たぺっと!! / 第3話

たくさんの神様と契約して異世界で最強目指してるものです〜3話〜1度に複数

「喜んでいるところ申し訳ないが、ダンジョンに行くためには冒険者になる必要があるんじゃよ」 こはるが現実を突きつけるように、ちいさな人差し指をチッチッと振った。 「え? こはるのダンジョンなんだから、行き来は自由なんじゃないの?」 「馬鹿者ー!! 我のダンジョンは世界に認められておるのじゃ!! 冒険者でもない一般の人間がダンジョンに侵入したら、すぐに管理下に連絡がきて我が呼び出しをくらうのじゃ! しかも、ダンジョンの入り口には最新のセキュリティがあるのじゃよ……」 フンス、と胸を張って語るこはる。しかし、肝心の契約者は―― 「すやぁ……すやぁ……」 立ったまま器用に、心地よさそうな寝息を立てていた。 「聞いてないじゃないか!!! 『破空の(はくうの)』――」 「わあああ!! 聞いてる聞いてる!! ごめんって! ちゃんと聞いてますから!!」 慌てて飛び起きて頭を抱えるてぺに、こはるはぷいっと膨れて見せた。 気を取り直して、二人は深い森の中を歩き始める。 「で……その冒険者登録ってのはどこでするの? ギルドとか?」 「そうじゃ。ギルドで登録するのじゃ」 「じゃあ、行くしかないね!」 「で……てぺ? お主、どこにギルドがあるのか知っておるのか?」 「え……?」 「え……?」 お互いに足を止め、見つめ合う。 「こはるが教えてくれるんじゃないの?」 「知っているには知っているが、ギルドを探すのも、ダンジョンを探すのも物語の楽しみじゃろ?」 「まー、それはそうか……って、どうしよう!」 頭を抱えるてぺに、こはるも顎に手を当てて考え込む。 「そこら辺の冒険者にでも聞くか? ……いや、しかしこの森はさっきから人間の気配が一人たりとも感じられないわい。どうしたものか……」 結局、手がかりのないまま歩き続けるうちに、すっかり日は暮れて夜になってしまった。 木々の隙間から差し込む光を見上げて、てぺが首を傾げる。 「ねえ、この世界の月って、黄色じゃなくて青色なの?」 「なんじゃと? そんなわけないじゃろ。この世界でも月は普通、黄――」 二人が同時に、生い茂る葉の隙間から夜空を見上げた。 そこには、怪しく冷たい青色の光を放つ巨大な満月があった。 「ブルームーンじゃ!! てぺ、気をつけろ……ブルームーンの日は、中級ドラゴン・『ドラインドドラゴン』が出現する……!」 その言葉に応じるように、少し離れた空中に巨大な影が躍り出た。 夜空を背景に、ゴツゴツとした岩のような鱗を持つドラゴンが咆哮する。 「ぐあああああ!!!」 「わっはは! ドラゴンだ、本物だ!」 「なに余裕ぶっておるのじゃ! 聞こえぬか、あちらで戦闘している音がするわい! てぺ、今すぐ向かうぞ!」 こはるが焦れたように飛び立つと同時、てぺも一歩を踏み出す。 「え……実は俺も、同じこと考えてたんだけど?」 「き、気が合うのう……っ」 一瞬だけこはるが頬を染めて照れたが、てぺは構わず一気に地面を蹴った。 「『身体強化』! 『脚力増加』! 『スピード増加』!!」 いくつもの強化魔法を重ね掛けしたてぺの身体が、一筋の閃光となって森を駆け抜ける。 ーーその頃、ドラゴンの足元では、絶望的な戦いが繰り広げられていた。 「きゃあああ!! もう無理よ!! 私たち、ここで死んじゃう!!」 「くっ……ここまでか……!」 満身創痍の男女の冒険者が地面に這いつくばる。その頭上で、ドラインドドラゴンが大きく顎あぎとを開いた。その奥で、破壊的なエネルギーが渦巻く。 「『覇空のブレス』――」 「『蓮炎渦れんえんか』!!!」 ドォォォォン!!! 放たれたドラゴンの濁流のようなブレスを、突如として現れた巨大な炎の渦がかき消した。激しい蒸気と火花が散りばめられる。 「なっ、……え!?」 「お二人とも、危ないから隠れててください!」 身を挺して割り込んできたてぺの背中に、呆然とする魔法使いの少女。 男の冒険者がハッと我に返り、少女の肩を揺さぶった。 「さや! 立て、避難するぞ!」 「う、うん……っ!」 獲物を邪魔され、ドラインドドラゴンが怒りに目を血走らせる。 「ぐううああ!!!」 再び、てぺに向けて容赦ないブレスが吐き出された。 「炎の神の力を手に入れた俺に、ドラゴンごときが勝てるわけないだろ!!」 てぺは真っ向から立ち向かう。 「『身体強化』! 『バウンドプラス』! 『攻撃体術』!!」 地面を爆発的な力で蹴り上げ、ブレスを垂直に回避しながらドラゴンの遥か頭上へと飛び上がる。 「『炎龍えんりゅう』!!!」 落下速度を乗せ、両腕に激しい紅蓮の炎を纏わせた。そのままドラゴンの脳天めがけて、容赦ない拳の連打を叩き込む! ドカッ! バキッ! ドゴォォォン!!! 避難しながらその光景を見ていた少女、さやが驚愕に目を見開いた。 「う、嘘……ドラインドドラゴンは岩属性だから、炎の効果は……ほとんど無いはずなのに……!」 しかし、てぺの拳は属性の相性など関係ないとばかりに、高速の連撃でドラゴンの強固な鱗を次々と粉砕していく。 「お、俺の大剣の技でも砕けなかったあの鱗を……素手で、叩き割っているのか……っ!?」 アタッカーの男、高橋もまた、常識外れの光景に腰を抜かしかけていた。 宙に浮くこはるは、フンと自慢げに胸を張る。 「ふん……我の力は強大じゃ。本来なら上級魔族でも簡単に倒せる。……じゃが、この数日でここまで身体能力を上げて使いこなすとはな。さすが、我が選んだ希望じゃ」 ズウゥゥゥン……!!! 最後の決定打を脳天に喰らったドラインドドラゴンが、地響きを立ててその巨体を地面に沈め、完全に沈黙した。 「ふぅ……結構危なかったな……」 てぺは腕の炎をすっと消し、大きく息を吐いた。 そこへ、助けられた冒険者の二人が、信じられないものを見るような目で恐る恐る近づいてくる。 「あ、あの……! 私は高橋。冒険者ランクCのアタッカーです。こっちは魔法使いでランクDのさや。……本当に、ありがとうございました。助かりました!」 二人は深く頭を下げた。 「あなた……すごく強いんですね! 岩属性に炎は効かないはずなのに、力技で押し通すなんて!」 「あ、そうなんですか?(やっぱりゲームの相性とかあるんだな……)」 「冒険者のようには見えませんが……なぜあなたのような強い方が、こんな森の奥深くに?」 高橋の問いに、てぺは照れくさそうに頭を掻いた。 「いやいや、全然強くないですよ! それに、確かにまだ冒険者じゃないんです。実は、冒険者登録をしたくて、近くにギルドがないか探してたんですよ」 「なるほど、それなら……ちょうどこのドラゴン討伐の依頼も終わりましたし、私たちの街のギルドまで一緒に来ますか?」 「え、いいんですか!? ぜひ、よろしくお願いします!」 こうして、てぺは念願の冒険者ギルドへの切符を手に入れた。こはるはてぺの肩にちょこんと乗り、満足そうにニヤリと微笑んでいるのだった。

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