最強バトルの人 / 第4話

第2話 特撮ヒーロー

「シャ〜ハハハハァー!」 怖い。ヘビの怪人だ。 暗闇の中、高層ビルの屋上で、パトカーの赤い光を浴びている。 警官が、怪人を見上げて言った。 「犯人! 人質を放しなさい!」 [[illustration:https://api.kakippa.com/api/covers/illustrations/5f02bf16-12c5-4480-9d7f-82c77220e38d/1790417314917-964a8280-2f0f-4042-b135-6cf8f74f9832.jpg]] 全身がウロコに覆われた怪人。 その右腕は――巨大なヘビの首。アナコンダそのものだ。 ぐるぐると女の人に巻きつき、締め上げるたびにミシミシと音が鳴る。 「放せだァ〜?」 怪人が、ギョロリと女の人を見る。 「まだこいつを食ってもねェのによォ〜」 巨大なヘビが顎を外した。 「放すバカがいるかァ! シャハハァッ!」 やめろ。食べるな。 そのとき。 『――――ドアッハハハー!』 どこからともなく、男の声。 「!? なンだァ?! このムカつく声はァ!?」 地上。 マンホールの蓋がゴトッと持ち上がる その穴から、全身青いコスチュームの男が勢いよく現れ、ニコリと笑った。 [[illustration:https://api.kakippa.com/api/covers/illustrations/5f02bf16-12c5-4480-9d7f-82c77220e38d/1790417405329-3f3340fc-2508-4c78-84e7-1c96af393a52.jpg]] 「おっと、失礼」 ……誰? 「トアッ!」 男はもう一度、マンホールの中に入る。すると――。 ガチャッ。 次に開いたのは―― 400メートル上。怪人のそば、屋上のドア。 地下から屋上へ、一瞬で移動した。 「えっ」 怪人と青い男が、目を合わせる。 「ハハァ〜ン……入り口と出口を自在に繋げる瞬間移動《テレポーテーション》ってところか。ヒーロー参上って訳かい」 「おっと、失礼。申し遅れました」 男は怪人を前にしても、笑っていた。 「私、ドアマンと申します」 ドアマン。 「あなたの心を助けるため。扉を開けに参りました」 「ドアマンだァ? ふざけたヤロウだ。オレの名は、ザ・ヴァイツ!! 見ての通りの悪者よォ!!」 ズオオオオッ!! ヴァイツの右腕が伸びた。 速い! コンコンッ。 ドアマンが空中をノックする。 何もない場所に、ドアが現れた。 ヘビが、その中へ飛び込む。 どこに行った? もう一枚。ヴァイツの後ろにドアが現れた。 分かった! ヘビの攻撃を敵に返す気だ! 後ろから、行け――! 「オレの後ろなんだろォ!? シャッハァー!!」 惜しい! ヴァイツも分かっていた。 背後から飛び出したヘビを、ぐにゃりと曲げる。 「オレさまの右腕はなァ! 伸縮自在ッ! 自由自在よォッ!!」 「ドアマン!」 グルン!! ヘビが、ドアマンの全身にとぐろを巻いた。 「捕まえたぜェ!! シャ〜ハハハハァー!!」 ミシッ。 ミシミシッ。 まずい。ぼくは知っている。アナコンダの巻きつく力は、象をも気絶させるんだ。 ドアマン、がんばって。 「このまま絞め殺してもいいけどよォ……」 「ヒーローってのは、どんな味がすンだろうなァ〜?」 ヘビに食べられる。 なのに、ドアマンは暴れなかった。 怖くないのか? 締め上げられたまま、表情は笑ったままだ。 「これはこれは……!」 ミシミシミシミシィッ 「……! 非常事態、ですね」 ドアマン! がんばれ! すると、ドアマンから蛍光色の緑の光が溢れ出した。 「ナンバー|106《イチマルロク》!」 「非常口《エマージェンシー》!」 「ドアーーーーッ!!」 ガチャッ!! 「なにィ!?」 ドアマンが消えた。 「どこ行きやがったァ!?」 「おっと、失礼」 「!?」 ヴァイツの背後。 ドアマンが、服についた埃を払っていた。 ……かっこいい。 「テメェェェ!!」 ヴァイツがヘビを伸ばす! コンコンッ! コンコンッ! 今度は、ヴァイツの左右。 二枚の扉が現れた。 「ナンバー|202《ニーマルニ》! 両面!」 「スライド!」 「自動ドアーーーーッ!!」 ガッシャァァァン!! 「ぐおおおっ!?」 二枚の扉が左右からヴァイツを挟み、その身体をがっちりと拘束した。 「こんなモンで……オレを倒せると思ってンのかァ!!」 「もちろん」 ドアマンが、頭上をノックした。 コンコンッ。 「……あ?」 ヴァイツが見上げる。 夜空に、巨大な鉄の扉が現れた。 でかい。 「な……なんだァ、ありゃ……」 ドアマンが構える。 「ナンバー|505《ゴーマルゴ》!大型!」 ガコン!! 「電動!」 ウィィィィィィィン―― 巨大な扉が動き出す。 「ま、待て……」 来る。 「待て待て待て待てェ!!」 来る! ドアマンが腕を振り下ろした。 「シャッターーーーーッ!!!!」 ズドオオオオオオオン!!!! 「ギャアアアアアアーーーーッ!!」 やった。 ドアマンが勝った! ――でも。 「人質が落ちるぞぉーー!」 「……あっ!」 女の人! ヴァイツの拘束から解放された人質が、屋上から落ちていた。 間に合わない。 地面に叩きつけられる―― 目を閉じた。 …………。 音がしない。 恐る恐る目を開ける。 警官達も、屋上を見上げていた。 夜空。 大きな満月を背に、ドアマンが立っている。 チッチッ。 指を振って、パトカーを指差した。 警官が後部座席のドアを開ける。 ガチャッ。 「た、助かった……!」 女の人だ。生きてる! 「人質、無事救出! 人質、無事救出!!」 わああああああ!! 「ド・ア・マンッ!! ド・ア・マンッ!!」 すごい。 怪人を倒して、人質も助けた。 あんなに怖い怪人に捕まっても、ずっといつもの顔だった。 ドアマンが、こっちを見る。 「君たちにも、扉は開けられる!」 コンコンッ。 「合言葉は――?」 「「「おっと、失礼!」」」 「おっと、失礼!」 思わず、一緒に叫んだ。 満月の下で、ドアマンが笑った。 ぼくも、誰かを守れる人になりたい。 ぼくは、テレビの電源を切った。 ◆━━━ 最 強 バ ト ル ━━━◆ ドアマン vs ザ・ヴァイツ ――――――勝者 ドアマン ――――決まり手 大型電動シャッター

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