最強バトルの人 / 第155話
第66話 ひとりじゃないアル
シャオ「――ヨウエン。借りるアル」
シャオは、拳を――。
ウーミンの頬に、叩き込む!!!
【【めしゃあ!!!!!】】
ウーミン「――――――――っっっ!!!」
ウーミンが、横一線に吹っ飛ぶ。
黒龍拳軍総本山。
コンクリート製の施設にぶち込まれ、壁が崩れた。
シャオ「――返すアル」
ヨウエンは、一部始終を見て、なお意味がわからなかった。
ヨウエン(――“借りる”? “返す”? ――何のことだ?)
シャオ「ハゲ。火鍋。お前たちからも――」
シャオ「借りるアル」
シャオが跳躍する。
壁に埋め込まれたウーミンの頭に。
かかと落としを叩き込む!!!
【【ちゅどおおおおおおおん!!!】】
ウーミン「ぬ、ぬおをををををををー!!!」
壁を突き破り、床に突き刺さり、大きなクレーターができた。
コンクリートの壁が。床が。
積み木を崩すように、壊れていく。
ウーミン「……があああああっ!!!」
立ち上がる。
身体中にまとわりついたコンクリートを払い捨て、シャオを睨みつけた。
ウーミン「……“完成”、したか」
シャオ「…………“完成”? よく、わからないアル。でも今は、ひとりじゃないアル」
――ざああああっ。
その時、風が吹いた。
秋の夜風。急な突風。
森の木々が、ざわめく。
何十本、何百本の大木が、揺れた。
シャオ(――――――――。)
シャオには。
その無限とも思える数の葉っぱ一枚一枚の。
揺れる向き。揺れる早さ。揺れる強さが。
――“すべて”、感覚でわかっていた。
鳥が飛び立つ。
百羽を超える。
シャオには、その鳥たちの。
羽毛の。
一本一本の揺れ方が。
“すべて”、わかっていた。
とんっ。
シャオは、空を飛ぶように、高く高く、飛び上がる。
シャオ「――鳥さんたちからも、葉っぱたちからも、風からも、借りるアル」
シャオは、拳を握りしめる。
シャオが読んだ“流れ”。
なにか、とてつもなく大きな大きなものの“流れ”とは――。
ウーミン「―――“森羅万象”、か」
風が、止んだ。
シャオ「――ウーミン」
すう。
シャオの目が。
真っ白に、輝いた。
【【シャオ「――ウーーーミーーーーーーーーーーン!!!!!!!!」】】
シャオが、空から。
いっぱいに引いた矢が飛び立つように。
ウーミンの顔面を、殴り抜ける!!!
ウーミン「――っっっっっっっぐああああああああああああああああああ!!!!!!」
【【ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!】】
ウーミンの体は、コンクリートの壁を何重にもぶち抜いた。
ドウ「……なるほど。森羅万象、か」
ヨウエン「――! ドウ!? 生きていたのですか!?」
ドウ「ああ……。満身創痍、だがな……。回復の湯を持ってきて、本当に、よかった……」
子パンダは、ドウの頭に湯をかけている。
さながら、棘のないサボテンを育てているようだ。
ドウ「ありがとう、子パンダ……。あとの分は、老師にとっておいてくれ」
子パンダ「キュウ」
ヨウエン「シャオは……! ……“覚醒”したのでしょうか? 森羅万象、とは……?」
ドウ「さっぱりわからん! だが、シャオは常に周りの“流れ”を読んできた。その範囲を……、さらに深く、広くしたんだろう。ウーミンの言葉を借りるなら……」
ドウ「――森羅万象の“流れ”を、読む。それが、今のシャオだ」
ざっ。ざっ。ざっ。
シャオ「――ウーミン」
ウーミン「…………ふふ。ふはははは!!」
ずぼっ。
ウーミンが、瓦礫のなかから這い出した。
黒龍拳軍総本山は、そのほとんどが崩れ落ちていた。
瓦礫の山。
もはや、廃墟だ。
ざっ。ざっ。ざっ。ざっ。
ウーミンの眼は、まだ死んでいない。
金色に輝く眼で、一心にシャオを見つめている。
ウーミン「…………儂は」
ざっ。
ウーミン「……儂だけのために、戦うのではない」
ざっ。
シャオ「…………」
ウーミン「……すべては、“中国”のため。そして……」
ざっ。
ウーミン「……儂が、“中国”だ」
ざっ。
シャオ「……ちがうアル」
ざっ。
ウーミン「……何が違うというのだ」
ぴたっ。
再び、射程圏内に入る。
シャオ「お前は、“人間”アル」
ウーミンの爪が、龍の爪となる。
【【ウーミン「――珠龍爪《ジュロンジャオ》!!」】】
【【シャオ「――――どこからどう見ても人間アル拳ーーーーー!!!!」】】
――ガツゥゥン!!
二人の拳がぶつかり合う。
ウーミン「――ぬおおおおおっ!!」
シャオ「――ウーミン。お前からも、借りるアル」
ウーミン「――……ぐ、ぐおおおおおおおおっっっ!!!!」
――ゴシャアアアアアアアン!!!!
コンクリートの柱を突き破り、瓦礫に埋もれた。
ざっ。ざっ。ざっ。
シャオは、ウーミンのそばに近寄る。
そして、瓦礫に埋もれたウーミンの首を左手で掴み、引きずり出した。
ウーミンの体は、ボロボロだ。
抵抗する力がない。
もはや、勝負はあった。
シャオの右手に、森羅万象の“流れ”が溜まっていく。
拳を。
ウーミンの顔面に向けて。
振りかぶっている。
ウーミン「………儂を、殺すか」
シャオ「………………。」
――森羅万象の“流れ”が、拳に溜まっていく。
森羅万象の“流れ”が、拳に溜まっていく。