青い米(@Aoikome1) / 第4話

第4話

ある家で、コンピューターのみが辺りを照らす そして、その光源の中の文字が、増えては消えを繰り返していた。 タイピングをしている者の名は、ハンター。 考古学を専門としている大学生、どうやらレポートのようだ。 ハンターがここまで熱中している理由は、数週間前のある出来事に由来する ─────四週間前 「イスラエルでネアンデルタール人の壁画が、完全な形で見つかったらしい。状態も完璧なんだが'意味不明'なんだと。」 「今航空便を取った」 「アポも?」 「はは、ついでに絵も盗って帰ろうか?」 「命まで取られちまうぜ」 そうしてハンターはフランスを飛び立ち。 イスラエルに降り立った 飛行機のタラップを駆け下り、すぐに大学へと向かう 「おはようございます、教授」 「えぇと…ハンター君だったかな?両親が多大な寄付をしてくれた…」 教授は資料の束から目を離さないまま、まるで思い出したついでのように言った。 「それで、現地調査の許可もすでに通っている。イスラエル考古学局からの正式な招待扱いだよ」 「いやー、両親に頼んだ甲斐がありました」 教授は、ハンターに出土した絵の写真を見せ、土砂崩れのように情報が流れ込んだ。 絵の内容は、右から 花を持つ人の絵 弓の絵 笑顔の人の絵  「おぉ…これは…?」 「謎の絵、とでも言おうか、まるで美術館のように、等間隔で全く違う絵が描かれている」 ハンターが最初に目をつけたのは、人の顔の 差異だった、明らかに、笑顔と花を持つ人の絵では、明らかに、笑顔の人物と花を持つ人物では、個人差では説明がつかないほどに。 顔立ちが違っていた。 そして、笑顔には、何も言えない違和感があった 教授が見え透いたような尊大な態度で語る。 「我々は、ネアンデルタール人が起きたことを記録した、という解釈だ、一応、君の考えも聞かせてくれ」 ハンターは教授の態度よりも、絵を見続けて話した 「あーと…なんかシンプルすぎる気が」 「はぁ…そうだね、けれど中期旧石器時代の壁画は顔料が限られてるし、このような物が多いよ」 「そうですか、そうですね、ってことは大体、 紀元前4万年前あたりですかね?」 教授はどこか満足したように話した 「うん、とりあえず、何が起こったのか、が重要だ、調査を進めよう」 しばらくして、二人の会話を中断したのは、 一つのバイブ音だった。 「もしもし?そう、教授だ、何かあったか?」 『あぁ、岩陰からマオウの花粉が大量に見つかった。ネアンデルタール人が持ち込んだんだ!かなり大きな進歩だぞ!」 「そいつはいい、こっちにいる大学生も思ったよか話が通じる、面白いことがわかるぞ」 「マオウ、マオウ…」 (マオウと言えば薬草…、医療?) (笑顔を浮かべている理由は…治ったからか、 ネアンデルタール人に医療の概念があったし、マオウを使って何を治したんだ?) (もしこの三つの絵に関連性があるとして、どんな?) 教授の言葉が消え、携帯をポケットに戻して話す 「ハンター君?聞こえていたかな?」 「えぇ、マオウの花粉が出たってところまでは」 「マオウと言えば薬草だが、それから推測できることは何かな?」 ハンターがそろそろ、と言わんばかりに話す 「喘息対策、とか?気管支を広げますし。それか、喉を開いて行為のために使われたとか?」 教授が思わず鼻で笑い、言葉を返す 「…なかなかつまらないジョークだ、けれど、喘息対策というのは有力だね」 「はは、お褒めいただき光栄です、気になったのですが、一枚目の花を持つ絵、何か手が"自分側に傾いて"いませんか?」 「ん?あぁ、それは我々も気になっていたんだ、何かありそうだろう?」 「えぇ、何か…ありそうですね」 教授はハンターを気に入ったのか、適当なお菓子を渡す 「君は目の付け所がいいね、何か思ったらすぐ頼むよ」 「では、早速なんですが…笑顔の絵に描かれている人と、花の絵の人は、明らかに見た目が違いませんか?