NAWOMIDOU / 第4話

第9話:余部鉄橋、空中の空白。海からの風がスカートを捲る

 翌朝、再び鈍行列車に揺られて向かったのは、空に浮かぶ駅「余部(あまるべ)」。  かつての巨大な鉄橋の一部が展望施設「空の駅」として保存されているその場所で、私は激しい海風に出迎えられた。 「わっ……すごい風!」  絶景に目を奪われている間、海風が私のサマードレスを容赦なく吹き上げる。  慌てて裾を押さえるが、薄い生地は風を孕み、まるで翼のように広がる。  今日は下着の代わりに、スカイブルーのビキニをドレスの下に仕込んでいた。  細い紐が、風に踊るスカートの隙間からチラチラと覗く。 (空中の空白。ここでは、私のモラルも風に吹かれて消えてしまいそう……)  展望台にいた数人の男性旅行者たちの視線が、一斉に私の脚へと突き刺さる。  私は恥じらうふりをして、わざと風の強い先端へと歩を進めた。  手すりに掴まり、大きく身体を反らせる。風に煽られて、胸のラインと引き締まったウエストが強調された。 「……綺麗だ」  隣で写真を撮っていた年配のカメラマンが、シャッターを切る手を止めて呆然と私を見つめている。 「知らんけど」  私は心の中で小さく呟き、満足げに微笑んだ。  空と海の間、地上四十メートルの断崖絶壁。  私の物語は、誰にも届かない場所で、さらに鮮烈な色を帯びていく。

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