最強バトルの人 / 第23話

第15話 足音

病院。 火鍋「ガハハハハハ!! お前等、全部みてたか!? 俺の超シブい啖呵をよ!! ガハハハハ!!」 黒龍拳四天王ふたりを、本当にひとりで片付けたこの漢は。 二回りも年下の若者を捕まえ、止まらなかった。 火鍋「『――漢ってのはな。いざというときに意地はって、ガキを守るもんなんだよ。』キリッ。 クゥ――――――! シブい!! 俺って漢は、なんっってシブい漢なんだ!!! 漢の鑑だ!!」バンバンバン 火鍋が、病院のベッドの側面をバンバンと叩く。 火鍋「おいっ!! ドウ!! いや、俺の一番弟子っっ!! 俺はシブいかぁあ!?」 ドウ「はいっ! 老師はシブいです! まるで、下茹でしてないタケノコですっ!!」 シャオ「……」 シャオは。あの日はハゲともっと強くなるぞと盛り上がっていたが。 それとは別に、このむさ苦しい雰囲気が苦手であった。 火鍋「おい!! シャオ!! 『テメー等なんざ、俺一人で十分なんだよ』。キリッ。お前はこっちのが好きかぁ!? シブいかぁあ!?」 シャオ「しぶしぶアル、しぶがきアル」 火鍋「がぁーーーっっはっはっはっはっはーーーー!!!」 ・ ・ ・ ヒタッ  ヒタッ ・ ・ ・ 火鍋「――そんでなぁ。あン時の俺の頭突きの角度と言ったら、それはそれは綺麗なもんでよぉ。まさに喧嘩の教科書に載せて欲しいっつーか、もう美しいまで言っていいと思うんだよな。がーっはぁっはぁっはー!!」 ・ ・ ・ ヒタッ  ヒタッ ・ ・ ・ 火鍋「――俺のリーゼントがピーーーーンて立つシーンなんだけどよぉ。あそこまで計算して、川に落ちてたっつーか、それ言っちゃうと微妙にシャバイんだけどよぉ。まあ、不良としての、勘。っていうかなぁ。長年やってっとわかるもんなのよ。『あ、ここでカッコつけれるな』っつーかなぁ。であのリーゼントの角度っつーのが――」 ……面倒な男だ。助けてくれたのは感謝しているが、この自慢話はその代償か。私は、こんなにながく人の話をきけない。ふわあ。 シャオ「――眠いアル……」zzz 子パンダ「キュン?」 火鍋「お。寝たか。よし、ドウ! 今から言う俺の話を録音しとけっ!! 後で聞かせるぞっ!!」 ドウ「はいっ!」 ・ ・ ・ 寝たふりをしながら考える。 火鍋という男は、こういう男だ。 『意地を張れば張るほど、強くなる』。 そして、自分が本当にシブい時。最大の力を発揮する。 自らの肉体の限界値を大幅に超えることができるのだ。 黒龍拳四天王。神雷火と暴風火のふたりとの両者ノックダウン。 それが、火鍋という男の最大上限だ。 もう全部本人が教えてくれた。 今、口は元気すぎるくらいだが、火鍋は全身の怪我でしばらく療養が必要で、ベッドから起きられない。しばらくはこのままだという。 私とドウが少しでも部屋から離れようとすると、「お前ら行くんじゃねえ!! 黒龍拳のやつらが俺を襲いに来るだろぉーがっ!! 死んだらシャバイだろぉ!?」と怒られるので、常に病室に面会しているのだ。 考えてみれば、それもそうだ。 私とドウの動きは、バレていた。 『黒龍拳は、強いものはなんでも使う。従わぬもの。弱きものは切り捨てる』 これは、ハゲが教えてくれた黒龍拳の理念。本人たちは『黒龍の意思』と言ってカッコつけているそうだが、別にカッコつけるようなもんではない。 しかし、やつらは実践派だ。 実際、これまでのやつらも、武器は使うわ、ふたりがかりでくるわで卑怯なやつらだった。強ければそれでいーのだ。 だからこそ、火鍋の読みは正しい。 次の展開は。 『また四天王がふたりがかりでやってくる』 『さらに強い刺客が来る』 それがいつかはわからない。 神雷火と暴風火は、グルグルに縛って、火鍋の家に置いてある。 たまに、ハゲが食事を持って行っている。 ウーミンの居場所については、まだ口を開かないそうだ。     だからこそ。今できることは、火鍋の体を早く治し。修行をつけさせる。 火鍋も、爸爸《ぱーぱ》との関係をああは言っていたが、黒龍拳を見るときの目は、とても借金のことだけを考えているようには見えなかった。 火鍋も、旅に加える。 今のままでは、次の四天王はおろか、ウーミンには勝てない。 だから、強くなる。 もっともっと、強くなる。 もう、誰も失わなくていいようになるまで。 しかし……。     ――本当に、強いだけで、いいアルか? そう思いながら、本当に眠くなってきて、病室の椅子で眠ってしまった。     * リーリーリー コロコロコロ 初夏の夜。 ぬるい風が、木々を揺らせている。 月明かりと、病院から漏れるライトが、暗い道を照らしていた。     呪殺火「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ。」ザクザクザク     ヒタッ  ヒタッ     呪殺火「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ。」ザクザクザクザクザク       ヒタッ  ヒタッ       呪殺火「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」ザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザク       ヒタッ  ヒタッ             呪殺火「コロス……ヒナベ……。」ザクザク ヒタッ  ヒタッ       呪殺火「コロス……ドウ……。」ザクザクザクザク ヒタッ  ヒタッ         呪殺火「コロス……シャオ……。」ザクザクザクザクザクザクザクザク ヒタッ  ヒタッ         呪殺火「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」ザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザク         ぐちゅ。       ぐちゅ。       ぐちゅ。       呪殺「コロスコロスコロス……。ン?」       ぐちゅ。       ぐちゅ。       ――くつしたがぬれてる。なんで?       ――あめもふってないのに。       ――いやだなあ。きもちわるいなあ。       ぐちゅ。     ぐちゅ。     ぐちゅ。     ぐちゅ。     ぐちゅ。     ぐちゅ。     ぐちゅ。     ぐちゅ。     ぐちゅ。     ぐちゅ。             ぐにょ。       呪殺火「…………ン? ワーウデダー」       ――ウデ。あおじろいこどもの。 ――ウデ。なんで? ――ウデ。ウデ。ウデ。           腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。腕。     ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア                 沼男「   」ごくん       * ウギャアアアア     シャオ「ん? 今なにか聞こえたアルか?」 ドウ「いや、なにも?」 火鍋「いやぁーー! 俺こそがまさに『漢のなかの漢』だよなぁーーーー!! クゥーーーーー!!」 子パンダ「キュ?」

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