花の絵だけ、細すぎるような…」 「そこも我々はわかっていないんだ…今の所、 花の絵の正体は女性ということで調査している」 「ですが絵ならば誇張して、女性的な特徴を描くと思うのですが、どうでしょうか」 「うん…そうだね、確かに…確かに…」 教授が何か思いついたが、すぐ忘れてしまい、思い出そうと奮闘する (何を思いついた?種族、誇張、細い、ネアンデルタール人、壁画) 教授が単語から理論を角から組み立てる、 (体が細いのは誇張しているのではないか?女性ではない、細い…ネアンデルタール人、あっ!) 「わかったぞ、ハンター君!この花の人物は、ホモ・サピエンスじゃないのか?!」 「あれ?どうしてそうなったんです?」 「絵で、伝えるためならば誇張をするだろう? 女性ならば乳房を大きく描く、男性ならば屈強に。それで女性でもないのに細い、ネアンデルタール人に比べると、華奢《きゃしゃ》なのはホモ・サピエンス…ではないかな」 ハンターが驚愕《きょうがく》したように呟く 「…なるほど!花を持っているのはホモ・サピエンスだ!ということを伝えるために、比較的中性的に描いたんですね!」 「まぁ、確証はないが…」 「ホモ・サピエンスという仮説に従って調査してみる価値は十分あります、伝えてみてください!もしかしたら、ヌード画でも見つかるかもしれませんよ?」 「はは、それも重要な資料にはなるね」 教授はポケットから携帯電話を取り出し、耳に近づけ、ハンターはその声を横目に、考え込む (ホモ・サピエンスだと仮定して、何故花を持っているんだ?マオウを投与するため?なら与えたシーンを描くのではないか…?) (マオウを投与したのではないとして、何をしたんだ?自分が摂取しようとしているとかか?) 「手の傾き…そうか…?」 (ホモ・サピエンスがマオウをネアンデルタール人から奪った…もし、ホモ・サピエンスの骨でも出てきたら、決まったような物か) ハンターが考えに納得し、お菓子を口に運びかけた時、教授が話しかける 「ホモ・サピエンスの仮説に従って調査が始まったらしい、嬉しいよ、この人生で1番かもしれない」 「おめでとうございます、私も面白い仮説を思いつきましたよ」 「なんだい?聞かせてみてくれ」 教授がソファーに座り、ハンターの話を聞く 「もしかしたら、ホモ・サピエンスがマオウを持っているんだとしたら、奪ったのではないか?と、思いまして」 「ほう、それはなんでかな?」 「もし、医療《いりょう》行為ならば与えてるところを描くと思うんです、のに、手は自分側に傾いている。これは奪ったのではないか、と思いまして」 教授が唸《うな》り声を上げて話す 「うぅーん…情報が少ないから、やっぱりなんとも言えないね、けど、何処か納得はできる 仮説だ」 「そういっていただけて光栄です、教授」 「暫定《ざんてい》では有力な仮説だね、調査を進めていこう」 ────二日後 ホテルでのハンターの目覚めは、決して良い物ではなかったが、気分は良い物であった。 ホモ・サピエンスの頭蓋骨が出土したのだ 「ん〜、最高の1日だね。仮説は正解、これで 事実に変わったんだ」 ハンターが服を着替え、大学に向かう 「おはよう、ハンター君。ホモ・サピエンスの頭蓋骨が発掘されたんだ、聞いたよね?」 「えぇ、というか、言われましたね、あなたに」 「まだ興奮が抑えられていなくてね…すぐに忘れてしまうんだ」 「えぇ、同じ気持ちですよ、私は一万年前どころか、朝食も忘れました」 「はは、そうかそうか、花の絵はわかった、そして、今調べるべきは…」 「弓の絵か、笑顔ですね」 「弓の絵が本当に意味がわからないんだ、となると…笑顔だね」 「治って嬉しいとかかな?どう思う?ハンター君」 「ジョーカーが放映されてたとかですかね?」 「はぁ…弓の絵は本当にただの弓しかない、ロングボウということしかわからないよ」 ハンターが面倒臭くなり、言葉をこぼす 「…意味とかないとかですかね?」 