鯣烏賊 / 第40話

いざ、試験っ! その5

図書館の一角。 パキケ君とユリさんが合流したことで、ちょうど4人で座れる大きめの机に、俺たち以外の4人は集合した。 1人は、ユリさん。 ディラン君ほどでは無いにしろスラリと背が高い女性だ。 座高であの高さなら、しっかり立ち上がったら170cmくらいありそうだ。 きっと、俺の知っている女性の中では高めの身長を目にすることになる、と思う。 そして、なんと言うか....................身なりに気を使っている、と言えばいいのかな。 最近は女性というともっぱらリンさんしか見ていない。 リンさんは外に出ることがない日であればばよく分からない柄がプリントされた服で過ごしているし、外に出る時も戦闘のための動きやすい服しか着ていないので、そういうものだと思っていた。 偏った視点って良くないね。 そして、もう1人はパキケ君だ。 年齢は絶対、俺より若い。 15歳....................いや、14歳だったとしても違和感がない。 まだ外見的な容姿が男女の間ではっきりと割れない時期なんだろう。 ガッチリと鍛えているのか筋肉があるのは見るだけでも伝わってくるけれど、年齢の問題か、体重の絶対量が足りてない気がする。 何となく華奢で力不足な印象を受ける。 これに関しては、俺も人の事が言えないかもしれない。 「ごめんなさいねディラン君。遅くなってしまって。」 「いいや、気にしなくていい。」 ディラン君はその女の人に慣れた様子で声をかけた。 まるで日常会話かのように。 この2人は知り合いなのかな? ディラン君はユリさんを自分の隣の席に招き、座らせた。 ディラン君が先に座ってしまったので、パキケ君は自動的に俺の隣に座ることになり、ディラン君と対面する形となった。 メンバー3人目、ディラン君。 改めて観察すると、やはり恵まれた体つきをしていることを感じる。 間違いなく努力で手にした肉体であるのだが、それ以前の才能の部分も大きく影響しているに違いない。 薬によって限界を越えてまで身体能力を引き上げられた俺とはまた別の、天然のパワー。 こう見ると、いい肉体を持つこともまた才能のひとつだな、と感じさせられる。 ちなみに関係ないかもしれないが、心なしか隣のユリさんと服装のセンスが似ているな、と感じる。 「では、まずは自己紹介でもしようか。 トケラ北アメリカ支部隊長より推薦を受けて本試験を受験をするディランだ。」 「私はユリ。隣のディランくんと同じで、トケラさんから推薦を受けて来たわ。 ....................ちなみに、ここの試験監督はトケラさんよ。」 と、女性............ユリさんの自己紹介が終わると、ディランが俺に目配せをしてくる。 あ、次は俺の番なのか。 「えーと....................ベロキです。レスパさんの推薦で来ました。」 メンバー4人目は俺。 客観視してみると、俺はこの中では最も特徴的な容姿をしていると言える。 肌は他の3人と比べても圧倒的に白いし、髪の毛に至ってまで真っ白だ。 黒かった目まで色素を抜かれて灰色になっている。 服装は....................変じゃないと思うけど。 スターダスト事務所に来た時にミクロさんからもらった服をそのまま着ているだけだ。 変じゃないよね?たぶん。 俺が名乗ると、ユリさんと隣にいるパキケ君が驚いたようなジェスチャーをした。 さっきディラン君にレスパさんの立場というか役職というか....................を教えてもらったけど、やはりこの業界においては相当な有名人なんだろう。 俺の自己紹介が終わったということで、次の順番を催促するために隣を見ると、パキケ君と目が合う。 深い深い、吸い込まれてしまうような夜空のように濃い藍色の目。 黒っぽいのに、どこか紫を混ぜたような....................。 何故かその目を見た俺は.........................まるで宝石かのように魅入ってしまう。 この感情は一体、何なんだろう。 すごく見慣れたものを見た時のように、安心させてくれる眼だ。 言葉で表現するなら何だろう? うーん........................。 親近感。 これだ。親近感だ。 親近感、か.........................。 いや、なんで俺はこの知らない男の子相手に"親近感"という感想を抱いているんだろう? 初対面の人になんか絶対に感じるものではないのに。 「おれはパキケ。よろしく!」 すごく元気な声だ。 年相応と言えるのだろうか。 ....................コスモスさんもすごく元気な声と雰囲気だったし、この年代特有のテンション感なのかもしれない。 といえ、俺とは年代的にふたつかみっつしか違わないんだけどね。 うん。 なんというか..................................いや、別に考えなくてもいいか。 考えても分からないことを自己満足のために大まじめに考察してみたって、分からないものは分からない。 何かを深く考えることは、別に俺の得意分野でもないし....................。 この話はやめだ。 何はともあれ。 これで俺、ディラン君、ユリさん、パキケ君の4人がチームとして揃ったわけだ。 「早速、実技試験の練習に入ろう! と言いたいところなんだが.....................大きな問題が1つある。」 「問題?」 「お前のことだ。ベロキ。」 「俺?」 「俺たち3人は筆記試験をあまり勉強せずとも合格できるくらいの知識を持っているが、お前は違うだろ?ベロキ。」 「あー.....................そうだね。」 さっきディラン君の参考書を少し読んでみたけど、確かにほとんど分からなかった。 そうだよね。あれの勉強をしないといけないよね。 「今からベロキは、俺たちがこれまで蓄えてきた知識たちに加え、この資料館でしか学べないような特別な知識も学習しなければならない。 後半のことに関しては、俺たちもこれから学習しなければならないわけだが....................。」 俺はずらりと周りを見わたしてみる。 この部屋の壁にそって、天井までの約5メートルの高さぶん、ずっしりと本の背表紙が立ち並んでいる。 ジャンルは様々だが分類分けされていて、しっかり整理されていることがわかる。 「とはいえ、だ。 別に、ここの本を全て読まなければならない訳ではないだろう? 筆記試験は正直、そこまで難易度が高い訳じゃない。 だから2人とも。これから筆記試験の日まで、俺たち3人でコイツに座学を教えてやろうと思うんだが、いいか? 俺たちも復習になるだろう?」 「私は構わないわ。」 「おれも賛成かな。 戦闘の方の合わせは何とかなるでしょ。」 「と、言う訳だベロキ。 ....................................ちなみに拒否権はないぞ?」 「あ、........................ハイ」 俺の横には、肩に手を回して力を込めて俺の体をがっちりと掴んで俺を逃がすまいと拘束するパキケ君。 「がんばろーね?ベロキ!」 目の前にはいつの間にやら大量の本を持って立っているユリさん。 両腕に合計、10冊程度の紙のかたまりを乗せている。 「基礎的な知識はこのあたりで大丈夫かしら、ディランくん?」 この3人の無言の連携を見て、俺はこの3人が昔からの知り合いであることを確信したのだった。 「とりあえず今日のところは、半日は机に向かって貰うぞ。」 「嘘つけ3日はできるだろ改造人間。」 「まあ、そこそこにしましょうね、ベロキ君?」 「は、はひ....................。」 「っつー訳だ。トケラ。」 「承知した。歓迎はしないが待っているぞ、オトズナ・ミクロ。」 「ああ、その『英傑の為の槍(オーディン)』をしっかり準備しておくんだな。 最後に確認だ。二人で行く。」 「ああ、手配しておく。」

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