@ItsukiHaruma_JP / 第59話

第5章:終わりの一歩手前

馬車を降りたら、ねぇ、マジでそこ、めちゃくちゃデカかったんだけど…。映画で見るような、本物のコロッセオって感じ。高い灰色の石壁に、足元でギシギシ鳴る粗い砂の地面。 薄暗くてジメジメした廊下をズンズン進んでいくと、両脇に牢屋がズラッと並んでてさ。中には筋肉ムキムキで、憎しみオーラ出しっぱなしの男とか女とかがぎっしり。あたしに向けられる視線からして、きっと「新しい獲物来た」「こいつは死にに来ただけだろ」とか思ってるんだろうね。たぶん、絶対そう。 で、あたしたちの牢屋に到着。あたしと薫様だ。昨日の納屋に比べたら、もう五つ星ホテルだよ、ここ!例えば、そこそこ快適なベッドが二つあって、さらに即席のカーテンで仕切られた場所で用を足せるようになってたのは、ホント奇跡かと思った。 しかも、一番最高なのは、うんこの匂いがしないこと!これ、超重要! あたしは突っ立って薫様のこと見てたんだけど、彼が重い沈黙を破った。 「何突っ立ってんだ、ガキ」 「ヒントを…ください」あたしの声、思ってたより必死で、焦って出ちゃった。 「何のためにだ?お前もあたしも死ぬんだ。戦ったって無駄だ、ガキ」 胸がギュッとなった。このおっさん、もう戦うことすら諦めてるなんて、どれだけ悲観的なんだよ…まあ、言ってることは正しいんだけどさ。ここが、あたしの墓場になる可能性、めちゃくちゃ高いし。それでも、あたしは深呼吸して答えた。 「そうですね…あたしはここで死ぬでしょうね」 声が震えて途切れちゃったけど、あたしはグッと涙を飲み込んで続けた。 「でも、死ぬなら、せめてこのムカつく怒りを何かにぶつけたいんですよ」 薫様はしばらくあたしのこと見てた。あたしに口を利く価値があるのかどうか、吟味してるみたいに。それから、深〜いため息をついて答えた。 「わかった。じゃあ、戦略を教えてやる。お前は武器を選べ。お前の体格なら、ナイフとか、小さくて軽い武器を使え。それを鎧の中に隠すんだ」 「鎧?あたし、鎧なんて持ってませんけど?」 「支給されるだろうよ…」 「はい、それで?」 「接近戦は避けるんだ。攻撃しては離れろ。もし相手に殴られたり、地面に倒されたりしたら、お前は死ぬ。わかったか?」 「わかりました…これで終わり、ですか?」 「怖くないのか?」 「怖いです、はい」あたしは震える自分の手を見つめながら答えた。それを認めちゃうだけで、なんか自分が嫌になる。 「そうは見えんな」 「それって、良いことなんですかね?」あたしは葬式みたいな空気を誤魔化すために、無理やり笑ってみせた。 しばらくして、二人のエルフがやってきて言った。 「お前の戦いが近づいている。チャンピオン様のウォーミングアップになるんだがな…」 あたしは奴らを睨みつけ、苛立ちを込めて言い放った。 「だったら、今日あたしがチャンピオンになってやるっつーの!」 「お前はただの屍になるだけだ」と、エルフの一人が冷たく言い放った。 奴らは再びあたしを廊下へと連れて行く。足音の反響が、遠くから聞こえる群衆の咆哮と混じり合って、なんだかゾワゾワした。やがて、武器でいっぱいの部屋に着いた。ピカピカの長剣、何トンもありそうな斧、ズラリと吊るされた鎧…マジで多すぎて頭がパンクしそう。あまりの選択肢の多さに、あたし、完全に迷子状態。 適当に剣を手に取った瞬間、ドシンッと床に落ちた。重すぎっ! 両手で持ち上げて、元の場所に戻すだけでも一苦労。その時、小さくて丸くて軽い盾が目に留まった。これ、完璧じゃん! あたしは迷わずそれを持つことに決めた。 基本的な鎧、金属で補強された革のプレートアーマーを見つけた。軽くて、しかも結構おしゃれ…うん、あたしはそれを身につけた。やっぱ、スタイリッシュじゃなくちゃね! 次に、武器を物色する。剣は軒並み重い。でも、ナイフならいけそう。ブーツの中にいくつか、腰にいくつか隠した。それから、片手で使えるものを探し、ある剣を見つけた…見た目は肉屋の鉈みたいだけど、片手で持てるし、軽い。 完璧! 部屋の隅に、石の袋が付いたパチンコみたいなものがあった。子供の頃に使ったことあるし、これなら使える! と思って、あたしはそれも手に取った。 ま、専門家じゃないけど、少なくとも丸腰でそこに入るわけじゃないし。 エルフが近づいてきて尋ねた。 「準備はいいか?」 「ええ、バッチリ」とあたしは答えた。 彼はあたしを鉄格子の門まで案内した。熱狂的に叫ぶ群衆の声が聞こえる。笑い声、賭けの声、叫び声。その音が、あたしの神経を逆撫でする。マジでイライラする! 門が開く。 あたしはアリーナに足を踏み入れた。足元の熱い砂、強く照りつける太陽、空気中に漂う汗と血の匂い。観客席はエルフや他の種族で埋め尽くされ、皆が興奮してギャーギャー叫んでいた。 そして、アリーナの奥で、別の門が開いた。あれがあたしの対戦相手…例のチャンピオンってやつね。 彼はゆっくりと歩いてくる。背が高く、筋肉質で、傷跡だらけの顔は純粋な憎悪に満ちていた。彼はあたしを睨みつけ、吐き捨てるように言った。 「心配するな、嬢ちゃん。すぐに終わらせてやる」 あたしは何も答えなかった。ただ、真っ直ぐに睨み返す。 戦いたくない…本当は、死にたくない。 だから、あたしは生きる。

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