綿ダッコ / 第42話

第41話 伝えたいこと

 「雅道、構えろ!!」 「は、はい!!」  宿を出て少し歩いたところで、巳之助さんが叫んだ。  後ろから足音が聞こえてきた。  …………この早さは、馬か?  鞘と刀の柄に手を掛ける。  馬に乗った人が後ろから都の方から来るのが見えた。 「…………雅道、あれは治輔様だ」  治輔!?  付いて来たのか…………? 「舞子姉さま、どうしても伝えたいことがあります」  治輔は馬から降りると、膝をついた。 「…………どうしたの?」  舞子の声色が少し戻った気がする。 「八子様についてなのですが…………、宮廷では一馬帝天様の前から何も言わず消えたことから、|鬼女《きじょ》として噂されています…………」  鬼女…………。  つまりは、恨みがあった女性として扱われたってことか…………?  でも、一馬帝天は愛してただろうし、一馬帝天に恨みがあるようには考えられない。  じゃあ、舞子…………?  舞子は、状況的には下に見ていてもおかしくない。  残るは…………、俺と安良子さん!?  いや、断っただけでそこまで恨まれるか…………?  鬼女になる理由が見当たらない。  …………じゃあ、ただ尾ひれがついただけか? 「…………そう。ご苦労だったわね」 「舞子姉さま、今からでも間に合います。引き返しましょう」  でも、噂になっている以上、物我家に接触するだけでもリスクがあるよな。 「…………治輔、私は内妃よ。私の意思を否定するの?」  舞子、そんな口調で言う人やったか…………? 「舞子姉さま、何を…………」 「いいから、あなたは内宮に戻りなさい!!」 ◇ ◇ ◇ ◇  伝令を受けたところから2時間ぐらい歩くと、そこには都と遜色ないほどの栄えた町が見えてきた。  城楽は、門前町に似たようなところらしく、めちゃくちゃ賑わっている。 「(舞子様、見えてまいりましたよ)」  周りの参拝客らしき人たちに聞こえないように、牛車に声をかけた。  しかし、中から返事はない。  牛車はとある建物に止まった。  こじんまりとしているものの、奥までありそうだった。  中に入ると、ふすまで仕切られた部屋が何個かあって、こじんまりとした池付きの庭があった。  お世話係も含めて、人が居る様子はない。  都から付いて来た人達だけだ。 「ここはね、城楽にある唯一の己鴨家の建物なの」  治輔に怒鳴っていた口調とは違って、落ち着いていた。 「舞子様、なぜここに…………」  清見女房、本当に度胸あるよな…………。  しかし、本当に分からない。  人選はまだ分かる。  けど、桜晴を置いてきたのはなんでや?  謎が多すぎる…………。 「…………」  舞子は答えようとしない。  俺たちにも答えない理由ってなんや…………? 「舞子様!!」  清見女房が聞こうとしたところで、1人の男性が来た。  構えたが、伝令ぽい。 「八子様がこの地に向かったところを見た者が居るそうです!!」

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