鯣烏賊 / 第41話

いざ、試験っ! その6

あの後。 俺がこの監獄.....................じゃなくて試験会場にやってきてから、実に2週間の月日が経った。 この2週間は...........................まあ、 端的に言えば今後一生、経験したくない。 それはそれは壮絶な日々だった。 朝起きて数分でディラン君に部屋から引っ張り出されて、食堂に連れていかれて朝の6時に朝食。ちなみに、美味しくない。 メニューは確かパンの種類をふたつ選んで、付け合せの種類ひとつを選んでスープの種類を選んで..................みたいな感じだったかな。 そして朝食を食べ終わると、その流れで図書館に拉致され、そこからお昼を食べる13時までみっちり座学勉強。 隣にはディラン君がいて、こっちはこっちで別の何かを読んでいるけど、 少しでも俺が動こうとすると「どこに行くんだ?」と咎めてくる。 なので、水を飲んだりお手洗いに行くだけでも怖い。結構怖い。かなり怖い。威圧感が。 そしてディラン君の持つ腕時計のアラームが鳴ると同時に食堂に連れていかれて昼食。 ちなみに、美味しくない。 そのくせ、メニューだけは以外に多かった。 人生で初めてカレーライスという食べものをここで食べたけれど、初体験をここで食べてしまったことを心の底から後悔した。 美味しいのが食べたい......................。 そのあとは他のメンバーと合流。 訓練所に行き、その後は太陽が落ちるまで仮想空間に缶詰だ。 いやあ.....................VRから出た時の「頭は疲れてるのに体は疲れていない感覚」を毎日味わうことになるとは驚きだった。 そして20時前くらいに夜ご飯。 当然、の事だけれど、美味しい訳がない。 でもここは4人であれやこれやくだらない話や試験に向けてのことを話しながら夕飯を食べることができるから、比較的楽しい時間だった。 21時には皆が皆の部屋に入る。 あとは自由時間。 実の所俺も、風呂に入ったあとは薬によって改造され尽くされた頑丈な体の特権を活かして、深夜帯まで布団の中で勉強していたりもしたけれど。 ディラン君を起こさないように照明を消していたが、この目の良さによって何ら問題はなかった。 誰かは知らないけれど俺に薬を投与しやがった人、ひとまず感謝してやる。 と、まあ。 こんな無謀無茶なスケジュールで2週間もの月日を過ごしていたんだ。 以下は昨日の夜、俺たちが食事をとっているときの会話の一部分の抜粋である。 「.....................お疲れか、ベロキ。」 「お疲れ様、ベロキくん。」 「だいじょーぶ?」 「俺は、寝たい..................今すぐ。」 なんと、この俺が睡眠不足による疲労に追い込まれる程度にはなっていた。 開始3日目くらいまでは無限の回転力を誇っていた俺の歯車も5日あたりでスタミナ的な限界が透け始め、1週間経った日の勉強中に気絶をしたことでさすがにペースダウンを命じられた。 結果、昨日の予定を早めに切り上げ、 俺に15時間程度の睡眠時間を与えることで睡眠の帳尻を合わせて今日の試験本番を迎えることとなった。 おかげで今は元気ピンピンである。 「ベロキ、二度と寝坊しないでよ?」 「それは............うん。ごめん。」 代償として俺は、ディラン君の指示により俺を叩き起しに来たパキケ君が叫ぼうが叩こうがなかなか起きないほど深く入眠し、試験当日の点呼の時刻ギリギリに起床。 起床時刻は10時45分。 集合時刻は10時50分だ。 どうやら最初、あまりにも布団から起きない俺は「後で来るだろう」と置いてかれたらしい。 しかし、俺があまりにも講堂まで来ないものだから、10時30分にパキケ君が俺の部屋に戻ってきて俺を叩き起こそうとしてくれたらしい。 包丁から放たれる命の危機を感じた俺は最速で朝の準備を済ませ、普段の勉強中に食べてきた軽食を口の中に放り込み、パキケ君の手を引っ張って寮棟の6階の部屋から飛び降り(バレたら怒られそう....................)