NAWOMIDOU / 第2話

第7話:城崎温泉、文学の湯気に溺れる「よそ行き」の肌

 福知山線から山陰本線へと乗り継ぎ、たどり着いたのは文豪・志賀直哉が愛した「城崎温泉」。  駅に降り立った瞬間、まとわりつくような湿った熱気が私を包み込んだ。 「……暑ぅ。これ、温泉入る前に茹で上がってまうわ」  浴衣姿の観光客が行き交う中、私はあえてサマードレスのままで柳並木の道を歩く。  汗でしっとりと肌に張り付くコットン生地。下着のレースの凹凸が、一歩踏み出すたびに浮き上がっては消える。 (志賀直哉はここで『生と死』を見つめたらしいけど……)  私は、一軒の外湯「御所の湯」の暖簾をくぐった。  脱衣所でドレスを脱ぎ捨てると、都会の冷房で守られていた白い肌が、夏の熱に少しだけ赤らんでいる。  フロントホックのブラジャーを外し、解放感に小さく吐息をつく。  露天風呂に身を沈めれば、立ち上る湯気が私の「よそ行き」の表情を柔らかく溶かしていった。  お湯が、私のデリケートな場所を優しく撫で上げる。それはまるで、流麗な筆致で書かれた一遍の詩のよう。 「……ふぅ。私は今、自分の『生』の熱さしか分からへん」  お湯から上がり、火照った身体に再び薄いドレスを通す。  下着は、あえてつけない。  温泉上がりの特権としての「ノーブラ」。  ドレス一枚の下で、まだお湯の温もりを残した胸が、歩くたびに自由な形を描いた。

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