たぺっと!! / 第6話

たくさんの神様と契約して異世界最強目指してるものです〜6話〜探し物は?〜

「てぺさんが気絶してから、数時間が経ちました……」 薄暗いダンジョンの一角。静寂の中に響くナレーションのような声は、私の意識が戻るのを待っていたかのようだった。 「こやつはいつになったら起き上がるのじゃ……。それにしても、寝顔かわいいのう……」 すぐ近くから、鈴を転がしたような可愛らしい声が聞こえる。頬に当たる吐息の熱さに、てぺはハッと目を開けた。 「うおっ!?」 「ひゃあっ!?」 勢いよく起き上がった私の額に、信じられないほどの衝撃が走る。 鈍い音とともに、目の前の小さな影が後ろにひっくり返った。 「いたー!!」 「痛ってぇ!!……って、こはる!?」 「勢い良く起き上がるな!!w お主の頭は鉄か何かか!?」 額を押さえて涙目で怒る彼女は、てぺと契約をしようとしている炎神・こはるだ。小さな身体をぷんぷんと震わせている。 てぺは自分の額をさすりながら、平謝りした。 「ごめんごめん! あ、それより! 名刀は!? ここに眠ってたっていう、神の力を引き出す名刀はどこ!?」 てぺが周囲を見渡すと、こはるは急にバツの悪そうな顔をして、視線を泳がせた。 「それが……」 「ええええええーーーー!!!?」 てぺの叫び声が、黒龍を倒した広大なダンジョン内に虚しく響き渡った。 「名刀がない!!?」 「そう、あるはずの名刀がなくなっていたのじゃ……。妾の神殿が荒らされ、刀が消えておった。それでお主に助けを求めて、あの日、出会いの場所に会いに行ったのじゃ……」 こはるはシュンと項垂れる。あの時、彼女が必死に契約者を探していた本当の理由が、ようやく繋がった。 「そうだったのね……。よし、それじゃあ原因究備は後にして、とりあえずこの黒龍の素材を持ち帰ろう!」 てぺたちは、散らばる黒龍の爪や牙を急いで回収し、ダンジョンを後にした。 「てぺさん、ミッションお疲れさまでした!」 ギルドに戻ると、いつもの受付嬢が笑顔で出迎えてくれた。 てぺは少しだけ緊張しながら、カウンターに歩み寄る。 「あ、はい、ミッションクリアしたんですけど……。えっと、これはスライムで……そのあとに……」 てぺがアイテムバッグを逆さにすると、受付の机の上に、ゴトゴトと大量の素材が積み上がっていった。 スライムの粘液。そして、道中で私に襲いかかってきた有象無象のモンスターたちの残骸——スケルトンの骨、ゴブリンの耳、ゴーレムの魔核、吸血コウモリの羽……。 「ちょっと待ってください、てぺさん!!」 受付嬢の目が点になる。「てぺさんのミッション、スライムの討伐だけですよね!?」 「いやぁ、ちょっと行く先々にモンスターが……あはは……」 てぺが苦笑いしながら、バッグの底に残っていた「本命」をドサッと置いた。 その瞬間、ギルド内の空気が凍りついた。 「これって……!! 黒龍の爪!? しかも、牙まであるじゃないですか!!?」 受付嬢の悲鳴に近い声に、ギルドの奥から一人の男が血相を変えて飛び出してきた。ギルド長のハーネスだ。 「てぺよ……なぜお前が、Sランクモンスターである黒龍の素材を持っている……!?」 「あはは……」 私が視線をそらすと、それを見た周りの冒険者たちが一斉に騒ぎ始めた。 「そんなことありえねぇ!!」 「新人のFランクだぞ!?」 「どうせ誰か強い奴に助けてもらったんだろ、汚ねぇ手やがり配置!」 ヤジが飛ぶ中、受付嬢が水晶のステータスボードを確認し、さらに大きな悲鳴を上げた。 「て、てぺさん……レベルが……73レベルになってます!!? 確かに、一昨日の試験の時は『25レベル』だったはずなのに……!!」 一気に跳ね上がった数値に、ギルド内は静まり返る。 ハーネスは私をじっと見つめ、厳格な声で言った。 「……なにか訳がありそうだな。てぺ、少し話をしよう。奥へ来い」 ギルド長室。重厚な扉が閉められると、ハーネスは机に両手を突き、私を正面から見据えた。 「単刀直入に聞く。てぺ、お前は入会試験の時、わざと魔力を調節してFランクになったな?」 「……ばれてましたか」 てぺは頭を掻いた。「簡単なミッションの方が、早く終わらせてダンジョンに行けると思ったので……」 「そのあと、そのダンジョンで一体何があったんですか?」 隣にいた受付嬢が、身を乗り出して聞いてくる。 てぺは意を決して、本当のことを話すことにした。 「実は……私は、炎神と契約するために冒険者になったんです」 「炎神様……!?」 ハーネスが目を見開いたその瞬間、私の肩のあたりから、紅蓮の炎がふわりと舞い上がった。 「こやつの言っていることは確かじゃ」 炎の中から姿を現したのは、神々しい神気をまとったこはるだった。 その圧倒的な存在感を前に、ハーネスの顔から完全に血の気が引く。 「これは……!! 炎神様、本物であらせられるか……っ!」 ドサッ、と音がするほどの勢いで、ハーネスはその場に平伏し、床に額を擦りつけた。見事な土下座だった。 こはるは調子に乗って、ふんぞり返る。 「ほ〜、人間の分際で、なかなか態度がわかっておるな〜。苦しゅうないぞ!」 「こら」 パシッ、とてぺはこはるの頭を軽く叩いた。 「いたっ!? 神を叩くな!」 「ハーネスさん、頭を上げてください。俺たちは、ギルドに相談しに来たんです」 「ご、ご相談ですか……?」 冷や汗を流しながら顔を上げたハーネスに、私は本題を切り出した。 「炎神様のダンジョンに安置されていたはずの『名刀』が、何者かに盗まれたらしいんです」 「なんですと……!?」 ハーネスの表情が驚愕に染まる。 「あのダンジョンをクリアした者は、歴史上でも数人しか存在しません。しかし、その中に名刀を持ち帰ったという報告は、我がギルドの記録には一切ありませんが……」 「ないことは事実じゃ! 妾の目が確かだからの!」 こはるが腕組みをして神としての威厳(?)を示す。 「そこで」と、私は続けた。「この街……ハーネスティアで一番腕のいい鍛冶屋に、新しい刀を作ってもらいたくて。でも、神の力に見合う刀となると、お金がどれくらいかかるか……」 「お金なんて!! いらないですよ!!」 ハーネスは叫ぶように言った。 「国を滅ぼしかねない黒龍の素材を、我がギルドに納めてくださった。それだけで、お釣りが来るほどの歴史的快挙です! 鍛冶屋をお探しですね……。それなら、あそこしかありません。街の城の近くにある『鍛冶屋ギーネス』です」 「鍛冶屋ギーネス……」 「ありがとうございます!」と私が頭を下げると、ハーネスは懐から一通の書状を取り出し、私に手渡した。 「これを持っていきなさい。あそこは、私の弟が営んでいる店だ。これは私が書いた『推薦書』。これがあれば、偏屈な奴だが、どんな無理難題な武器でも必ず作ってくれるぞ」 「ありがとうございます!」 ハーネスから推薦書を受け取り、私とこはるは、次なる目的地——「鍛冶屋ギーネス」へと向かうべく、ギルドを後にした。消えた名刀の手がかりと、最強の相棒となる武器を求めて。

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