最強バトルの人 / 第29話

第21話 10000

シャオとドウの組み手から、数日後。 6000! 6001! 6002! 6003!―― 火鍋とシャオは、河原の堤防にすわり、遠くのドウの修行を見ていた。 ドウの姿は小さな豆粒のようだった。     先に火鍋が口を開いた。 火鍋「すごいだろ」 シャオ「? なにがアル?」 シャオは、ストロー付きの甘い水果茶《フルーツティー》を飲みながら、火鍋を見た。     火鍋「ドウの向上心だ。最初はただの拳法バカだと思っていたが、骨のあるヤツだ」 シャオ「ふーんそうアルか」チュー 火鍋「あいつは、教わったことをな。まず疑ったり、悩んだりすんだよ。でも、試してみる。そして、使ってみる。結局、そのうちのいいところだけを取り込んで自分のものにする」 シャオ「ほうほうアル」チュー 火鍋「普通は、頭で考えて、ダメならやらねえ。だが、あいつは、頭で考えて、ダメでもやってみるんだ」 シャオ「でもこの前の試合は私の勝ちアル〜。ハゲもまだまだアル〜」チュッポン 火鍋「あいつはいつかお前を超すぞ?」 シャオ「それはありえないアル! 私は強いアルー!」カラカラ 火鍋「お前のおかげだな」 シャオ「アル?」 火鍋「お前に負けてから、あのハゲのやる気が急上昇した。そうとう悔しいらしい。バカげた負けず嫌いだな」 シャオ「むかしからアル」ブクブク       ――     また数日後。 シャオと火鍋がたこやきをつついている。 7000! 7001! 7002!――     シャオ「ひはへー」ホフホフ 火鍋「はんは?」ホフホフ ゴクンッ シャオ「この前のハゲって、『最強の意地』使ってたアル?」 火鍋は笑った。 火鍋「まさか。『最強の意地』っつーのは、別に俺だけの専売特許じゃねーがな。本気で意地張って、それがゲキシブじゃねーと意味がねえ」 火鍋はもうひとつ、たこやきをつついた。 火鍋「この前のハゲの意地としちゃ、『絶対にシャオを見返す。』 それだけだな。それじゃあ『最強の意地』とは言わねぇ。あン時のかーなーりシブかった俺くらい、本気で守るもンがねえとな」 シャオ「へー」ホフホフ ホフホフ 火鍋「ただ、根性は仕込めた。あれがド根性まで行けば、お前より強くなるぞ」 シャオ「むっ。たこやきあげないアル」ヒョイパク ヒョイパク ヒョイパク 火鍋「おい! 俺のたこやき!」     7007! 7008! 7009!―― ―― また数日後。 シャオが肉まんを頬張っている。 8000! 8001! 8002! 8003!―― シャオ「この前言ってた、私に会わせたいばぁちゃんって、どんな人アルか?」はむはむ 火鍋「あ――。ま、ひとことでいやぁ……」 8004! 「『《《世界最強の人》》』だな」 8005! シャオ「《《せかいさいきょう》》? ウーミンよりも強いアルか?」 8006! 火鍋「昔はな。今から50年前――」       ――――五十年前。 時の王により、ひとつの号令がかけられた。 『中国で、いちばん強い拳法家は誰だ』 少林拳、詠春拳、八極拳、太極拳、  太祖長拳、八卦掌、象形拳、酔拳……。 名のある者も、名のなき者も。 己こそが最強と信じる拳法家たちが、 一堂に会した。 『《《中国最強トーナメント》》』 中国拳法の頂点を決めるべく開かれた、歴史上最大の武術大会である――。     ――っつうのがあってな。 ばあさんは、その大会の優勝者だ」 シャオ「ふえーすごいアル」はむはむ 火鍋「で、ウーミンのクソ野郎は、その準優勝者だったって訳だ」 8010! シャオ「!」 肉まんを食べる手が止まった。 火鍋「最も、その大会は二度と開かれることはなかった。だから今でも『世界最強の拳法家は?』と聞かれれば、あのばあさんってことになるな」       シャオ「……私は。」 「……私は。爸々《ぱーぱ》がウーミンに、ころされた時、怖くて何もわからなかったアル。でも爸々《ぱーぱ》は、私が知る誰よりも強かったアル」 火鍋「おう。あン野郎は強かったな。ま、俺のが《《ケンカは》》強かったがな」ガハハ 「……爸々《ぱーぱ》より強い、ウーミンより強い、ばぁちゃんがいるアルか……。」 夕焼けがシャオの肉まんをオレンジに染める。 火鍋「まあ、ばあさんもだいぶ昔に拳法家から手を引いてる。今じゃ、行列のできる中華飯店の店主だ」     シャオの顔が明るくなった。     シャオ「そうだったアル! めしのうまいばぁちゃんアル! 早く会いたいアル、」はむはむっ シャオは立ち上がり、 「おーーーーーいハゲーー! 早く10000行くアルーーーー!」        ソノツモリダー 声援一声、声を張り上げた。       ――     また数日後。 9000! 9001! 9002!――     ――     また数日後。 9995! 9996! 9997! 9998! 9999!         ドウ「……い、ち、っまんっ!!!!」 どしゃあっ       火鍋が近寄って、ドウの肩をバンバンッと叩いた。 そして満面の笑みで。 火鍋「よくやったな、ドウ。テメーは、漢の中の漢だよ」     ドウは泣いていた。 ドウ「……!! 老師! この未熟者だった俺を、ここまで鍛え上げてくださり、感謝の言葉も、ありません……!!」ブルブル     火鍋「ふんっ!!」 バギーーーーン!! 火鍋が筋肉を盛り上げると、その全身を覆っていたギブスが、粉々に割れた。 そして、車いすとドウを肩に担ぎ、帰路へと着いた。 火鍋「おう。泣くのはまだ早えーぞ。最終試験が残ってる。そいつを倒したら免許皆伝だ。とりあえず今日は帰って麻雀するぞ」     夕陽が、二人の長い影を作った。

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