最強バトルの人 / 第26話

第18話 近づいている

それから一週間が過ぎた。 4018! 4019! 4020! ――いつか、テメー等に合わせたい人がいる。どっちかっていうと、シャオのほうだがな。 火鍋老師が言っていた。 ただし、今のままではその人には会いにいけない。 まず、火鍋老師の怪我が治ること。 そして、俺の腕立て伏せが10000回に達すること。 4021! 4022! 4023! 初日とは、全然ちがう。 体が軽い。 しかし、効率的な腕立て伏せをできるようになったわけではない。 ――心が、精神が強くなっている! 4024! 4025! 4026!     火鍋「根性ってもんはな、限界がねえんだ。でも体には限界がある。それを近づけろ」 4027! 4028! 4029!     火鍋「自分の後ろに親や女《スケ》が怯えていると思え。自分の後ろにはぜってーいかせねえ。そう思うことで体が精神に追いつく」     ……4030! 4031! ……4032……っ! どしゃあっ ドウの体が倒れる。体は限界。 しかし、初日ほどの疲労はない。 初日は、精神が追いついていなかった。 今は、もう体は動かないが、不思議な爽快感があった。 火鍋「――よしっ! 今日は終いだ。それから、いったん5000を超えたら別の修行をはさむことにした。あとは麻雀だ! テメー昨日俺にロンしたな? 今日は負けねーぞ」 ドウ「……はぁ! はぁ! 麻雀でも、負けませんよ……」 ドウ。3.7。     * 次の日。 シャオ「ふふーん♪ 今日もひとりで修行するアル」 私は、ひとりで山の中に入っていった。 ドウが羨ましくも火鍋に修行をつけてもらっているので、私だってひとりでいろいろやっているのだ。 実は私は、爸爸《ぱーぱ》以外の人に修行をつけてもらったことがない。それも10年以上も前のことだ。 木々の間を、朝の木漏れ日がさしている。 小川の流れる音、鳥がさえずる声がする。 何万年ここにあるのだろう。考えてもわからない。そんな丸くて大きな岩が、点々と地面に埋まっていた。 そこで私は、精神統一をする。 ――――――すう、と息を吸い込んで。     シャオ「しっ!」 岩がひとつ。 シャオ「っ!」 岩がふたつ。 シャオ「――そこっ!」 岩がみっつ。     シャオの発勁《はっけい》が入る。 すると、岩たちに亀裂が走り――。     パカッ。     卵を割るように、綺麗に割れた。       シャオ「――うん、きょうも絶好調アル!」♪ シャオ17才、満腹。かなり出来上がっている。 シャオ。7.3。     * シャオはさらに山の奥に入る。そこで、綺麗な池をみつけ、ごく、と水をすくって飲んだ。 ――すると、 シャオ「いのししアル」 目の前に、野生の大きないのししがいた。 ずんたずんたと、目の前を横切る。 シャオは、竹の間に身を隠した。 そこに、反対側からもいのししが歩いてきた。小さないのししだ。 二匹のいのししの間には、おいしそうなキノコがたくさん。どちらも狙っている。     シャオ(――大2 対 小1。アルな) シャオは、普段から修行のため、こうやって生き物の力量を読む。 研ぎ澄まされた『読む力』は、ここ何年かはほとんど外したことがない。 しかし――。 いのしし小「ぷぎーーっ! ぷぎーーっ!」ポコポコ いのしし大「ぷぎっ!ぷぎっ!」ポコポコ ―― いのしし小「ぷぎーー♪」エッヘン いのしし大「ぷぎー!」ニゲロー (――小さい1のほうが、勝ったアル) そのとき、草むらの中からこどものいのししが3匹、小さないのししに群がった。 いのしし小「ぷぎー!ぷぎぷぎ」サアオタベ 子いのしし「ぷぎー」オカアチャンアリガトウ 子いのしし「ぷぎ」モグモグ 子いのしし「ぷー」モクモク シャオはふふっと笑った。 こどもがいたのアルね。 私の読みもまだまだだ、そう思って振り返ると――。         「――你好《ニーハオ》」 ――――――!!? 細身の、物腰やわらかそうな男が立っていた。 シャオは、背後まで近づかれていたことに気がつき、半歩下がって構える。     シャオ「――黒龍拳のものアルか」 細身の男は、キョトンとした顔をした後、軽く笑った。 「ははは。違いますよ。私はただの旅人です」 男はニコリと笑う。 「昔から、出会った人には挨拶をするように母から教わっていまして。驚かせたなら申し訳ございません。では」 ザッ ザッ ザッ 男はそのまま竹やぶの中に入っていく。 シャオ「――まつアル!」 男が振り返る。 木々が揺れる。 鳥たちがいっせいに飛び立った。 「――――まだなにか、ございますか?」 シャオは男の目を睨んで言った。 シャオ「――どうして、目をつぶっているアル?」 男はまた笑った。 「はははは、これまたすみません。こう見えても開いているのですよ」     妖燕火「……では、また会いましょう」 男は竹藪に消えていった。     シャオ(――あの男。――この私より――) * ザッ ザッ ザッ 妖燕火(――シャオ・ロンパオ。火鍋。ドウ・ナットンジャ……) 妖燕火(――彼女らでは、束になっても呪殺火の奴には敵わないでしょう) ザッ ザッ ザッ 妖燕火(――しかし、呪殺火は消息不明。すでに応戦し、呪殺火を破ったかと見たが。また、私の見込み違いのようですね) 妖燕火(奴は気分屋。まだ殺る気がでないだけでしょう) ザッ ザッ ザッ 妖燕火(――神雷火と暴風火の回収は、あのパンダが見張っている限り、私一人では難しそうですね。まあ、他にも四天王候補はたくさんいます。固執することもないでしょう) 妖燕火(――それより。) ピタッ 妖燕火が足を止めた。 妖燕火(――やはり、私の見込んだとおり。シャオ・ロンパオ。彼女が一番の強者でしたね。さあ、次の策を立てるとしましょう) 妖燕火(――王の一手をね)クスッ 男はそのまま闇に消えた。 *     ……っっ5000!! どしゃあっ 火鍋「ほう。やるじゃねーか。よし、次の修行に進むぞ」     ドウ。4.5。

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