、ふたりで講堂のある建物まで全力疾走。 俺が扉を蹴破るように開け、部屋に飛び込んだ。 結果、俺たちが鬼のような形相のディラン君に睨まれながらディラン君とユリさんの隣の場所に置いてある椅子に着席したのは、受験者点呼のおよそ1分前だった。 「-00001番、ディラン・モルガナイト。」 「はい」 「-00002番、ユリ・エルダー。」 「はい」 「-00003番、パキケ・レイ。」 「はい」 「-00004番、ベロキ。」 「はい」 順番に席を立ち、前にある机の前に並ぶ。 順番が来ると俺たち1人ずつ机の前で名前が呼ばれ、呼ばれたタイミングであのプラスチックのカード....................および、受験票を受付の人へ見せる。 そうすると受付の人が何かリアクションをするので、そうしたら自分の席に戻る。 「多いね....................。」 「欠席者の人数を考えないなら、320人もいるらしいわよ。」 このようにして、約30分ほどで俺たちを含む受験者全員の点呼が完了した。 さて、俺たちは今講堂の中に大量に置かれた椅子に座っている。 それぞれの椅子と椅子の間は2メートルほど間隔が作られていて、俺の身長では手を伸ばしてさらに椅子から身を乗り出さないと、隣の人の椅子まで手が届かない距離だ。 そしてその椅子たちの手前には、4つ1組の長いテーブルがある。 そのテーブルの上には、ひとつの椅子につき数枚の紙と鉛筆が2本、消しゴムがひとつが置かれていた。 「それでは筆記試験の注意点などについて、総監督のトケラ支部隊長。」 そう。 筆記試験はこのまま始まる。 周りを見渡すと、俺たち4人以外にも、4人1組のテーブルで座っている人達が何人も........................いや、合計で320人もいる。 「支部隊長」と呼ばれた人であろう、ディラン君よりもさらに体が大きい男性が、講堂の舞台袖から出てくる。 手にはマイクを持っているんだけど、最早手が大きすぎてマイクが小さく見える。 あの人多分、素手で鋼鉄のドアくらいなら凹ませられると思う。 喧嘩売らないようにしよう.................................話す機会なんてないだろうけどね。 トケラさんは前に出てきてお辞儀をした後、 「本日と、それと1週間後の実技試験の際も会うことになるだろう。本試験の総監督を努めさせていただく。トケラ・ヤコブだ。」 と手短に話して舞台袖に戻って行った。 ん、「トケラ」? どこかで聞いたことのある名前だ、と思ったら、ディラン君とユリさんはトケラさんに推薦されて、その人がここの会場の試験官であると言っていた。 「本日の筆記試験だが....................カンニング等ができないような工夫がなされている。 それでも不正行為が摘出された場合は、巡視している他の試験官の指示に従うこと。 彼らはみな、現役のライセンスを持った優秀な討伐隊員だ。なにを間違えても抵抗などしないように。その際の怪我等の保証は一切しない。」 ふと周りを見渡すと、約20メートルおきくらいに、まばらに人が立っている。 その人たちは皆、首にネックレスのようにして特殊なカードをかけている。 試験官とは、彼らのことだろう。 「それと、皆本日へ向けてたゆまぬ努力と対策をしてきたと存じている。 試験時間240分、皆が全力を出せるよう祈っている。 なお、諸君らの使うデスクの上に、水の入ったボトルが置かれていると思う。 試験中に脱水症状にならないよう、好きなタイミングで摂取すること。」 ボトル.....................これかな? ラベルが貼ってない上、キャップにもなんの文字も書いていない殺風景な600ミリリットルボトルだ。 「なお、如何なる理由においても試験中の退出は認めていない。 かならず、この後の準備時間等にトイレなどを済ませておくこと。 