青い米(@Aoikome1) / 第3話

第3話 笑顔の魔法使いを忘れるな

「それで?今回のタイトルは?」 ハンターは編集者に冗談半分で返す 「印税は半分くれよ」  「断る」 「じゃあ、せめて主人公の名前は『トム・ハンター』にしてくれ。義賊で、弓が上手いって設定で」 「なら、まずは話を聞かせてくれ。」 ハンターは何故か高揚しながら写真を取り出し 編集者が質問する 「これは?魔女狩りの絵画か?」 写真には、十字架にかけられ、燃やされている男。 目を背けて地に膝をつき、地面に少し不自然に手を置いている女。 松明を持った群衆が描かれていた。 そして、もっとも興味を惹かれる点は、男が 不気味な笑顔をうがべているところだった。 「あぁ、魔女狩りだ、男が十字架にくくりつけられ、燃やされてるってことは、確定だ」 編集者はどこか引っかかったように聞く 「ん〜、なんで笑ってるんだ?こいつは」 「まぁまぁ、そんなに焦るな、過程から話してやるよ」 「絵師が誰なのか、その絵師はこの人物を描いてはいないのか、って調べた、お陰様で紋章と名前がわかったよ」 ハンターはカバンから2枚の写真を取り出す 「ん〜?この紋章…ゆりかごに、大量の星、キリスト教徒か」 「正解だ、そして、紋章には必ず、その人物のモットーが書かれている、読んでみろ」 「え〜、「Enseigner aux pauvres」、『貧しい人たちに教えを』か」 「…今考えた推理、聞いてくれるか?ハンター」 ハンターは早く言え、と言わんばかりに耳を傾けた。 「この男が笑っている理由、それはキリストと同じ死に方をしたからじゃないか?十字架に無罪でかけられて死亡、確実にパラダイスに行ける」 ハンターが思わず舌を巻き、言葉を返す 「いや、すごいよ、俺とおんなじこと考えてた」 「ってことは正解か?」 「いや、違う、男はイスラム教徒だ、男の過去を探してる途中で見つけた、スペインでの宣教活動をしていたらしい」 編集者が思わず声を上げる 「じゃあなぜ紋章はキリスト教徒だったんだ?」 「実は、紋章もキリスト教徒じゃない、イスラムが混じってる」 「どこにだ?!」 ハンターは興奮しながら、なんとか言葉を紡ぐ 「実は、この大量の星、ルブ・エル・ヒズブが混じってる、それと、ゆりかごも三日月形だ、」 「なんでこんなややこしい紋章に?」 「少なくとも、キリスト教に見えるようにしなきゃいけなかった、しかし、どうしてもイスラムの教えを捨てられなかったってとこかな」 「まさに隠れキリシタンだ、ま、イスラムだがな」 編集者が納得したように唸る 「なるほどなぁ…男は何をやってたんだ?」 「一応は聖職者として文字を教えてたらしい、一人教えて死んだがな」 太郎か唾を飲み込み、意を決して聞く 「その…相手は?」 「ここの膝をついた女だよ、なんと、教えた文字も推測できる」 「何を教えたんだ?!」 「自分の名前さ、この男の本名は、ジョン・バウアー、そしてこの女、少し不自然な手の傾きをしてる、人差し指を地面に立て、指先が右を向いてる、円を書いたんだよ、それも不自然な長さの」 「ってことは、女は文字を書いたってことか…?」 「あぁ、この女はおそらくメイドだ、文字を教わることは普通だろう、だが、おそらくジャンヌに恋をしていた、それは普通じゃない」 「そして、恋人の名前を書いたんだ、Jからな、」 「俺は女が気になって、なんとか調べた、女の情報はなかったが…雇い主は見つけた」 「雇い主はどうやら領主だったらしく、フランス国立図書館で日記を見つけた」 モハメド ベン ブラックの手記 夜明けとともに起きる。城は霧に沈み、遠くの森は灰色の獣の背のようだ。冬は早足で来ている、早く冬備えをすべき時に、 口の中に何かが出来た、口内炎かもしれないが、痛くも痒くもない、祈りの賜物だろう 朝、鐘の音で目を覚ます。昨夜の雨で城壁の石が冷え、湿気が寝台まで這い上がってきていた。が、良いこともある 口の中の異物が、消えた、祈りが天に届いたのだ、素晴らしい、パライソ|《パラダイス》から、主が見てくださっているのだろう 昼、悪臭の漂う道を通り、病院に行ったもの 手の赤い発疹は治らなかった、水銀治療を受けたものの、効果はない、魔女のせいだ ハンターが手記の写真を読み上げ終わり、言葉を発する 「お前、親が医者なんだろ?何か心当たりないか?」 編集者が考えを巡らせる (痛くない発疹) (しばらくすると消える) (手に出てくる、中世…) 太郎が興奮して、声の大きさを考えずに言う 「わかったぞ!その病気の正体は!梅毒だ!」 「正解だ!」 「おそらく、メイドとヤったんだろう、だが、メイドがふしだらでは領主の果敢《こけん》にかかわる」 「だからスケープゴート|《身代わり》として、魔女狩りしたってわけか」 「ま、果敢じゃなく、股間に関わったんだがな」 「ははは、で、一旦整理しよう、ハンター、こんがらがってきた…」 ハンターは納得し、整理し直す 「ジョンはメイドに文字を教え、お互い恋をしていたが、お互いに恋を知られてはいけない状態だった、メイドは雇い主と性交渉をし、雇い主は性病にかかってしまう。」 「メイドと性交したことを隠すために、魔女狩りとしてメイドを処刑しようとするも、庇ったのか、男が代わりに処刑される。」 「男はイスラム教であることを隠していたので本当の名前は誰にも教えることはできなかった。」 「しかし、メイドだけには教えた、自分のことが、誰かの心には残ることがわかって、嬉しかったのだろう」 編集者は悲しそうに呟く 「メイドは、その後性病でしんだんだろ?」 「俺もムキになって調べたんだ、ただ、名前だけじゃなんもわからない…」 「そうか…しょうがないよ、ハンター」 ハンターは口角を上げて返す 「だから、紋章で調べたんだ」 「結果、十字架と、ルブ・エル・ヒズブが混じった紋章と、「Amour pour les pauvres」 『貧しい人に愛を』のモットーがあった」 編集者が興奮を抑えられずに聞く 「ってことは!死なずに、ずっと、ジョン・バウアーを思い続けてたってことか!?」 「あぁ、そんな話だ、どうだ?タイトルは、決まったか」 「あぁ、『笑顔の魔法使いを忘れるな』かな」

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