最強バトルの人 / 第5話

第3話 異能を持つ少年

――ジリリリリリリリ!! 「……ん」 目覚まし時計を止める。 午前7時。朝だ。 テレビからこども向け番組の明るいオープニング曲が聞こえる。 そうだ、昨日、消すのを忘れて寝てしまったんだ。 ♪みんなも 好きなことを好きなだけ―― テレビの電源を消して、ぼくは登校の支度をはじめた。 * [[illustration:https://api.kakippa.com/api/covers/illustrations/5f02bf16-12c5-4480-9d7f-82c77220e38d/1790424344693-cc7ce899-2871-4643-b221-8e1fc8cf3ec9.jpg]] ぼくの名前は久世《くぜ》あると、14歳。 どこにでもいる中学生。 みんなと違うところがあるとすれば……。 クラスメイト「久世くんすごい! また100点?」 「まあね、たまたまヤマがあたったかな」 テストはいつも満点。それがぼくだ。 ぼくは、勉強ができる。 家に帰っても――。 母「全教科満点だったのね。なんでも出来る子で、お母さん鼻が高いわ」 妹「えー、お兄ちゃんだって結構ドジなとこあるのにー」 母「こら! ……夕食の後、部屋に来なさい」 妹「助けてー! またしかられるー!」 このとおり、家族も仲良しだ。 母はぼくをいつも褒めてくれ、口では生意気な妹も、ぼくのことを慕ってくれている。 順調。順調。 ぼくはおどけた調子の妹に、注意をした。 「また泣いて、ぼくの部屋にくるなよ。ちょっと散歩してくるから」 スクッと立ち上がるぼくに、母が言った。 「最近ぶっそうだから、気をつけるのよ」 母の声を背中に受け、外にでた。 ぼくはなんでもできる。 順調、順調だ。 * 夜の街を歩いていると、細身の男がうずくまって倒れているのを見かけた。 なにやら苦しそうにしている。 なんだろう。困っているかもしれない。 守れるものは守れるときに守りたい。 ぼくの信条だ。 ぼくは、彼に近づいた。 「え、えっと、大丈夫ですか? 救急車、よびますか?」 「んァ〜? なんだガキかァ〜」 ズルリと起き上がったその男は、見るからに普通ではなかった。 釣り上がった白い目。全身にウロコ。 そして、右腕がヘビだった。 「シャ〜ハハ、運が良いぜェ〜、こんなところで」 [[illustration:https://api.kakippa.com/api/covers/illustrations/5f02bf16-12c5-4480-9d7f-82c77220e38d/1790455531517-1461f20f-691b-4d2f-8bd8-cb29be62b98f.jpg]] ヴァイツ「ガキを丸呑みできるなんてなァ!」 「う、うわああああ!」 その男、いや怪人は、テレビに出ていたヴィランだった。 最近ぶっそうだとは聞いていたが。 いくらなんでもぶっそうすぎる。 ――というか。 久世(ノンフィクションなのかよ!!) 心でツッコミをいれながら、考える。 周りに人はいない。助けてはもらえない。 どうする? ぼくは考えた。 ①戦う ②逃げる ③アレをやる 脳内の選択肢から、ひとつを選んだ。 久世「――あのっ、『開けたら閉めよ!ドアマン』の名ヴィラン、ザ・ヴァイツさんですよね!? 小さいころ、見ていました!」 ――④処世術。機嫌を良くして帰ってもらう、ぼくの技だ。 もちろん、全部ウソというわけでもない。 小さい頃のぼくは、彼の出ていた番組を本当に楽しんでみていた。 こども向けなのにあまりに怖すぎるこの怪人は、昔のトラウマだ。 ヴァイツ「あァ? おう、サンキュなァ〜」 あ。笑った。これで安心――。 「でもあの番組、オレ、だいぶ前にリストラされちまっててよォ〜」 ヴァイツは一瞬、懐かしそうに目を細めた。 「あの頃はよかったよなァ〜。今は、貯金もねェし、借金もあるし、ハラは空いてるしなァ〜」 「ま、運が悪かったってことで。」 あ。 ヤバい。 失敗した。 「――――いっただっきまァ〜す」 あんぐりとあいた口から牙が覗く。 ぼくはポケットの中をギュッと握った。 それがぼくがみた最後の景色。 視界が暗転した。     ・ ・ ・ ・ ・ ・     ――ジリリリリリリリ!!       「……ん」 目覚まし時計を止める。 午前7時。朝だ。 ♪みんなも 好きなことを好きな―― テレビの電源を切る。 「――――なんだ、夢か」     そう。これがぼくのチカラ。 その日をやり直したいとき、最後に目覚めたところまでを「夢」にすることができる。 『現実を、睡眠中の夢に変える能力《チカラ》』 まるでループものの主人公。だけど、夢にするかは自分の意思で決められる。ゲームのリセットボタンみたいな、チート能力だ。 テスト100点だって、なんてことはない。 間違えたら、何回もやり直しているだけだ。 このチカラは、いつのまにかぼくの手元にあった。 このチカラがあれば、ぼくはどんなことでもできる。 「――――さて、」 ぼくはさっそくスマホで110番をした。 「――――もしもし。不審者の情報提供なんですが――――」 * 夜の街。 さっき、ぼくが襲われたところまで歩く。 そこには……。 「――違うんだよォ!オレはまだなんにもしてな――」 「えー、本部。見るからに怪しい男を確保しました。至急応援願います」 よし。怪人は倒した。 ぼくの代わりに被害に遭う可哀想な人はいなくなった。 守れるものは守れるときに守りたい。 ぼくの信条だ。 これがぼくのチカラ。 名付けて……。 『夢オチ』 ◆━━━ 最 強 バ ト ル ━━━◆ 久世あると vs 怪人ザ・ヴァイツ ――――――勝者 久世あると ――――決まり手 110番

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