⛰️終末 金剛山 / 第40話

Echo 08 『 常闇に沈む 』

サントラ イメージソングはこちらからどうぞ https://open.spotify.com/playlist/6bFZdpvxKZC0kdREsooTmc?si=a1feec7479d64356 対応番号 : 14
 まぶたを|刺《さ》す光と、|隣《となり》に感じる|柔《やわ》らかな|体温《たいおん》。|穏《おだ》やかな|吐息《といき》が|首筋《くびすじ》をくすぐる。  |見慣《みな》れない空、|柔《やわ》らかい|触感《しょっかん》、静かな|吐息《といき》。  そういえば俺は…|灯里《あかり》と寝たんだ。そう思っていると|灯里《あかり》が起き上がった。 「んぁ、おはようございます。朝のお世話は私がして差し上げますから…じっとしててください…」  寝ぼけ|眼《め》の|灯里《あかり》が、しなやかな|肢体《したい》で俺の上に乗っかかり、|胸《むね》の|弾力《だんりょく》を俺の|肌《はだ》に|押《お》し|付《つ》けてくる。 「ま、まて|灯里《あかり》!そんなに|近付《ちかづ》いたら!ングッ…ウッ…」 「ダメですよ、んちゅ、|身体《からだ》を|安静《あんせい》にしてないと…」  |抵抗《ていこう》も|虚《むな》しく、彼女の|唇《くちびる》が俺の言葉を|吸《す》い|込《こ》み、熱い舌が口内を|這《は》い回る。|唾液《だえき》が|混《ま》じり合う|生々《なまなま》しい音が、静かな部屋に|響《ひび》いた。 「はぁ…いつもみたいに私を可愛がってあげてください」  ダメだ、彼女は寝ぼけたままだ。そうしていると後ろから大きな声が聞こえた。 「姉さん、お|愉《たの》しみなところ悪いけど、そろそろ時間よ」  |光来《みく》が|制《せい》して、その場は何とか|収《おさ》まった。  色んな意味で危なかった… 「雨が降る。そうしたらしばらく現実との接続が|途絶《とだ》えてしまうわよ」  それはいけない。どうしても俺は現実に戻って確認しなきゃいけないことがある。俺は|身支度《みじたく》を|済《す》ませた。 「助けてくれてありがとう。|名残《なごり》|惜《お》しいけど、いかなきゃ」 「こちらこそありがとう。いつでも待ってるから」  |灯里《あかり》は俺のほっぺにキスをすると、|胸《むね》を|押《お》し|付《つ》けて|抱《だ》きしめてきた。 「昨日の熱い夜は楽しかったわよ」  |首筋《くびすじ》に走るゾクゾクとした|熱感《ねつかん》に、俺の理性が再び焼き切れそうになる。 「姉さん、|程々《ほどほど》にしてよね。その…見てるこっちまでもが|恥《は》ずかしくなるし」 「あら、あなたも|乱入《らんにゅう》してきたのに?」 「ね、姉さん!!!」  お、俺は覚えてないからな…俺の顔は火が出るほど熱くなった。そうジェスチャーして|光来《みく》を見ると、彼女は何を思ったのかツカツカと近付き、スパーンッと音が|響《ひび》いた。 「このっスケベッ!!|変態《ヘンタイ》!!|狼男《おおかみおとこ》!!」  |頬《ほほ》に残るヒリヒリとした熱い|痛《いた》みで現実だと思い知らされる。どうして俺は|叩《たた》かれなきゃいけないんだ… 「あぁ見えて|光来《みく》はあなたのことが好きで仕方ないんですよ。ずっと腰を|振《ふ》るのをやめなかったんですから…」 「ね、姉さん…それ以上は…」  そう言うと彼女は俺をキッと|睨《にら》んで、今にも泣きそうな顔だった。 「これ以上言ったらどうなるかくらい…分かってるわよね?」 「はい…すみません…」  こんな美女二人に囲まれて過ごしただなんて、なんて俺は幸運だったのだろうか。俺はその場を後にし、|光来《みく》とともに道を|辿《たど》って戻っていった。  彼女はずっと|不服《ふふく》そうな顔で|先頭《せんとう》を歩いていた。 「いい?誰にでもしていいわけじゃないことをしっかり覚えていてよね」 「はぁ…それは一体どういう」  そう言うと彼女は|呆《あき》れた調子で言った。 「あんたのその力、|薬《くすり》にもなれば|毒《どく》にもなるのよ」  そんなこと聞いてないぞ。