最強バトルの人 / 第78話

第34話 +1

シャオが一足早いまかないを食べている、その頃。 ドウは――。 ドウ(洗っても洗っても――皿が止まらん!) ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ 皿洗いと真剣勝負していた。 洗場は、戦場だった。 食べ終わった皿が、目の前でどんどん積み上がる。 まずい。このペースでは、洗い終わる前に、皿で体が潰されてしまう。 ウーミンを倒す前に、皿に倒される。 それだけは避けなくては。 水飛沫を上げながら、ドウは自分の限界を感じていた。 ラオ(頑張ってるみたいだね) ラオは、戦う若き兵士に、アドバイスを与えることにした。 ラオ「あんたは手は早いけど、無駄な動きが多いね」 ――無駄な動き。 ドウの頭に、シャオが浮かんだ。 そうか。シャオならこういう時、どうするか。 『無駄な動きをなくす』。 シャオなら、誰より早く、精錬された動きに近づけることが可能だ。 俺にも、できるか――? ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ。 ――できないっ! あのシャオの、恐ろしいほど最適化された動きは、俺にはできないっ!! ――できないならば。 ――さらに手を増やせばいいっ!! ドウ「うおおおおおおおおっ!!」 ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ ラオは目を見張った。 ラオ(! 驚いたね。無駄な動きを残したまま、さらに早くなったよ) ドウ(火鍋老師に教わった根性論! 腕立て伏せによって得られた上半身の筋肉! それらをフル稼働して、さらにさらに早く皿を洗う!!) ――! 今、超えた。 これまでの俺とは。 これまでの千手八脚拳《せんじゅはっきゃくけん》とは、違う!!     ドウ「これこそがっ! 千一手八脚拳《せんいっしゅはっきゃくけん》だーーーーーっ!!!!!」 ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ シャオ「なんかうるさいアルな」パクパク 子パンダ「キュウ」 * ラオ「はい、おつかれさま。明日も頼むよ」 夜。営業が終わった。 シャオとドウは店内の掃除を終えていた。 シャオ「ふーー、疲れたアル」 ドウ「ああ。腕が、あがらん」ブラブラ ふたりは、店の2階にある住み込み用の部屋に泊まっている。部屋はいくつかある。当然、個室だ。 ドウ「なあ、シャオ」 シャオ「なにアル、ハゲ」 ドウ「裏手の広場で、組み手をしないか? ちょうど、お前に試したい新技ができたのだ!」 ――今度、ドウにでも試してみるといい。あの子ほどわかりやすい子はいないよ。 ラオの心の“流れ”を読む力。 それを試すのには絶好の機会だ。 シャオ「は! 私もハゲに試したいことがあるアル! 受けて立つアル!」 ラオ(……ちょっと、似ているね) ラオはふたりの様子を見ていた。 何度も何度も挑みにくる男。 それを、何度も何度も打ち負かす女――。 ラオ「――明日も早いから、ほどほどにするんだよ」 シャオ&ドウ「はいアル!」 ラオ「私は寝るよ、おやすみ」 仲良いことはいいことだね。 そう考えながら、ラオは寝床に向かった。 * 裏手の広場。 辺りは暗いが、月明かりと、店の照明をつければ、なかなかに明るい。 ドウはさっそく、宣言した。 ドウ「はっはっはー! シャオ! 今日こそ、貴様を倒してみせる!」 シャオ「いいから早く千手八脚拳をやってこいアル」 ふたりは構えた。 ドウ「千手八脚拳ではない。俺の編み出した、新たな秘技! 千一手八脚拳を、とくとみよ!」 ドウが力を込める。 ドウ「千一手八脚拳ーーーーー!!!!!」 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!! シャオは、受け流し、かわし、はらい、身を守る。 シャオ(千一手八脚拳……!?) ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!! シャオ(……) ドウ「はっはっはーーー!!!」 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!! シャオ(……ちょっとだけ、早くなってるアル) まあ、いいか。 こいつの拳をさばくのも、悪い修行ではない。 さばきながら、ハゲの目でも見つめるとしよう。 シャオ (じーーーーーーーーーーっ)  ドウ「はっはっはーーーーーー!!!」 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!! うるさいハゲアル。気が散るアル。 シャオ (じーーーーーーーーーーーっ) 目を見ていると、なんとなく、考えていることがわかってくる、ような気がした。     ――はっはっはー! これをみろー! ――今日こそお前に、勝ってみせる! なんでこのハゲは、こんなに私に勝ちたいアル? ――これが、千一手八脚拳だーっ!! なんで、ずっと同じ拳法にこだわるアル? なんで、あの時、ウーミンとハゲが戦ったアル? なんで、こいつは死にかけてまで旅をしてるアル? なんで――。 シャオ (じーーーーーーーーーっ) ドウ「はっはっはーーーーーー!!!!!」 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!     !   そうか。 わかった。     ――目を見ても。   シャオ「――目を見ても心なんか読めないアル拳ーーーーーーーーーーっっ!!!!!」 どっかーーーーーーーん!!!! ドウ「ぐわあああああああああ!! 参ったーーーーー!!!!!!」 ドウの体は宙を浮き、地面にダイブした。 シャオ「考えてもわからないアル! とりあえず今日は寝るアル! ハゲが私に勝とうなんてちゃんちゃらおかしいアルー!」 シャオは、ガッツポーズをしっかり取る。 ドウ「くっ……! 千一手八脚拳でもダメか……!」ガクッ ふたりの力量の差は、縮まったようで、まだまだ遠いようだ。 ドウはその後、少しだけ気絶し、起きて、シャワーを浴び、ストレッチをして体をほぐし、日課の読書をして、就寝した。

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