最強バトルの人 / 第3話

第1話 旅する拳法少女

♪テケテケテンテンテンテンテン ♪テケテケテンテンテン――
――舞台は中国。 「おっちゃん、肉まん50個! 謝謝《しぇーしぇー》アル!」 [[illustration:https://api.kakippa.com/api/covers/illustrations/5f02bf16-12c5-4480-9d7f-82c77220e38d/1790397825715-e55eab7b-3ee3-4860-8494-9b9f88647571.jpg]] ――ひとりの少女と、子どものパンダが歩いていた。 少女は、お団子頭に赤い拳法着。 それが、この物語の主人公のひとり。 シャオである。 シャオ「うまそうアル〜」 子パンダ「キュウ〜」 シャオは、市場で買った肉まんを両手いっぱいに抱え、幸せそうな顔で運んでいる。 少女の体を隠すほどの大量の肉まん。 もちろん、前は見えていない。 ドンッ。 「あいたっ!」 誰かとぶつかった。 シャオ「アイヤー! すまんアル!」 男「いや、こちらこそすまない。……ん?」 少女を見た男は、目を見開いた。 男「おっ、お前は! シャオ・ロンパオ!」 シャオ「? 会ったことあるアルか?」 男「この顔を見ろ! お前がよーーく知ってる男だ!」 見ろ、と言われたので、しょうがなく、肉まんの隙間から男の顔を覗く。 その男の顔――。いや、頭を見上げたシャオは、驚きの声を上げた。 シャオ「――おっ、お、お前は――――!!」 男「ふん、ようやく思い出したか」 シャオの目線は、男の頭に釘付けだ。 その輝きに、目を細める。   シャオ「ハ……! ハ……っ!」           [[illustration:https://api.kakippa.com/api/covers/illustrations/5f02bf16-12c5-4480-9d7f-82c77220e38d/1790397801157-9ec5d596-cdea-4a5a-a684-89ab632335cb.jpg]]   シャオ「ハゲているアル!!」 男「だあああああっ!」ズッコケ 男のズッコケは、まさに古典的と言うしかなかった。 * ドウ「――って、違う! この俺はドウ・ナットンジャ! シャオ、お前の幼なじみだ!」 シャオ「なんだ、ドウアルか。ニーハオ」 ドウ「ニーハオ」 ふたりは律儀に頭を下げた。   ドウ「……あいさつが済んだところで! シャオ! ここであったが百年目! 今日こそお前の拳法を破ってみせよう!」 シャオ「百年目? だいたい十年ぶりアルよ」 ドウ「それは、言葉のあやってやつだ」 シャオ「それに……」       ブワッ!     少女が両手で抱えていた肉まんすべてを、空中に放り投げる。 肉まんは、空高く舞い上がった。 「――そのセリフ、もう聞き飽きたアル」 シャオの気迫が、変わった。 彼女が編み出した拳法の構え。 太極拳をベースとした、私流の拳法だ。 子パンダは、激しい戦いになることを予見し、さささっ、と白と黒の体を隠した。 ドウ「――そうこなくっちゃあな!」 ドウも拳法の構えを取る。 鍛え上げられた身体。鋭い眼光。《《精悍|せいかん》》な顔立ち。そして、よく磨いた水晶玉のような、ツルツルの頭。 まさしく、拳法家として理想的な佇まいだった。 ドウ「はあ!」 ドウの拳。 受け流される。 ドウ「とう!」 さらに拳。 また、受け流される。 ドウは、シャオの目を睨み、込み上げる思いを口にした。 ドウ「――俺はお前に、何度も挑んだ! しかし、一度も勝てたことがない! ここで勝利を手にして、積年の恨みを晴らすのだっっ!」 カチンッ。 少女の目が据わる。 シャオ「そういう言葉は」 瞬く間に、ドウの拳が、打ち落とされ――。 シャオ「もっと強くなってから言えアル!」 ドドオッ!! ドウ「おうっ……!」 腹に、シャオの拳が二発入る。 少女のものとは思えないその拳の重さに、ドウは悶絶した。 ドウ「……はっ! 鍛錬は欠かしていないようだな!」 シャオ「私、すっごく強いアルよ。子どもの頃より」 シャオ「ずーーっとずーーっとアル!」 バシバシバシバシッ! 少女の蹴り。 ドウの頬を、目にも止まらぬ速さで往復ビンタした。 ドウ「ぐおおおっ!」 体がよろめき、思わず膝をつく。 ドウ「……俺だって! これまで功夫《クンフー》を積んできた……!」 青年は、意識を集中させながら、立ち上がる。 ドウ「お前に勝つため、少林拳、詠春拳、八極拳、あらゆる拳法家を倒し! その拳法を学び! 練り上げた! 古今の書を読み! 勉学にも励んだ!」   ドウ「その極意を見せてやろう……!」   シャオは警戒を固める。 明らかに、ドウの空気が変わった。 見たことのないオリジナルの構えだ。 そしてドウは、拳を――。       