鯣烏賊 / 第43話

凍峰に沈む街にて その2

「いや、遅れてすまない。 まさかダウンロードにここまで時間がかかると思わなかったんだ。」 「大丈夫だよ。」 「気にしないで。」 ディラン君がバーチャルの中に入ってきたことで、4人チーム全員が揃った。 さて。 「どうしようか?」 雑談などは挟むことなく、すぐさま「次何しようか?」という話題になった。 色々と案が出た。 早速敵を出して実戦形式で互いの戦法に慣れておくべきだ。 一旦現実に出て話すのもアリだと思う。 ペアになって練習してみてはどうか。 結局、採用されたのはディラン君の案だった。 「互いに戦法を説明してから考えないか?」 というわけで、 自分の武器や戦法を明かせるだけ説明しよう、ということになった。 「まず俺の戦い方から説明していくか。 言い出しっぺは俺だしな。」 最初はディラン君だ。 ディラン君は空中に現れているモニターを操作し、何やら決定すると指パッチンをした。 そうするとディラン君を中心にコンクリートの道や信号機に道路標識。 ビルや公園まで立ち並び、500メートル四方くらいの街が出来上がった。 「最新機種になっても指パッチンは必須技能なの...........................?」 「......どうした?」 「ああいや。俺の話。」 「そうか。」 ディラン君はそう言いながら首につけているチョーカーに手を伸ばす。 そのチョーカーをよく見るとちょうど首の中央、のどぼとけの下くらいに四角い宝石のようなものがついている。 ディラン君はそれに手を触れ、小声で何か呟いた。 俺にはこう聞こえた。 「レガシーウエポン、ヘラクレス」 しかし、何も起こらない。 いや、厳密に言えば、 その宝石が少し光ったくらいだ。 レガシーウエポンというのは、たぶん「|過去の遺物《レガシーウエポン》」のことだと思う。 過去の遺物はほとんどが音声認識で起動する、というのは聞いたことがあるから、 ディラン君は過去の遺物を持っていて、それを起動した、ということになる。 「ベロキ、過去の遺物は知っているか?」 「流石に知ってるよ。」 過去の遺物..............................いろんなメディアで取り上げられているから、聞いたことはある。 武器に限らず、現代の技術では再現不能な先人が遺したもの。 文字通り「遺物」。 世界各地の研究者がこの過去の遺物の再現や、技術を活かすための研究をしているとかいないとか.....................詳しいことは知らない。 今見つかっている過去の遺物の種類は、大まかに「武装」「乗り物」「小道具」「日用品」の4種が発見率が高いらしい。 時には地中に埋まっていたり、どこかの家が先祖代々保管していたり、工事現場から突然出てきたり。 個人所有もあまりされてなくて、基本的には国連側が管理するものが多い。 まあ、国連や討伐隊に手渡さなくても咎められはしないらしい。 しかし、武装に分類される「|過去の遺物《レガシーウエポン》」に関して、使用にはしっかりライセンスが必要で、 免許や許可なしで使用すると厳重に処罰されるらしい。 「これの機能は話すより見せた方が早いな。 効果を見せておくか...............。」 ディラン君はおもむろに近くの建物に近づいていく。 建物はコンクリート製で、大きさは高さ5メートルくらい。 ディラン君が建物のすぐ近くの、 少し前傾姿勢になれば体が当たりそうなくらいの場所まで建物に接近する。 するとディラン君は拳を力強く握りしめ、息を吐く。 「壱。」 ディラン君はその建物を殴った。 「弐。」 もう一度殴った。 すると、「ピキッ」という微小な音がコンクリート(点)から聞こえる。 「参。」 ディラン君が建物の壁から拳を話すとそれを起点にヒビが入り、次の一撃で建物の壁が風圧とともに砕け散った。 「これが過去の遺物レガシーウエポン「|闘い求む拳《ヘラクレス》」の能力。 端的に言えば、打てば打つほどに強くなる。 上限は10発だ。 今は軽く使っただけだが、しっかり構えをとって攻撃すればこれよりも遥かに強く殴れる。」 おお、意外とシンプル。 シンプルなだけに応用が効きそうだ。 当然、移動にも転用できそうだし、重いものを投げたりできそうだ。 「もうひとつ隠し球として使える機能があるんだが、 ..........................................ここでは見せられそうにないな。 説明すべき時が来たら説明しよう。」 そう言うとディラン君は首のチョーカーに手を触れた。 そうするとチョーカーについている宝石のようなものが光を失った。 ディラン君は説明を終えると後ろに下がっていった。 「じゃあ次はおれだね。」 俺の隣にいたパキケ君が1歩前に出ていった。 パキケ君も空中でモニターを操作して指を鳴らす。 すると、空中に大きさ2メートル四方くらいの虫型怪獣が2体現れた。 