らぱすてー / 第65話

もんもんぐんぐん

 宇宙の特異点からほど近く。  雪に覆われた惑星で、ひとりの女が酒場を営んでいる。  客は来ない。こんな辺鄙な場所を訪れる者などいないのだ。  だが、その女は今日もひとり店を開け、誰かを待ち続ける。  そして、夜も更けた頃、諦めたように暖簾をしまう。 「……馬鹿野郎」  ぽたり、と涙が落ち、凍りついた。  あれからどれくらいの年月が過ぎたのか、特異点付近では時間の流れが違うという。  飲み干したはずなのに。  胸の奥にはまだ熱が残っている。  外では地吹雪が荒れていた。  雪はまるで拳のようだった。  窓を叩き。  屋根を殴り。  心を打ち据える。  みれん殴り雪。  誰が名付けたのか。  実によく出来た名前だった。  雪を踏む音を聞いた気がして、女は立ち上がり、戸を開ける。  吹雪の向こうには誰もいない。  もんもんぐんぐん。  忘れようとして忘れられないものを、辺境で待ち続けるひとりの女がいた。

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