とてつもない速さで、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も突きまくる!! ドウ「――これが! 俺の奥義! 千手八脚拳《せんじゅはっきゃくけん》だーーーーっ!!」 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!! ドウは止まらない。 ドウ「拳が千本に見えるほどの速さで、突いて突いて突きまくる! 倒せないなら、倒せるまで突きまくるっ! それが、俺の答えだーーーーっ!!」 シャオ「!」 ――こ、この拳法は――! 払う。さばく。打ち落とす。 しかし、対処しても対処しても、さらなる拳が止まらない! ドウの拳の残像は、まるで、何本もの腕があるかのようだ。 少女は、動揺していた。 シャオ「――拳が千本に見えるほどっ……!?」 ドウ「そうだっ!」 少女が震える。 シャオ「――突いて突いて突きまくるっ……!?」 ドドドドドドドドドド!!! ドウ「そうだ! 参ったかっ!」 シャオ「そんな……!!」 ドドドドドドドドドド!!! シャオの手が、拳を打ち払いながら、ワナワナと震えている。 大気が震える。大地が震える。 シャオ「そんな…………!!!」 ドウ「はははーーーーーっ!!」 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド――。               シャオ「――そんなキモい拳法つかうなアル拳ーーーーーーっっっ!!!」 ドッカーーーーーーン!! ドウ「ぐはああああああああ!!」 シャオの拳で、ドウの体が天高く打ち上がる。 シャオは、空中を眺め――。 シャオ「子パンダちゃん!」 子パンダ「キュウ!」 呼びかけに応えた子パンダは、天高く飛び上がる。 そこには、先ほど投げ上げた大量の肉まん。 ぽふぽふぽふぽふっ! 子パンダは、その全てをもふもふの腕でかき集め、そのうちひとつをシャオに投げ渡した! ドウも遅れて、天から落ちてくる――。      │      │      │      │      │ シャオ「――再見《さいつぇん》《さようなら》!」はむっ \どおぉぉぉぉぉおん!/ ドウの体は、砂煙を上げ、地面に打ち付けられた。 シャオ「――むっ! この肉まん、うまいアル!」モグモグ 勝負は決着。 ドウの負け。シャオの勝ち。     ◆━━━ 最 強 バ ト ル ━━━◆ シャオ vs ドウ ――――――勝者 シャオ ――決まり手 キモい拳法つかうなアル拳 * 「う……ううん……」 シャオ「あ、起きたアルか」 ドウが目を覚ますと、茶館でシャオが杏仁豆腐を食べていた。 子パンダは笹をうまそうにかじっている。 シャオ「ハゲ、せっかく久しぶりに会ったのに。懲りないやつアルな」 ドウ「く……くそっ……」 シャオ「はい、アル」 ドウ「?」 シャオ「ここの杏仁豆腐はうまいアルよ。食べて元気だすアル」 ドウ「……ありがとう」 ドウは、差し出された杏仁豆腐を口に入れる。 プルプルッ ドウ「……うまい」 シャオ「よかったアル!」 ドウは、杏仁豆腐をかっこみ、シャオを見つめた。 ドウ「……久しぶりに会ったが、シャオ。お前は強すぎる。……いったい、どれほど壮絶な鍛錬を……」 シャオ「そーか。ハゲはずっと旅に出てたから、知らなかったアルな」 ドウ「?」 シャオは、普段と変わらぬ様子で。 シャオ「私たちの故郷。滅ぼされちゃったアル」 ドウ「な……! そ、それじゃあ……!」 シャオ「みんなみーんな、死んじゃったアルよ」 子パンダ「キュゥ……」 ドウ「! 老師もか! あの恐ろしく強かった、お前の……!」 シャオ「うん。爸爸《ぱーぱ》が守ろうとしてくれた。だけど、たったひとりの男に、殺されたアル」 シャオ「その男の名前は……“黒龍拳のウーミン”!」 ドウ「――っ!!」 シャオ「あの村出身で、生き残ってるの。私と子パンダちゃんと、ハゲだけになっちゃったアル」 「弱かったけど。ハゲてたけど。会えて嬉しかったアル」 シャオは杏仁豆腐の皿を空にし、背伸びをする。 シャオ「じゃ!」 ドウ「! まて! 俺も、連れて行ってくれないか!」 ドウがシャオの手を掴む。 少女がハゲの方を振り返り、微笑んだ。 シャオ「だめアル」 ドウ「っ! そんな!」 シャオ「それに。お前のキモい拳法。千本もなかったアル」 ドウ「……あれは、言葉のあやってやつだ。頼む! 俺だってみんなの仇を……!」 シャオ「だーめアル!」 シャオ「もっともーっと、強くならないと、だめアル!」 ニッ。 少女の笑顔を、夕陽がさした。
――最強バトルは、まだ始まったばかり! 次回、正義のヒーロー vs 悪の怪人! 異能力者! 魔導士! ◯◯◯◯使い! 世界中の“最強”たちが、次々登場! 次の最強は――誰だ!?

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