エナジーコット(@EnergyCotton) / 第2話

第2話 初めて得たモノ(0歳~1歳)

 家族という温かな存在を知った。  だが、サミュエルの興味はもう一つの出来事へ向いていた。  あの日、兄の手から吹いた風。あれは一体何だったのか。  その答えを知るため、心臓のあたりにある異物を調べ続けてしばらく経った。  心臓にある異物を便宜上「魔力」と呼ぶことにした。名前を付けたほうが考えを整理しやすいからだ。  そして毎日のように魔力の操作と放出を行い、その度に意識を失うという行為を繰り返していた。  これも結局は昔読んだ小説の影響だ。幼い頃に魔力を繰り返し使うことで魔力の最大量が増えていったとかその類だ。  その自分にとって都合のいい可能性を信じ、意識を失うまで魔力の操作と放出を繰り返した。  意識を失うのは所謂「魔力切れ」とか「魔力欠乏」といったものだろうと当たりはつけている。意識を失う以外の弊害は特に出ていない……はずである。  ベッドの上でなら、なんの前触れもなく意識を失うのは前世で何回か経験をしているからこれも慣れたものである。  あのときは常に痛みがあったから前触れがなかったわけではないのかもしれないが。  すでに自分は立って歩けるぐらいまでに成長している。  ある日、使用人たちの会話で気づいたことがあった。 「サミュエル様まだ立ち上がったりはしませんね」 「ええ、ミシェル様とマイケル様のときはすでに立ち上がって歩こうとしてたぐらいだったかしら……サミュエル様はお二人と違って……ほら、えっと……早産だったから……それが影響してるかもしれないわね」  二人と違ってああだったとか気になることを言っていたが今それを確かめる術がないので置いておくとして、姉と兄はすでに立ちあがっていたらしい。  おそらくだが普通の赤子と違い、暴れたり無駄に動こうとしないため筋肉がつくのが遅くなり、自分もいつ頃になれば立てるようになるかというのをぼんやりとしか理解してなかったため、このような事態に陥ってしまったのだ。  そのため誰もいないときなどはストレッチをするが如く、赤子でもできる範囲でなるべく足腰を使う動きを繰り返し筋肉をつけるようにした。  つかまり立ちができるようになった頃には掴まりながら浅いスクワットを繰り返した。無理のない範囲でなるべく筋肉がつくようにしたらあっという間に数歩なら歩けるようにまでなった。  そして家族に歩くのをお披露目するときがやってきた。  家族で団らんしているときに、掴まり立ちをして見せる。 「おおサミュエル、もう立ち上がれるのか!凄いぞ!」  父であるエドワードが褒めてくれるがむしろ遅かったことを自分はすでに知っているためなんとも言えない気持ちになった。  母レベッカはどこか複雑そうな表情を浮かべていた。おそらく自分が立つのは遅かったのだろう。  エドワードの言葉に反応し、立ち上がったサミュエルへ家族全員と控えていた使用人たちの視線が集まる。  急に注目を集めたことでサミュエルは無駄に緊張してしまう。家族でも注目されるのには慣れていないからである。  立ち上がったサミュエルの一番近くにいるのは……兄のマイケルだった。  地面に座っておもちゃで遊んでいたマイケルに向かって、ゆっくりと一歩踏み出す。 「嘘っ!もう歩いてるの!」  立ち上がれるようになっても歩けるようになるまでにはまだ日にちがかかる。  にも関わらず、先ほど立ち上がったばかりと思っていたサミュエルがすでに歩き出したからだ。 「サミュエル!すごい!すごい!こっちだよ!」  こっちと誘導する兄に向かって一歩ずつ足を前に出す。  足腰の筋肉はついても頭が重くバランスを取るのがまだ大変だからだ。  それに大人みたいにスッスッと歩く赤子がいたら気持ち悪いだろうなという思いがあった。  そして兄の元までたどり着く。  兄は抱きとめて「すごい!がんばったね!」とたくさん褒めてくれた。 「サミュエル!今度はこっちよ、こっち!」  今度はミシェルが自分の方にくるよう誘導する。  歩き出す時点では一番遠かったのにいつの間にか兄から一番近い位置まで移動している。  すぐにたどり着けるようにと彼女なりの気遣いなのだろう。  その期待に応えるべく、サミュエルは姉のほうに歩き出す。  一歩ずつゆっくりと丁寧に姉に近づく。  数歩で姉のもとまで辿り着くと姉も優しく抱きとめてくれる。 「よくやったわね!凄いわ!」  姉は抱きとめたまま頭を撫でてくれるがさすがに気恥ずかしく、次は母の元へ向かおうかと思ったところで父が抱き上げて褒めてくれた。  サミュエルの中にいる男は褒められたくてやったわけではない。  ただ子どもはこうあるべきだ。家族が求めている《《サミュエル》》を演じることが、自分にできる唯一の正解だった。  それを知らないとはいえ、褒めてくれる家族たち。温かいものを見る目でそれを眺めている使用人。  異世界で初めて男は【家族】というものを知った。  同時にその温かさに胸の奥が少しだけ痛んだ。
今後はっきり年齢を出す機会がないと家族の年齢がわかりにくいと思うためこの時点での年齢を明記します。  サミュエル   1歳  エドワード 父 27歳  レベッカ  母 26歳  ミシェル  姉 7歳  マイケル  兄 6歳  セドリック 祖父 48歳 (未登場)  ルーシー  祖母 46歳 (未登場)

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