たぺっと!! / 第1話

たくさんの神様と契約して異世界で最強目指してるものです〜1話〜選択〜

「決めた。この世界で、俺は――最強になる……!」 拳を握りしめ、青空に向かってそう宣言した少年の名は「てぺ」。 とある事情を抱え、この世界へと転生してきたばかりの、どこにでもいる(?)少年である。 『……と、ナレーションは語る。数多の苦難を乗り越え、彼は今、新たなる一歩を――』 「めちゃくちゃメタいよ! しかもそれ、完全にこの先のネタバレじゃん!?」 『えー? そうかしら?』 「そうだわ!!」 『まあまあ、そんなこんなで始まり始まり〜!』 「……おい! これでいいのか、この世界!」 ツッコミを入れたのも束の間、次の瞬間、てぺの足元から大地が消失した。 「なっ、……ひぃっ!? いきなりすぎるだろ!!」 重力に従い、真っ逆さまに落下していく。凄まじい風圧が顔を打ち、まともに目を開けていられない。 「くそっ! この世界の常識がまだわからない……! とにかく、魔法障壁マジック・バリア!!」 魔力を練り上げようとするが、指先一つ、いや、体内の魔力回路すらぴくりとも反応しない。 「なっ!? この世界、魔法が使えないのか!? それとも、俺の力が……ッ……!! やばい、このままだと地面に叩きつけられて、転生初日に即死する――!」 死を覚悟し、目を瞑る。 ガササササササササッ!!! 激しい衝撃と、木の葉が擦れ合う音が全身を包んだ。運良く、生い茂る巨木の枝葉がクッションとなり、てぺは地面へと転がり落ちた。 「い、痛たた……。嘘だろ、まさか運良く生き残るとは……」 泥だらけになりながら、上体を起こす。 痛む体をさすりながら、ふと、自分が着地した地面に手を触れた。 「ん……? なんか、柔らかいというか、生温かいというか……気持ち悪い……え?」 「ぐああおっ!?」 すぐ真下から、不快な濁声が響いた。 慌てて視線を落とすと、そこには醜悪な緑色の皮膚をした小鬼が、てぺに圧し潰されて激怒していた。 「ゴ、ゴブリンだ!! やべっ!!」 本能的な恐怖に突き動かされ、てぺは跳ねるように立ち上がって駆け出そうとした。だが、着地の衝撃のせいか、足が完全に引き攣つっている。 「くっ……動け、動いてくれ……! ここで死ぬのか、俺は……!」 迫り来るゴブリン。その爪がてぺの喉元に届こうとしたその時―― 突如として、てぺの右腕から猛烈な「炎」が噴き出した。 「熱っつ!!! ……あれ? 熱くない?」 立ち上る紅蓮の炎。しかし、自分の皮膚が焼ける気配はない。魔法ではない、もっと根源的で圧倒的な『何か』だ。 「あーもう、理屈は後だ! なんでもいい、ぶちかませえええ!!」 叫んだ瞬間、てぺの右目が深紅に燃え上がり、脳内に直接、禍々しくも神聖な呪文のイメージが流れ込んできた。 『我に選ばれたこと、感謝するが良い……』 「頭の中に直接、声が!? っていうか、お前は誰だ!!!」 『今はそんなことを気にしている場合か! 我を信じ、この炎を我が物とし、思うがままに操ってみせよ!』 理屈を超えた全能感が、てぺの全身を駆け巡る。 「よくわかんねえけど――いける気がするぜ! 燃え尽きろ、『黒炎』!!」 放たれた漆黒の劫火が、ゴブリンを丸ごと飲み込んだ。 「ぐわ……!! あああ……っ!」 悲鳴は一瞬だった。ゴブリンの巨体は瞬時に炭化し、一握りのチリとなって風に消えていく。 静寂が戻った森の中に、突如として半透明の光るウィンドウが浮かび上がった。 【テッテレー♪ レベルアップ!】 「レベル……? この世界にも、ゲームみたいなレベルの概念があるんだな……」 「なーにを一人でぶつぶつ言っておるのじゃ!」 「え!? わっ、まだ頭の中にいたんですか!?」 「いるも何も、もう契約するのじゃから、これからはずっとおぬしと共に生きるぞ?」 「え……?」 あからさまに嫌そうな顔をして、一歩引くてぺ。 「な、なによその引き気味な態度は! 我はお主の命の恩人じゃぞ!?」 「そ、それはそうですけど……姿も見えない幽霊みたいなものに、心から感謝って言われても……」 「ふん、そうか。ならば……」 パチン、と脳内で指を鳴らす音がした。 「これで見えるじゃろ?」 揺らめく陽炎が、てぺの目の前で収束していく。 現れたのは――きらびやかな御子の衣装を身にまとった、どう見ても幼い少女の姿だった。 「こ、子供……!?」 「我は子供ではなーーーーーい!!!」 鼓膜が破れんばかりの超高音の怒声が、森全体に響き渡る。 たまらず耳を塞ぎ、顔を歪めてぺが叫ぶ。 「うるさあああい……っ! ……はぁ、はぁ。僕はてぺ。君は……?」 「ふんっ。我が名はこの世のあらゆる炎が生み出した、炎神えんしんのこはるじゃ!」 「え……? え……え、炎神んんんっ!!!?」 てぺは目を丸くし、文字通りひっくり返った。 「そうじゃ、炎神じゃ! はっはー! 地面に頭をつける程度にびっくりするが良い!」 「あ、さっきの奴……いや、あの人が言ってた『神』って……。じゃあ炎神様、炎神も、例えば刀とかに宿ることってできるの?」 「ひ……こはるで良いぞ。というか、なぜお主が神を器に宿す法を知っておるのじゃ?」 「それは〜、その、まあ……あはは(前世の知識だしな……)」 怪訝そうな目でてぺを見つめていたこはるだったが、ぷいっと顔をそらして、少し照れくさそうに人差し指をいじり合わせた。 「ま、よい。実は我、今はフリーでな? ちょうど良い宿先(器)を探しておったのじゃ。もし、我がそなたの力になってほしいと言うのならば、なってやらんこともないが……。だが、条件がある」 こはるの表情が、一瞬だけ神としての厳格なものへと変わる。 「歴代の我が使い手は、全員例外なく『炎』に関連した凄惨な死を遂げておる。それが我を宿す者の、逃れられぬ因果じゃ」 「でも、こはるは炎の神様なんだろ?」 「いくら我でも、自然の運命そのものを捻じ曲げることは禁忌なのじゃよ……」 重い沈黙。しかし、てぺの目に迷いはなかった。 「わかった。……だったら、何があってもその運命、俺が変えてやろうじゃないか! 契約だ、炎神・こはる!」 「お、お主……。――と、格好良く言いたいところじゃが、お主、圧倒的にレベルが足りておらんし、我を宿すに足る名刀も持っておらぬではないか!」 「仕方ないだろ! さっきこの世界に来たばっかりなんだから!」 「さっき? お主、記憶喪失にでもなっておるのか?」 「……そこは気にしないでください」 やれやれ、とため息をつきながら、ちっちゃな炎神は腰に手を当てて不敵に笑った。 「ひとまずは特訓じゃな! 目標はレベル上げと、一時的な仮の刀探しじゃ。行くぞ、てぺ!」 「おう、やってやるさ!」 異世界最強への道のりは、今、ここから始まる

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