最強バトルの人 / 第134話
第54話 吹き替えで見た
「次! 中堅、シャオ・ロンパオ対! 副将、沼男!」
≫≫≫≫ 最 強 バ ト ル ≪≪≪≪
シャオ・ロンパオ vs 沼男
【名前】シャオ・ロンパオ
【属性】拳法家
【年齢】17
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【名前】沼男
【属性】都市伝説 / 怪異
【年齢】???
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――いったい、どうすればいいアル。
私の目の前には、黒い沼。
ヨウエンは、背中についた泥が広がり、沼となって、無数の腕に引き摺り込まれた。
私の拳法は、人間を相手にしたものだ。
いったいどうやって、戦えばいいのだ。
――でも、やるしかない!
みんなのおかげで、ここまで来れた。
ウーミンは、もう目の前だ。
体を張ってくれたドウ、ヨウエンのためにも、負けるわけにはいかない――!
――パサッ。
白い布が投げられ、私の前に落ちた。
――?
火鍋「棄権だ」
「勝負あり! 勝者、沼男!」
どわおおおおおん!
――?
なんだ、なにが起きた?
◆━━━ 最 強 バ ト ル ━━━◆
シャオ・ロンパオ vs 沼男
――――――勝者 沼男
――――決まり手 不戦勝
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火鍋「おいシャオ。どけ。俺の番だ」
*
シャオ「なんでアル! 私は戦えるアル! たたかわせろアルー!」ムキー ポカポカポカ
火鍋「おい、わかったわかった。だから殴るんじゃねえ」
たたかわせろー、たたかわせろーとうるさいシャオの声で、ツルツル頭の頑張り屋が目を覚ました。
ドウ「……う、ううん……。は! シャオ! どうした! 腹でも減ったか!?」
シャオ「ちがうアル! 火鍋が、火鍋が……!」ムキー
ドウ「老師! シャオが何かやったのですか!?」
火鍋は、ムキになって腕を振り回すシャオの頭を、片手で押さえている。
火鍋「いやよぉ。あんな得体の知れねぇやつに、シャオはぶつけられんだろ」
火鍋は、冷静だった。
いくつもの死線をくぐり抜けてきた火鍋だ。
戦って、勝つか負けるか。
いや、「生きるか死ぬか」。
自然とわかるのだ。
ドウは、改めて沼男の姿を見る。
沼だ。沼から無数の腕が蠢いている。あんなものは、どんな文献にも出てこない。
ゼンマイ人形になった少女の耳に届くよう、確かめるように聞いた。
ドウ「――シャオ。お前は、仇を討つために、ここに来たんだな?」
シャオ「そうアル! はやく戦わせろアルー!」
ドウ「なら、火鍋老師に任せるべきだ。大丈夫。老師なら『ド根性』で、なんとかしてくれる」
火鍋「そういうこった」
火鍋は、駄々をこねるシャオの処理をドウに任せ、沼男の前まで、のっしのっしと歩いていく。
ポケットに手を入れ、肩を揺らしながら。
ドウ「みろ。あの自信だ。老師は、異世界のことも、魔法のことも知っていた。怪異の対処法も心得ているんだろう」
シャオ「……そうアルか?」
「――次! 副将、火鍋対! 副将、沼男!」
「始めぇぃ!」
どわおおおおおおん!
≫≫≫≫ 最 強 バ ト ル ≪≪≪≪
火鍋 vs 沼男
【名前】火鍋
【属性】喧法家
【年齢】45
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【名前】沼男
【属性】都市伝説 / 怪異
【年齢】???