「みんなは手を出さないで!」 パキケ君は駆け出すと、背中のベルトに刺していた筒のような物に触れ、手に持つ。 「オンリーウエポン..............................アステロイド!」 その筒は形を変えていき、弓のような形にまとまっていく。 完全に弓のように変形すると、両端から糸が張られる。 パキケ君の手に2本の矢が生成され、それを引く。 「アルテミス!」 矢が放たれた。 ただ、標的の怪獣は素早く動いている上、あの向きに矢を飛ばしたんじゃ、天と地がひっくり返っても当たるわけな........................。 「大丈夫、絶対当たるよ」 するといきなり、矢の動きが変わった。 明らかに真っ直ぐ進んでいた矢がぐいんと方向転換し、それぞれ2体の怪獣に向けて飛んでいく。 「回転、続行!」 パキケ君が叫ぶと、矢が呼応するように回転運動を初め、虫型怪獣を貫いた。 客観的に見ると、関係ない方向に飛ばした矢が、車だったら警察に捕まるんじゃないかくらいの勢いと角度で方向転換して、回転して怪獣を貫いた。 絵面が、ちょっとおもしろい。 「この|蒼く光る尾《アステロイド》は、|追う矢《アルテミス》と、今は見せてないけど、威力が高いの|貫く矢《オーディン》がある。 一応、普通の矢も撃てる。 |追う矢《アルテミス》も|貫く矢《オーディン》も、1回使うと15秒くらいの再使用時間《リキャストタイム》が必要だよ。」 「なるほど。遠距離型か。」 遠距離担当がいるのは凄くありがたい。 普段事務所のメンバーと行動しているときも、遠隔で攻撃できるリンさんの存在はとてもありがたい。 相手の注意を分散できると、相手がイライラしてそこの隙をついたりできる。 あと、相手が小型や弱めの怪獣だったときは、遠距離攻撃で一撃粉砕してくれる。 ........................................リンさんはいつも面倒くさそうにしてるけど。 次。俺の説明。 俺の固有武装、「鍵《シュリュッセル》」は複数機能を持っている多機能型の武装。 パワー系の攻撃を放てる「衝《ストライク》」。 スピードを上げていく「速《ラピッド》」。 地面を滑走する「滑《スケート》」。 透明になる「透《カメレオン》」。 爆発物を設置する「爆《ボンベ》」。 あらゆる武装の効果を少しだけ底上げする「強《ブースト》」。 各機能の重ねがけはできなくて、それぞれに再使用時間《リキャストタイム》が設定されてる。 すこしだけ機能の実演をしてみせて、俺の話は終わりになった。 「次は私だけど.............................. ベロキ君、パワー系の攻撃はできる?」 「うん。」 「じゃあ、私たちに分かりやすいように使ってくれないかしら。」 「わかった。」 俺は左腕につけた「鍵《シュリュッセル》」の電源をつけ、機能を「衝《ストライク》」に選択。 そしてしゃがみ、地面に左手をつける。 (衝《ストライク》!) 左手にかけた「衝《ストライク》」から衝撃波が放たれ、地面に伝わる。 すると、バリバリバリ!という音とともに地面にヒビが入った。 「どう?」 すると、ユリさんが何も言わずに俺の肩に手を触れてきた。 「....................へ?」 「この状態でもう一度同じことをしてみて?」 俺はさっき入れたヒビとは違う場所にしゃがみこみ、さっきと同じ構えをして「衝《ストライク》」を選択。 そして地面に手を触れて衝撃波を........................................。 「わ、わわわわ!!」 地面にヒビが入って、 そして........................................裂ける。 裂けると言っても、地面のワレメがさっきよりも深い、となっているだけで怪我をするほど危険ではない。 でも、俺が驚いたのはそれじゃない。 「強化されてる....................?」 「私は固有武装《オンリーウエポン》や過去の遺物《レガシーウエポン》は所持していないけど、こういうことができる。」 「これは..............................?」 「特異体質、譲渡性.............................. 他人に自分のコスモを渡して、色々なことに応用できる。 今みたいに武装に強化をかけられるわ。」 「だとしたら今のも?」 「そう。 ベロキくんにコスモを渡して、武装に強化をかけた。 ベロキくんの「強《ブースト》」と違って強化の幅が大きくて、ほかにも、傷の痛みを和らげたりもできるわ。」 .......................................なんか俺の上位互換が出てきたんですけど。

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