俺は|焦《あせ》った。 「あぁ|大丈夫《だいじょうぶ》、私たち姉妹はそのことを|心得《こころえ》てるから…あくまで|研究《けんきゅう》よ|研究《けんきゅう》」  そう言うと彼女は恥ずかしげに|俯《うつむ》いた。 「あんたの力を|狙《ねら》う連中ってのは、死を遠ざけて生に|繋《つな》ぎ止めておくためのものなのよ」 「俺の力に、そんなものが…」 「つまりSCPの力に汚染された人たちは、死に近づいて誰からも認識されなくなって、|自我《じが》が|崩壊《ほうかい》すると|醜《みにく》くて|歪《いびつ》な|アノマリー《異象》になるわけ」 「そうした|現象《げんしょう》がどんどん積み重なって、人々の意識の中に|共通《きょうつう》の|恐怖心《きょうふしん》などの感情が|増幅《ぞうふく》されると『 時の振り子 』が|吸収《きゅうしゅう》して|溢《あふ》れ|出《だ》すと現実にも|顕現《けんげん》する」 「|終末の予言《ラグナロク》も人々の感情を|吸収《きゅうしゅう》するために使われている。それが『 運命の|オートマタ《はぐるま》 』と私たちは|呼《よ》んでいる」 「じゃあどうすれば|防《ふせ》げるんだ?」 「あなたの力を|搾取《さくしゅ》するか、あるいは|体液《たいえき》を通じて|交《まじ》わることで|軽減《けいげん》できるわ」 「俺がいなかった時はどうしてたんだ?」 「あなたに22人の|継承者《けいしょうしゃ》がいて、その人たちの|血液《けつえき》や|体液《たいえき》などで少しは|生《い》き|永《なが》らえてきたわ。でもあなたから|直接《ちょくせつ》|受《う》け|取《と》るより|効果《こうか》は|比較的《ひかくてき》|薄《うす》かった」 「どうしようもない|アノマリー《異象》|災害《さいがい》で|苦《くる》しんでいた私たちからすれば、|命《いのち》の|恩人《おんじん》よ。|感謝《かんしゃ》してるわ」  彼女は|振《ふ》り|返《かえ》り「でも」と|念押《ねんお》しをしてきた。 「|体内《たいない》に|過剰《かじょう》に|溜《た》め|込《こ》み|過《す》ぎると、逆にアノマリー化が進んじゃうのよね。女性の|身体《からだ》は|生理《せいり》で外に|排出《はいしゅつ》できるから、バランスを|保《たも》てるの」 「しかしそれだと男性は…」 「えぇ、基本的に|アノマリー《異象》化が一気に進行したら、どうしようもなくなる。でもなぜかあんただけ特別」  彼女は振り返って俺の身体をじっと見つめ、身体を反転させながら歩き出す。 「きっとあなたの|能力《のうりょく》が|大《おお》いに|関係《かんけい》があると思う」  道の|終点《しゅうてん》には、|底《そこ》の見えない、|冷気《れいき》が|吹《ふ》き|上《あ》がる|真《ま》っ|黒《くろ》な|穴《あな》が|開《ひら》いていた。 「こ、この中に入れって言うのか?」 「そうよ、まぁあんたが|嫌《いや》って言っても|強制的《きょうせいてき》に|落《お》とすだけだから」  うわぁ、どこぞの妹を思い出す…でもあの妹よりはかなりマシだけども。 「それじゃあ、彼女を|救《すく》い|出《だ》すために、がんばりなさいな」  |底《そこ》を|覗《のぞ》くと、彼女が俺に手を|伸《の》ばしている|姿《すがた》が見えた。 「…いくしかないな」 「それでこそ私たちの|夫《ダーリン》よ」  俺は少し|驚《おどろ》いて|振《ふ》り|向《む》くと、彼女はウィンクして見せた。 「しっかり|見《み》といてあげるから、|頼《たの》んだわよダーリン」  そう言うと、彼女は俺をトンと|押《お》した。  落下する感覚。  |鼓膜《こまく》が|気圧《きあつ》の変化で|激《はげ》しく|鳴《な》り、|胃《い》がせり上がるような|浮遊感《ふゆうかん》。  どんどん|吸《す》い|込《こ》まれていき、|漆黒《しっこく》の|深淵《しんえん》へと|意識《いしき》が|沈《しず》んでいった。 <i1161712|51129>

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