに美味しかったのだろうか?  俺的には普通に作っただけなんやけど…………。 「いえ、特に汁物が大変美味でした。あんな味の深い汁物、食べたことがございません」  出汁をとったからかな? 「あれは魚を一緒に煮込んで、出汁を取ったんです。本来は捨てるところを、勿体ないんで一緒に具材にしましたけどね」 「そうだったんですね。私、そんな方法知らなかったです」  知らなかったのか。  まぁ、ただでさえ食材の量が少ないから、分からんでもない。  毎日、取れなさそうな食材量やし。 「それと、朝のお食事は私に作らせてください」 「分かりました」  そう言うと、安良子さんは食事の準備を始めた。  俺は、廊下でその様子を眺めていた。 「……雅道さん、恥ずかしゅうございます」 「あっ、すみません」  俺はいそいそと、部屋へ戻った。  そして、程なくして食事が運ばれてきた。 「雅道さんのおっしゃっていた通りに、出汁をとってみました」 「いただきます」  俺は、真っ先に汁物を手に取った。  汁物の中には、魚が1尾が入っていた。 「……どうでしょうか?」 「美味しいです」 「良かったです…………!!」  安良子さんの顔には、1日目の夜の時のような笑顔が広がっていた。 「私は、戻った時に食べます。雅道さんが食べ終えたら、参りましょう。食器も片付けておきます」 「ありがとうございます」  俺は、味わいながらも、急いで食べた。  そして、安良子さんの言葉に甘えて、食器をまとめて入り口の近くに置いておく。  昨日と同じように、舞子に挨拶に行った。 「……今日もよろしくね」 「承知致しました」  今日の舞子は、体調がすぐれないのか、あまり元気がなさそうに見えた。  一応、笑顔ではあるが、隠しきれているかと言われれば、怪しい。  けど、俺が介入出来るところではない。 「……昨日はどうだった?」 「内宮についてよく分かりました」 「……そう、それは良かったわ」  やっぱり、様子がおかしい。  もしかして…………。 「舞子様、人を呼んできましょうか?」 「……大丈夫よ。雅道はここに居てちょうだい。それは他の者に頼むから」 「…………承知致しました」  本当に大丈夫か?  でも、たしかに今誰も居ない状態にする方が、危険か…………。 「ああ!!」 「舞子様!?」  舞子は肘掛けに、完全に身を預けていた。  けど、それすら無意味な程に床に倒れてしまった。 「「「「舞子様!!」」」」  部屋に続々と、お世話係の人たちが入ってくる。  俺には何の知識もない。  それは、入ってきた人たちも同じようで、慌てている。  じゃあ、俺が出来ることは…………。 「とにかく、詳しい人たちを呼んできてください!!」 「「「分かりました!!」」」 「雅道、何があった!!」  巳之助さんが、御簾を乱暴に上げて、入ってきた。 「舞子様が!!」  その先の情報が言えなかった。  完全にパニクっている。 「産まれるんだな?」 「はい!!」 「分かった。入り口は任せとけ。今こそ、舞子様をお守りしろ」 「はい!!」  それでも、巳之助さんは冷静だった。  やっぱり、頼もしい。 「舞子様、大丈夫ですからね」  俺は、他の人が来るまで舞子の側に居た。  というか、それしか出来ない。 「雅道、何やってるの!!男子禁制よ」 「舞子様のお付きの侍司ですよ」  これで許されるのか、分からない。  あかんのなら、素直に出ていく。 「そうだったわね。じゃあ、この仕切りからの奥にはいかないこと」  俺の前に仕切りが立てられた。  入り口からは、お坊さんらしき人達がひっきりなしに入ってくる。 「巳之助、僧侶以外の男性は止めなさい。それが、基晴様であってもね」 「承知致しました」  実の父親でも、あかんのか。  部屋の中は、祈祷の声と舞子の声が入り混じっている。  さっきの人が来た出入り口から、怒号と慌てる声が聞こえる。  誰が怒っていて、慌てているのか分からない。  けど、全て女性の声ということは、分かった。 「うわ!?」  仕切りの上から、乾燥した米が降ってきた。  なぜに!? 「舞子!!」  かと思えば、廊下から男性の声が聞こえてきた。 「待て。今は、僧侶の方以外の男性は入れません」 「私は、己鴨基晴である。通されよ」 「しかし…………」 「舞子の親であるぞ!!」 「基晴様、お止めください!!」  基晴と巳之助さんが、争っていることが、声から分かった。 「雅道、手伝ってくれ!!」  部屋の声に負けないほどの大きさで、助けを求められた。  抑えられる自信はない。  けど、このまま待っているわけにもいかない。 「「基晴様、お止めください!!」」  力が強い。  基晴の元の力なのか…………?  だとしたら、耐えられない。 「お父様!!」  すると、奥から俺の就任式で、司会をしていた男性が来た。 「お父様、お止めください!!舞子姉さまは、大変な時です。こんな時に混乱を起こせば、お体に障ってしまいます!!」  姉さまってことは、舞子の弟なのか? 「|治輔《はるすけ》、今だからこそだろ!!」  それでも、基晴が力を緩める気配はない。  もうすぐ、御簾の前に来てしまう。 「もし、舞子姉さまがお亡くなりになられたら、どうされるのですか!!」  治輔は、すごい剣幕で基晴に迫った。  正直、どっちが親か分からない。 「…………分かったよ」  ようやく、基晴は力を緩めた。 「雅道、ありがとうな。戻ってくれ」 「分かりました」

運営おすすめ

週間ランキング

全ランキング

反応スコアランキング

もっと見る

PV・ブックマークランキング

もっと見る

更新された連載作品

すべて見る
読み込み中…

新着短編

すべて見る
読み込み中…

作品一覧

読み込み中…

作品ダッシュボード

作品全体の公開状況と、読者からの反応をひと目で確認できます。

作品パフォーマンス

選択期間のPVが多い順

上位5作品
ライブラリ

作品の公開状況と構成

最近の更新

最後に編集した作品

要チェック

公開前に確認したい項目

プレビュー
読者に表示される見た目

表示設定

文字サイズ
100%
背景色
縦書き表示
リッチモード
目次
読み込み中…

キーワードを入力して作品を探しましょう

アクセス解析
アクセス解析データは 5分おき に自動更新されます
読み込み中…
ランクイン記録
通知
通知はありません
地形ブラシ
25
スタンプ
ツール
装飾
表示
100%

世界地図

100%

REACTION SCORE

反応スコアの内訳