以上だ。」 トケラさんがそう言って舞台を去ると、こうアナウンスがかかった。 「では、バリケードを下ろします。巻き込まれぬようご注意ください。」 それと同時に、上の方からのウィーン、という音が耳に入る。 俺の座る椅子の両隣りにするすると壁が降りてきて、俺と隣に座るユリさん、アロくんをを分断する。 そして俺の前と後ろにも壁が降りてきて、前後を塞ぐ。 俺の席はあっという間に陸の孤島と化した。 後ろの壁にはドアがあって、ガチャガチャと弄ってみるとドアノブが周り、扉が開いた。 「30分後のチャイムで筆記試験を開始します。 お手洗いや軽食を今のうちに済ませておいて下さい。 試験中の退出は認めません。また、チャイム以降での途中入室も認めません。 試験5分前のチャイムにて、部屋の荷物を撤去させていただきます。」 俺はドアを開けてみる。 同じように部屋が作られていて、講堂全体を覆っていた。 トイレの方角を示す標識を見た俺は、なにかあったときのために行っておこうと思って、トイレに行くことにした。 「わっ....................多っ。」 トイレから戻ってくるのには、15分の時間を要した。 ----- 「受験生の皆さんは、勉強道具等の全ての持ち物をを鞄にしまって待機してください。 卓上には、こちらから配布した鉛筆と消しゴム、白紙の紙が3枚あることを確認してください。」 ついさっき、スーツを着た屈強な男の人がこの部屋に入ってきて、有無を言わさずに俺の持ち物を強奪したのち、卓上にやさ〜しく持ってきた物を置いた。 卓上にはアナウンス通り、 ・刻印なしの鉛筆 ・カバーの付いていない消しゴム ・まっさらなメモ用紙3枚 が卓上に置かれている。 「5分後に試験を開始します。」 このアナウンスを合図として、再びさっきの男の人が入ってくる。 そして、俺に丁寧に冊子を渡してきた。 表紙には長い試験名の文字が書かれている、筆記試験の問題用紙だった。 「中間のページに解答用紙も同封してある。 なにか質問があればドアのベルを押せ。 監視しているからくれぐれもカンニングするなよ? ...............問題用紙もチャイムがなるまで開けるな。いいな?」 「は、はい。」 こちらを威圧するようなその態度に、俺は首をガクガクと縦に振る。 俺の態度に満足したのか、男の人は「頑張れよ」と部屋から出ていった。 いや、なんでこんな怖いのこの人。 ギャング映画の登場人物こと思ったよ....................。 ひとまず、俺は席につき、問題用紙の表紙にビッシリと書かれた注意事項を読む。 ・問題1〜17の構成です。乱丁、落丁などあればドアのベルで担当者に知らせなさい。 ・解答用紙にはあなたの名前と受験番号が記載されています。試験開始と同時に、間違いがないか確認すること。 ・配布したもの以外の筆記用具の使用を固く禁じます。 ・試験時間は240分となります。その間、この部屋から出ることを如何なる理由においても禁じます。 ・カンニング等不正行為が発覚した場合、厳重な処罰を下します。 【ゴーーーーーーン!】 チャイムが鳴った。 筆記試験の試験時間は240分。 よぉし!精一杯頑張るぞ..................。 問題1 【形式:一問一答】 〈〉に当てはまる語彙または文章を答えなさい。 (1)以下、怪獣被害不干渉法の抜粋である。 当てはまるものを答えよ。 俺は鉛筆を握り、そして....................。 4時間の決闘のゴングが、鳴らされた。
改造人間ベロキのココがスゴい! (※ディランたちは何も知らないのでベロキのイカレ具合に終始ドン引いてます) ・睡眠時間は3時間でいい ・暗闇でも目がよく見えるので、ベッドの中で勉強できる ・集中力が途切れない ・意図的に味覚をオフにできる ・こんな生活をしても肌が荒れない (まだまだある)

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