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火鍋は、両腕をポケットに突っ込んだまま、仁王立ちをしている。
不適な顔で、沼を見下ろす。
沼は。ただ、そこにあるだけ。
四方に飛び散った沼をかき集め、今ではキングサイズのベッドも沈ませられるほど大きく広がっていた。
火鍋は、息をたっぷりと詰め込み――。
火鍋「――よぉぉぉぉーーーしっ!! 今から俺は『ここから一歩も動かねえ』っっっっ!!!!!!」
会場全体が、大声でビリビリと震える。
軍師火も、手で耳を押さえている。
ドウ「――出たぞ! 老師の『最強の意地』だ!!」
シャオ「――四天王ふたりと戦ったとき、やったやつアルか!?」
『最強の意地』。
人は、意地を張れば張るほど、強くなれる。
さらに火鍋は、己が本当にゲキシブなとき。
肉体の限界値を大幅に超えることができる。
勝ち抜き戦、副将同士。
ドウも、シャオも、火鍋のシブい姿を見ている。
発動条件は、そろった。
ボオオオオオッ!!!
嘘みたいだが、火鍋の体から炎が上がる。
が、実際には炎ではない。
火鍋は、自分が『シブい』ことを自覚することにより、テンションが上がり、体温が上がる。
それによって、辺りの水蒸気が蒸発し、あたかも炎が上がったかのように見える。
――火鍋の、最大上限。
『最強の意地』が、完成した。
火鍋「――よぉ。待たせたな。お前も漢なら、かかってきな」
ぐちゅ。
沼が、呼応する。
水面がどろどろと波打つ。
沼の表面に飛沫が立つほど激しくなったころ――。
沼が、火鍋に襲いかかる!
沼はすぐさま、火鍋の足元を奪い、両足を掴み取った。
白い腕が、火鍋に絡みつく。
足首。膝。腰。腕。
火鍋を掴んで、握りしめている。
――しかし、火鍋は、仁王立ちのまま動かない!
ドウ「さすが、老師だ! あんな状況でも、一切、表情が変わらない!」
シャオ「ずっと、目をつぶったまま笑ってるアル!」
ずぶずぶ。ずぶずぶ。
火鍋の足首が、沼に沈む。
やがて、膝まで浸かった。
ふふふふふ。
火鍋が、笑っている。
いったい、何を考えているのか――。
火鍋(――ふふふふふ)
火鍋(意地張ってみたら、なんか思いつくかもしれねーと思っていたが――)
ずぶずぶ。
火鍋(――なんも、思いつかなかったぜ)
なんにも、考えていなかった。
ずぶずぶ。
火鍋(おいおい。このまま沈んだら、シャレんなんねぇぞ)
ずぶずぶ。
腰まで浸かった。
火鍋(なんも出来ずに沈んだら。――それは、『シャバい』! あいつらが見てる前で、そんな姿は見せられねぇ!)
ずぶずぶ。
肘が。胴が。浸かった。
火鍋(――思いつけ! この俺なら! こんな状況でも、絶対に『シブい』ことが出来るはずだ!)
首が。浸かった。
火鍋(――! 思いついた! これしかねぇ! これなら、『シブい』俺のままでいられる!」
火鍋は、ポケットに入れた腕を取り出し、上にあげた。
首より。沼の表面より高く。
沼が、頭を引き摺り込む直前。
沼の上に出したその拳を。
火鍋「――あ」
ドウ「……あ?」
親指一本、サムズアップさせた。
火鍋「――アイルビー、バック」
ぽちゃん。
シャオ「火鍋ーーーーーーー!!」
ドウ「老師ーーーーーーー!!」
ぶくぶく。
沼から、火鍋の息が泡となって浮かんだ。
やがてそれは、弾けて消えた。
「――勝負あり! 勝者、沼男!」
どわおおおおおん!
軍師火「やったーー! 意味もなく自信気に現れおって! ひやひやしたわい!」
沼は、ぐちゅぐちゅと蠢《うごめ》いている。
まるで、喜んでいるようだ。
一部始終を見守っていたシャオ、ドウ、子パンダは。
シャオ「――やっぱり火鍋は、火鍋アル」
ドウ「――そうだな」
子パンダ「キュウ……」
「――次! 大将、子パンダ対! 副将、沼男!」
どわおおおおおん!
まずい。
大将まで。最後の砦まで来てしまった。
ドウとシャオが、子パンダの顔を振り返る。
子パンダは、自らの顔を指さした。
子パンダ「……キュウ?」