たぺっと!! / 第2話

たくさんの神様と契約して異世界で最強目指してるものです〜2話〜千里の道も一歩から

「さぁ……てぺさん、頑張っていますね〜」 ぽりぽり、と小気味よい音が異世界に響く。 「なぜか森に落下し、なぜかたまたま炎神と出会い、見事契約寸前までいけましたね〜。さて、今回はどんなことが起こるのでしょう」 ポテトチップスを片手に、完全に他人事のナレーションが状況を説明している。その背景では―― 「ほれほれ! どんどんゴブリンやらスケルトンやらスライムが押し寄せてきてるぞ〜! 早く倒さなければお主がゲームオーバーになるぞー、てぺー!」 「こはる!! これ、いくら何でも過酷すぎない!? もっとゆっくり段階を踏ませてよ〜!」 悲鳴を上げているのは、もちろんてぺだ。 額に汗を浮かべ、押し寄せるモンスターの群れを必死にいなしている。 現在のレベル、5。 初期状態に比べれば上がっているものの、この魔物の大群を相手にするには、あまりにも心もとなすぎる。 だが、宙に浮いて指示を出すちびっ子炎神は、どこ吹く風でふんぞり返っていた。 「なーにを甘えたことを言っておるのじゃー! 一刻も早く、我の真の力を使いたいじゃろ〜?」 その言葉を聞いた瞬間、てぺはピタリと武器を構える手を止めた。 「いや……別にそんなことないけど」 「え……?」 まさかの返答に、こはるが固まる。 そして同時に、殺気立っていたゴブリンやスケルトン、スライムたちまでもが、てぺの想定外の冷めた態度に「え、戦わないの?」と戸惑うように動きを止めた。 その妙な静寂が、こはるの逆鱗に触れた。 「なんじゃとオオオオオ!!! 『黒炎狼砲撃こくえんろうほうげき』!!!」 ドガァァァァァァン!!! 「いやーーー!! 神様に殺されるーーー!!」 こはるの掌から放たれた、狼の頭部を模した巨大な漆黒の火炎が、てぺのすぐ傍をかすめて炸裂した。 凄まじい爆風と熱波。轟音が止んだときには、周囲を埋め尽くしていた魔物の群れは一匹残らずチリとなり、文字通り一掃されていた。 「はぁ……はぁ……な、なんということじゃ……! せっかく集めたモンスターが、一匹も残っておらんではないか!」 「……あの。逃げ回ってただけで、なんか敵が全滅してました。それに、見てくださいよ」 てぺが自分のステータス画面を指さす。そこには輝かしい数字が躍っていた。 「レベルが20まで上がってますね……。しかも、今ので確信しました。こはるが倒したほうが、僕が戦うより経験値がたくさんもらえるし、レベルも上がりやすいじゃないですか! もしかして、最初から知ってて隠してました?」 ジト目で睨むてぺに、こはるはあからさまに視線を泳がせ、頬を赤く染めて抗議した。 「ち、違うわい! 努力しなければ、本当の強さとは身につかんからな! お主のためを思ってじゃ!」 「そ……そうですけど……」 釈然としないてぺだったが、こはるはすぐに気を取り直して胸を張った。 「し、しっかし! レベルが一気に上がりすぎたおかげで、我と契約できる条件が、あとは『名刀探し』だけになってしまったわい!」 「お、やったーーー!!」 諸手を挙げて無邪気に喜ぶてぺ。 その姿を見て、こはるは不意に毒気を抜かれたように表情を和らげ、小さく呟いた。 「な……なんじゃ、素直に喜びおって。……可愛いところもあるのだな」 「ん? なんか言いました?」 「あーっ!! もう、なんでもないわい!!」 ふいっと顔を真っ赤にしてそっぽを向くこはる。 てぺは首を傾げつつ、本題を切り出した。 「ところで、その『名刀』って、一体どこにあるんですかね……あはは……」 「ダンジョンじゃ」 「ダンジョン?」 てぺは途端に嫌そうな顔をした。 「そんな、いかにも『勇者パーティーで行って、お互いの絆を深めよーう!』みたいな場所に、都合よく名刀なんてあるんですか? 誰かもう攻略してそうですけど」 「お主のダンジョンに対する偏見に満ちたイメージが、思考を通じてじわじわと伝わってきたぞ……。言っておくが、攻略されているなどということは絶対にない!」 「へえ、なんでそんなことが言い切れるんです?」 「それは……」 「それは……?」 「そのダンジョンは、我が管理しておるからじゃ!!」 「え……。じゃあ、はい」 てぺはすっと、こはるに向けて手のひらを差し出した。 「名刀、今すぐ出して?」 「何を言っておるか! 名刀とは、数々の試練を乗り越え、苦労して手に入れるからこそ価値があるのじゃ! そんな簡単にやれるか!」 「とほほ……ダンジョン、苦手なんだよな〜……」 心底めんどくさそうに肩を落とすてぺ。 だが、その言葉にこはるが素早く反応した。 「ぬ? お主、ダンジョンに挑むのは初めてではないのか?」 「あ……え……え?」 前世の記憶(あるいはゲームの記憶)がポロリとこぼれたことに気づき、てぺは冷や汗を流しながら、慌てて両手を振って誤魔化しにかかる。 「いやー! 初めてだよ!? あはは〜! こはるは面白いこと言うねえ。ちょっと空耳でも聞こえたんじゃない?」 「……怪しいのう」 細められた神様の視線を背中に浴びながら、てぺは引き攣った笑みを浮かべ続けるのだった。

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