最強バトルの人 / 第96話

第39話 外道

――外道。外道。外道。 そうだ。 外道で何が悪い。 ――宗師にたてつき、謀反《むほん》を起こした私、妖燕火《ヨウエンフオ》は……。 命が、惜しくなった。 死にたくない、もっと生きたい。 結局、一番可愛いのは自分の命だ。 外道と言われても構わない。 これまでも、私の策で、何人もの人が死んでいる。 何を勘違いしていたのだろう。 今さら、正義感ぶっても。私の行き先は、地獄だ。 ――そうだ。 ラオ・チュウを、黒龍に。 逆らうならば、死を。 ――それが、“黒龍の意思”だ。 * ジョアンナ「じゃーねェー! バイバーーイ!」ブンブンブン シャオ「ばいばいアルーーー!」ブンブンブン なんとか一日かけて火鍋を組み立て直したジョアンナは、また次の街へと旅立った。 火鍋も無事、復元が成功し、残ったエビチリを食べている。 シャオ「私の作ったエビチリ、どうアル?」 火鍋「うん、うめえ」モグモグ シャオ「……それだけアル?」ジー 火鍋「? なにがだ? ところでばあさん、こいつらは強くなったか?」モグモグ シャオ「……」 ラオ「さあ。どうかねえ。あたしは人手が欲しかっただけだからねえ」 火鍋「よくいうぜ」モグモグ ドウ「火鍋老師! ぜひ、俺と組み手をしてください! 進化した俺の千一手八脚拳《せんいっしゅはっきゃくけん》を、見てほしいのです!」 火鍋「おう! その前に、シャオ! ビールだ!」 シャオ「……お金、もってるアル?」ハイドーゾ 火鍋「金ェ!? あるわけねェだろ!!」ガハハハ、グビー ラオ「こいつは昔からこうだよ。もともとは、うちで食い逃げしようとしたから、とっ捕まえて、ぼこぼこにして、無理やり皿洗いさせたのさ」 シャオ「ほんっと、だめだめ親父アル」 ドウ「ああ! 救いようがないな!」 火鍋「おい、師匠だぞ」 * ――まさか。 老厨中華飯店に送り込んだ部下からの報告によれば。 ラオ・チュウのもとに、身元がわからなかったシャオ・ロンパオも。火鍋も。――死んだはずの、ドウ・ナットンジャも、集まっているとは。 ――《《強者| つよきもの》》のもとには、《《強者| つよきもの》》が集まるというが。 妖燕火《ヨウエンフオ》「……これも、何者かの意思なのでしょうか」 ――何者、とは? 自分で自分の耳を疑った。 無理もない。 この前から、怪異といい、ドウ・ナットンジャが生き返っていることといい、盤外のことが多すぎる。 今、私に残された選択肢は――。 どんな手を使ってでも、生きのびる。 それだけしか、ない。 ……あらゆる想定をしろ。“王手の妖燕火”。 盤外さえも読み取らなくては、生き残れない。 ――私の策が、なぜこうも失敗する? 読みが甘い? 運? 運命? ――仮に運命というのがあるとすれば。 それを操っているのは、誰だ? ――神? 信じてなどいないが。 なんせ、怪異がいるのだ。 神がいてもおかしくはない。   ――または、悪魔。 悪魔が運命を操っているとしたら。 何のため? 悪魔に都合の良い世界のため? それとも、ただ面白がっているだけ? ――この世界に、干渉している“誰か”がいる?   人なのか? 神なのか? それとも、悪魔? それとも――。 ――妖燕火の頭脳は、かつてないほど回転していた。 これまで盤面を読むことを強いられてきた若き知将は。 ついに、盤外を。 いや、盤外どころではない。 ――もっと大きな何かを、読もうとしていた。         妖燕火の糸のような瞳が。       “わたし”を 見つめる。                    ⌒ ⌒ 「そこにいたんですね。“読者”さん」     *     「――そういうことですか」 妖燕火は、ひとり部屋で、ブツブツと呟く。 一心不乱に、“何か”を読んでいる。 「この作品は、“最強バトル”。ふふ、なんて馬鹿らしい名前なのでしょう」 「シャオ・ロンパオが主人公。彼女が黒龍拳を潰すまでのお話」 「ヒーロー、怪人、異能力者、異世界人――。こんなにキャラクターがいて、ちゃんと扱えるのでしょうか」 「そして私は、敵の組織の幹部。なるほど、わかりました。だから策がうまくいかなかったんですね」 「――私が、主人公でないから」 「――ふふふふ。……ははははは!!」 「――何を見てるんですか」 「今ならまだ、間に合いますよ」 「老厨中華飯店に、爆弾を取り付けました」 「1000個」 「私の部下も、1000人。明日、老厨中華飯店を襲います」 「この物語は、おしまいです」 「シャオも、ドウも、火鍋も、ラオも。ジョアンナとかいう人は――どこに行ったか知りませんが」 「だって、書いていないものね」 「次の回を開いてみてください。その指で」 「そうしたら、全部木っ端微塵になります」 「シャオの仇討ちも。ドウがシャオに勝つ夢も」 「全部なくなりますよ」 「瓦礫になった老厨中華飯店で、あなたたちの引きつった顔を見るのが楽しみです」 「――主人公なんて、卑怯ですよ」 「さあ、早く。次の回を開いてください」 「わたしが、爆弾のスイッチを押すところから、始まります」 「もちろん、私も店の前まで行きますよ」 「そうしないと、物語に出演できませんからね」 「こんな話、早く終わってしまえば良いんです」 「では、私は店に向かいます。あなたたちは、次の回に進んでください」 「――もっとも。そんな惨状が見たくなければ、ここで読むのをやめてもいいですよ」 「――ふふふふ」 「ははははははははははは!!!!!」 「――次回、“第40話 おしまい”で、会いましょう」

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