おやまみかげ(・8・) / 第4話

第三話 全部、魔法で解決……?

 ♠︎ 「どうしてこんなことに……」  あれから三人とは別れ、フォルは一人で先へと進んでいた。    一旦国へ戻ろうかとも考えたが、勇者が勇者パーティを追放されたなんて、恥ずかしくて言えるはずもない。  それに…… 「追放されたと言うよりも、送り出されたの方が正しい……」  三人は僕が見えなくなるまで、ずっと手を振ってくれていた。  アルデオからは申し訳なさを感じたし、メデリは心から心配してくれていた。  ルディアに至っては—— 「フォル、これ好きだったよね! 持っていってよ!」  と、携帯食まで用意してくれていたのだ。 「僕がみんなに、役目を背負わせてしまっていたんだろうか……」  今となってはもう、それを問うこともできない。 「とりあえず、僕も先に進むしかないか」  一人になったから魔王討伐はできませんでした。  なんて、そんな無責任なことは絶対に言えない。  ——きっと、使命に燃えてくれる人物がいるはず。  そんな期待を胸に、フォルは街を目指して歩き続けた。  ♦︎ 「行っちまったな……」 「行ってしまったというより、送り出したの方が正しいと思います……」    フォルの背中が見えなくなってからも、アルデオとメデリはその方角を見つめていた。 「二人も、本当はフォルと行きたかった?」  昨日の夜、二人はあたしの考えに賛同してくれた。  でも、それはあの場のノリだったかもしれない。  ——あたしが、勇者パーティに選ばれた時みたいに。 「そういうわけではありませんよ。ただ……」 「ただ?」 「心配は心配なのですよ。これでも三ヶ月、共に旅してきた仲間ですからね」 「そうだなぁ。ま、フォルなら大丈夫だろうけどさ!」  アルデオが明るく笑い飛ばす。  あたしもアルデオもメデリも、フォルだけに背負わせたいわけじゃない。  でも、それでもやっぱり子供たちを置いては行けない。  もし二人が着いていくと言っても、あたしはここに残るつもりだった。 「つーか、どうするよこれから」 「廃村になって間もないとはいえ、なかなかの状態ですよね……」  ひと月ほど前、魔族に襲われて廃村になったここは『クィエス』というらしい。  ……休まるどころの話じゃないけどさ、現状。  井戸は枯れ、土地は痩せ、畑も荒れ放題。  建物は何とか形が残っている、そんな状態だ。 「まずはライフラインを整えて、ですかね……」 「建物も直して、住めるようにしないとなー」  メデリとアルデオがこれからに向けて話を進める中、ルディアの明るい声が響いた。 「いやいや、まずはご飯でしょ!! 腹が減ってはなんとやら〜ってさ!」 「……そうだな! レシとファファも探さないと」 「そうですね。彼らの方が村についても詳しいでしょうから」 「なら、二人はレシたちを探してきて! あたしは手持ちでご飯作っとくからさ!」  ルディアは親指を立てると、ぱちんとウインクをした。    * 「やっぱり焚き火だと、簡単な物しか作れないなぁ」  ルディアは枝に刺した魔獣肉に香草をまぶすと、火の側に突き刺した。  焼け始めた肉からは香ばしい匂いが漂い、溢れ出る脂は火の勢いを強める。 「わぁ……いい匂いがする……!!」  声のする方を向くと、メデリと手を繋いだファファがこちらに向かってきていた。  肉の匂いに目を輝かせる少女の姿に、ルディアも自然と笑顔になる。 「おはようファファ」 「ルディアのおねえちゃん、おはよう!」 「アルデオとレシは食材を運んでくれていまして」 「おにいちゃんが、メデリのおねえちゃんと先に行っててって」 「そっか! おにいちゃんの言うこと聞いてえらいぞ!」  わしゃわしゃと頭を撫でてやると、ファファは嬉しそうにニコニコと笑う。  そんな少女の屈託のない笑顔とは対照的に、ルディアの表情は曇っていた。  ——いつから風呂にも入れてないんだろ。  髪は土埃で絡まり、撫でた勢いでフケが舞った。  顔や手足も酷く汚れており、周りには小さなハエがいくつも飛んでいる。  ルディアは笑顔を作ると、しゃがんでファファに目線を合わせた。 「ねぇ、ファファ。食べる前に手洗おっか!」 「手?」 「そう、手。汚れた手で食べると、お腹痛くなったり病気になったりするからさ」 「でも、お水ないよ?」  困ったように首を傾げる少女。    枯れてしまった井戸からは、もちろん水なんて汲めない。  でも、あたしたちにはメデリがいる。 「メデリ、水魔法いける?」 「そういうことですか。ただ、私はあまりその類いは得意でないのですが……」 「あたしが強化したらどう?」  彼女は少しだけ考えると、首を縦に振った。 「ルディアが強化してくれるのなら、いけると思います」 「よっしゃー!! さすがだね!」 「ではお願いしますよ、ルディア」 「オッケー! 任せてよ!」  話についていけず、目を丸くするファファを横目にルディアが舞う。  それに合わせてメデリが詠唱を始めると、三人の頭上に大きな水の塊が現れた。 「よっし!! 成功だね!!」 「メデリのおねえちゃんすごい!!」 「あとはこれを上手く制御できれば——」  バッシャァァァン!!!!  音を立てて、塊は三人の頭上で破裂した。

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