たぺっと!! / 第11話

たくさんの神様と契約して異世界で最強目指してるものです〜11話〜契約の代償〜

「おっと、なぜか楽しい予感がしてきましたね……。一体、本当の強さとはなんなのでしょう……。この先、てぺさんの身に危険が及びませんように。……おや、これはもしや、フラグというやつですかね?」 どこからともなく響く、緊張感の欠片もないのんきなナレーション。しかし、その不吉な予言通り、異世界の街ハーネスティアの一角で、てぺは己の身に起きた異常事態に混乱していた。 「オーラって……なんの事??」 てぺが呆然と問いかけると、彼の目の前に浮かぶ幼き姿の神、炎神・こはるがその小さな指でてぺの顔を指差した。 「お主の目じゃ!」 「えっ、僕の目が……?」 嫌な予感が胸をよぎる。てぺは慌てて、冒険者ギルドの前にある広場の噴水へと駆け寄った。水面に映る自分の顔を覗き込んだ瞬間、てぺは息を呑んだ。 「……な……な……! じゃ、これーー!! 燃えてるし!!」 水面に映るてぺの両目は、まるで意志を持つかのように、めらめらと紅蓮の炎を揺らめかせていたのだ。 パニックになったてぺは、考えるよりも先に、勢いよく噴水の中に顔を突っ込んだ。 ぶくぶくぶく、と水の中で気泡が弾ける。 その様子を少し離れた場所から見ていた風神・アルクレスは、深い溜息をつきながら、呆れた顔で端正な眉をひそめた。 「何をしてるんだ、うちの契約者は……」 「ぷっは!!!」 勢いよく水から顔を上げたてぺだったが、激しく水滴を散らすその両目からは、まだ変わらずに炎が立ち上っている。水など最初から意味をなさなかった。 「どうじゃ!? 消えたか?」 こはるが心配そうに覗き込んでくるが、てぺはがっくりと肩を落とした。 「駄目だ!! きえないや……」 そんなてぺを見つめながら、アルクレスが静かに、しかし重いトーンで告げた。 「それは、魔力暴走だ」 「ま……魔力暴走!?」 こはるが驚きに目を見開く。 しかし、てぺ自身には身に覚えがなかった。 「でも、僕は常に身体強化の魔力制御をしてるはずです……。魔力暴走なんて、あり得ません」 日頃からの鍛錬と、徹底した魔力管理には自信があった。そんなてぺに、アルクレスは核心を突く問いを投げかける。 「てぺ……君は戦闘の後、必ずと言っていいほど気絶するだろう?」 「そう、ですね。確かにいつも倒れてますけど……」 すかさずこはるが、ふんぞり返りながら口を挟んだ。 「毎回倒れておるものな〜。そのたび、我が介護してやっておるのじゃぞ!」 「問題はそこだ」 アルクレスは話を戻し、真剣な眼差しでてぺを見つめた。 「この前の戦闘は、連戦が続いた。しかも、私との新たな契約によって、君の中に宿る力はさらに強大になった。……それに耐えうる、てぺ自身の『器』が限界を超えていたんだ。人間の魔法の器には、必ず限界がある。君は意識を失っている間、無意識に身体強化の制御を解除し、器の限界を更新しようとしたんだよ」 アルクレスの言葉を、てぺは頭の中で必死に噛み砕く。 「それで……目覚めたら魔力暴走を起こしていた、と?」 「そうだ」 「じゃあ、この暴走は、その器とやらが大きくなったら収まるんですか?」 すがるようなてぺの問いに、風の神は小さく首を横に振った。 「それは……私にもわからない」 「そんな……」 不安に包まれるてぺだったが、こはるが「まあ、数日経てばわかるじゃろう!」と明るく雰囲気を変えた。そして、何かに気づいたように手を叩く。 「そういえばてぺ! ギーネスに頼んだ刀はどうするのじゃ?」 その言葉に、てぺはハッと目を見開いた。 「あ……忘れてた!!」 魔力暴走の恐怖も吹き飛び、てぺは急いで街の鍛冶屋へと走り出した。 --- 「すみませーん!!」 鍛冶屋の重い扉を開け、てぺが息を切らせて飛び込む。 奥から現れた頑固そうなドワーフの鍛冶職人・ギーネスは、てぺの顔を見るなり、豪快に笑った。 「誰かと思ったら、あの日の冒険者か! 久しぶりじゃな!」 「ギーネスさん! 刀はできてますか?」 「あ〜、できておるが……」 そこでギーネスの視線が、てぺの腰元で止まった。その目は驚愕に引き連っている。 「おい、その腰にある刀はなんじゃ……!?」 てぺは言われるままに、腰の鞘からその刀をゆっくりと引き抜いた。 「これは……名刀です」 「め、名刀!? お主、どこでそれを……!?」 ギーネスは職人としての本能で理解した。その刀全体から、まるで生き物のように、綺麗な霧のような魔力が絶え間なく流れ出している。そして、その刀身全体が、純白のようでありながら深い緑色を帯びた、この世のものとは思えない輝きを放っていた。 「えっと……実は神様と契約してて、その神様に授かりました」 「まさか……! 3日前にこの街を震撼させた、あの異常な魔力の波動は、お主の仕業か!!?」 ギーネスの気迫に押され、てぺは引きつった笑みを浮かべるしかなかった。 「あはは……僕、かもです……」 --- その頃、人間界からはるか遠く離れた、禍々しい闇に包まれた空間――魔王城。 「お前ら、いつまでSランク冒険者に手こずっているのだ!!」 魔王の怒号が響き渡り、王座の周りには、主の怒りに呼応するように不気味な闇魔法のエネルギーが激しく飛び交っていた。ひれ伏す魔族たちは、恐怖に身体を震わせる。 「すみません……!」 「おい……スクリューネは一体いつ帰ってくるのだ? まさか、やられたわけじゃないだろうな!?」 魔王の問いに、一歩前に出たのは、魔王軍の最高戦力である十血の頂点。 「十血1位」のゾシューデだった。 「スクリューネは何者かの攻撃を受け、地上に出た瞬間に気配が消えました……」 「何をしておるのだ!! 魔族ともあろう者が不意打ちを食らうとは!! 情けなさすぎる!!」 荒れ狂う魔王に対し、ゾシューデは冷徹な声を落とす。 「しかし、少し気になることが……」 「なんだ、言ってみろ」 「スクリューネが受けたという斬撃の痕跡……。それは、昔ある村で、我が魔族が惨殺された際の魔力形態と完全に一致しているのです。風神の力は、あの戦い以来、急激に減っているはずですが……」 魔王の目が細められた。 「まさか……人間が、風神と同等の力を使っているとでも言いたいのか?」 「はい。その可能性は、かなり高いかと」 魔王の顔に、凶悪な笑みが浮かんだ。 「ならば、話は早い。すぐにでも戦争を仕掛けるしかないだろう?」 ――ハーネスティア上空に、魔王軍・十血1位ゾシューデ出現。人間界への戦争の火蓋が、今、切って落とされようとしていた。 遠く離れたどこかの空間で、その様子を映し出していた魔法の映像が、静かに閉じる。 暗闇の中、画面の光に照らされた不気味な「口元」だけが、満足そうに歪んだ。 謎の存在、ジェネシス。 彼はただ、にやつきながら、破滅へと向かう世界の行く末を見つめていた。

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