「かもしれないな」 周囲から音が消えたその瞬間、電話が鳴った 「…ハンター君、新しい壁画が発掘されたらしい」 「内容は?」 「ホモ・サピエンスと思われる種族が、ネアンデルタール人を」 教授が少し言葉に詰まり、溢す 「全員、殺している絵だ」 「…」 「そして、何故か、他の壁画と比べて、状態が極端に悪い」 「さらに、棒の壁画が見つかった」 ハンターがようやく、自分の声帯を使用する 「…弓と何か関係があるんですかね?矢、とか」 「あぁ、おそらく、弓のような意味があるはずだ」 教授はハンターが混乱しているのを汲み取ったのか、優しく話す 「一度、状況を整理してみようか、ハンター君」 「そうですね…」 そうして教授が足早にメモを取る 教授のメモ 確定していること マオウが洞窟内にあった 違和感 手が自分の方向に傾いている 弓の絵 ホモ・サピエンスらしき種族が、ネアンデルタール人を虐殺している絵の保管状態が。他と比べて極端に悪い 笑顔の絵の意味      有力な仮説  花を持っているのは、ホモ・サピエンス マオウは喘息対策に使用された 疑問の状態の仮説 ホモ・サピエンスはマオウを奪った? 「とまぁ、こんなところかな…とりあえず、考察を続けよう」 ハンターが混乱しながらぼやく 「ええと…新しく発掘された絵の地層は?」 「同じだよ、少し深いところにあったくらい」 「ということは、今見つかった絵の方が古いんですよね?」 「そうなるね」 「それでいて状態が悪い…新しい方を考えてからの方が、何か進展がありそうですね」 「そうだね、とりあえずはこの、虐殺の絵を考えてみようか」 ハンターが地図を開いて言葉をこぼす 「…これはもう、実際に現場に行くべきじゃないですか?」 「…そうかもね、実際に行くことで何か進展があるかも」 ハンターの頭に激震が走ったものの、すぐ忘れた (今、何を思いついた?記号、えぇと…弓を、考えてたんだ、弓、地図記号。弓は、記号…?) (もし弓が何かの記号…だったとしたら、どんな意味があるんだ?) (弓がイメージするものといえば、戦い、狩り、このどちらかだ、しかし、戦いならば剣を描くのではないか?) (おそらく狩りの記号なのだろう、そして、狩りに必要な要素…協力?) (協力しろという意味ならば、あのマオウの絵はプラスに考える必要がある、あれは離さなければならなかった…その必要性を考えるんだ) ('嫌気性菌'だとか…?待てよ、それならば全てに筋が通るぞ) ハンターが少し間を置いて、嬉しそうにいう 「その、教授、わかったかもしれません、すべての意味が」 「なんだって?言ってみてくれ」 「まず、もし弓の絵が、何かの記号だったとしたら、狩りを意味すると思うんです」 「あぁ!いい仮説だ!聞かせてみてくれ」 「狩りに必要なのは協力、つまりは、協力しろ、という意味、なのではないかと思いまして。もしそうだとしたら、面白い事実がわかります」 「…」 「この絵はすべて良い行《おこな》いをしていると考えると、つじつまが合うんです」 「どんな風に?教えてくれ」 「花を奪っているのは'花が悪影響を与えていた' と考えたら、空気を嫌う嫌気性菌なのではないか、と、少しは良くなりますし…」 教授が目を光らせ、思わず手を離して叫ぶ 「…!なるほど!となると…笑顔の意味は」 「痙笑《けいしょう》なのではないか、と、つまりは、破傷風の症状です」 「…ということは、ネアンデルタール人は文献として、絵を残したのかな?」 「そうじゃないですかね〜、ボロボロの虐殺の絵は、虐殺の否定を表現したかったんじゃないか、と」 「なるほどな、納得したよ、この仮説で行こう、見つかるといいな、決定的な証拠」 そうして、4週間後 未だ決定的な物は見つかっておらず、発掘が続いている。今現在、ハンターは、この妄想の発掘記をレポートとして提出している、

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