最強バトルの人 / 第151話
第62話 掴んだ
子パンダちゃんが、走り出す。
ヨウエンを救出するためだ。
ウーミン「――見せてみろ。貴様の“覚醒”とやらをな」
シャオ「――見たかったら」
――勝手に見ろアル!
言うが早いか、ウーミンの胴を。
【【蹴り抜いた――!】】
【【ウーミン「――――っ!!」】】
反撃が来る。龍の爪。
一撃。二撃。三撃。四撃。五撃。
木の葉が風に舞うかのように、致命の連撃をかわす。
シャオ「――これも!」
右肘で、ウーミンの腹、胸、顎を打つ。
巨木のような上体が、よろめいた。
続けて、旋回蹴り。
ウーミンの顔を吹っ飛ばす。
ウーミンは足を地面に突っ込み、全身が地面から離れるのを防いだ。
――が!
【【シャオ「――ぶっ飛べアルーーーー!!!」】】
――全身を、ぶちかます!!
ウーミンの体は大地から浮かび、暗い森の中へと吹っ飛んだ。
一本の木から衝突音。
木は、メキメキと音を立て、倒れた。
シャオ(――やったアル!?)
――。
ざっ。ざっ。ざっ。
ウーミンだ。
ウーミンが、森の中から歩いてくる。
シャオ(――――こんなにやっても、効いてないアル……?)
いや。
ウーミンの口元から、一滴の血が滲む。
――効いている!
ウーミン「――貴様。何の“流れ”を掴んだ」
シャオ「……。しらんアル」
木が倒れたことで、鳥が。リスが。蝶が。
一斉に飛び立った。
その数は――。
シャオ(――全部で、130匹アル)
遠くで犬の遠吠えが聞こえる。
それに気づいた犬の数。
56匹。
うち二匹は、耳に傷跡がある。
風が吹いた。
ウーミン「――だが」
ウーミンは、口の中に溜まった血の塊を地面に吐き捨てた。
ウーミン「まだ、婆《ラオ》にも及ばぬ」
シャオ「――負け惜しみアル!」
私は、流れるような連撃を放つ。
蹴り。拳。肘。膝。全身を使った、怒涛の連撃。
全てがウーミンを捉え、よろめかせた。
しかし、ウーミンの黒い気は、一切衰えない。
ウーミン「――悪くはない。だが、まだ欠けている」
シャオ「うるさいアル。満ち満ちているアル」
ウーミンは、首をこきこき鳴らした。
ウーミン「それでは、この儂は殺せんぞ」
ウーミンの黒い気が、全身を巡っているのがわかる。
黒龍の気。
反撃が。――来る!
【【ウーミン「――死ねい!!」】】
ウーミンの拳が。死、そのものが。
襲いかかる!
シャオ(――避けられるアル!)
ひょい。ひょい。ひょい。ひょい。ひょい。
何発来ようとも、“流れ”が読めているうちは、かわせる。
なにアルこいつは。
この、鬼のようなじじいは。
口を開けば、ばぁちゃんは。ばぁちゃんが。ばぁちゃんなら。ばぁちゃん、ばぁちゃん、ばぁちゃん――。
私は拳を固め、ウーミンの腹を――!
【【シャオ「――お前がばぁちゃんを語るなアル拳ーーーーーー!!!」】】
ウーミン「――ぐ!!」
殴り抜け――いや!
ウーミンに。
拳法着の袖を、掴まれている!
シャオ(……しまった!)
そのままウーミンは、袖ごと私の体を引き上げ――。
【【ウーミン「――貴様に!! 何がわかる!!」】】
地面に――!!
【【――ズッドオオオオオオオン!!!】】
シャオ「――かはっ」
背中から、叩き落とした。
地面に、クレーターが出来上がる。
シャオ(い……いたいアル)
シャオ(……うごけないアル)
シャオ(――息も、できないアル)
空に月が見える。
シャオ(――満月、だ)
その月は、すぐに見えなくなった。
ウーミンが、私の顔を覗き込んだからだ。
シャオ(――まけた)
ウーミンの右手に、黒龍の気が溜まる。
――ああ、私は。
ウーミンの右手に、黒龍の気が、溜まる。
――ここで、死ぬのか。
背中の激痛が全身を包み込む。
私の意識は、ここで途絶えた。
*
おいテメコラ。
何、寝てんだ。この野郎。
――……?
うるせえな。眠ぃんだよ。寝かせろ。
寝てんじゃねぇ。
悔しくねぇのか?
……あァ……?
……つーか、誰だよ。テメー。
あァん? 俺だよ。
見りゃわかんだろ。
寝ぼけてんじゃねえ。
――……俺?
こんなゲキシブなリーゼントしてるヤツ。
俺しかいねェだろ。
――。
【【俺は、テメーの理想の俺だよ。】】
ゲキシブで、漢の美学を貫いてて。
道を歩きゃ誰もが振り返る。
漢と書いて、俺。火鍋クンだ。
――へっ、そうかい。
そりゃ、どおりでシブい訳だ。
だろォ!?
――でも、俺はダメだ。
あァ!?
――リーゼントがよぉ。
なくなっちまった。
俺の魂がよ。
ウーミンの野郎に、取られちまった。
体も痛ぇしよ。
血も止まんねぇし。
……テメー。歯ァ食いしばれ。
――……?
【【『ド根性、張り手ェェェェエエエエ!!!!』】】
バッチィィィィィーーーン!!!
い、イテーーーーーー!!!!
テメーからド根性取ったら、なにが残んだよ。
……!
リーゼントなんて、飾りだ。
テメーの魂は。
|ここ《心》にあんだろ。
――ああ。
ロンパオの娘が。
死にかけてる。
――何!? シャオが!?
テメーなら、何をすべきか。
言わなくてもわかんだろ。
――ああ。
*
火鍋「……テメーのド根性」
ざっ。
ざっ。
ざっ。
火鍋「沁みたぜ」
【【ざっ。】】
ウーミン「……今さら、貴様に何が出来る。手負いの老兵に」
火鍋「手負いの老兵は、テメーだろ。歯ァ食いしばれ」
ウーミン「――死に場所を、見つけたか」
火鍋「ンな訳ねーだろ。アホ。死んだらシャべえだろ」
火鍋は、ウーミンの肩を掴む。
火鍋の気迫が。
炎を放つ。
火鍋「見せてやるって言ってんだよ。『最強の意地』――」
火鍋「――いや。『最弱の意地』をな」