@ItsukiHaruma_JP / 第58話

第4章:逃げられない者たちの道

あの硬い床で寝てた……ってか、寝ようと必死だったあたし。結局、一晩中まともに目を閉じられなかったんだよね。それに、あの日のこと以外にも、この場所、めちゃくちゃ寒くて、マジで臭い! 膝を抱えて丸まって、ただその空間をジッと見つめてた。他の奴らが寝息を立ててるのが聞こえる。寒さで歯をガチガチ鳴らしてる奴までいて、もう散々。 そしたら、納屋の閂が外れる音が聞こえてきたんだ。 金属が擦れる音が、まるで恐怖の予告みたいに響き渡る。 扉が開く。 例のクソエルフが、そこに突っ立ってた。相変わらず上から目線でさ……周りには取り巻きのエルフどもがいて、きっとおべっか使いの連中なんだろうな。そいつはあたしを真っ直ぐ見て、嫌味ったらしく言った。 「やあ、よく眠れたか?」 あたしは何も答えず、ただ視線を逸らした。そいつの皮肉なんて聞く耳持たない。正直、そいつの存在自体がムカつくけど、生きてるためなら我慢するしかない、って自分に言い聞かせる。エルフはゆっくりとあたしに近づいてきて、言った。 「ふむ、頑固なようだな……昨日のことを全く学んでいない。お前のような人間にぴったりの仕事がある。」 あたしはまだ何も言わない……必死で表情を固く保とうとする……でも、実際は内心ビビりまくってる。あの忌々しいエルフ、絶対にあたしを徹底的にいじめる気だ! 「旦那様がどんなお仕事をお与えになっても、あたし、躊躇なくこなしますんで!」あたしは必死に恭順な態度を見せつけて答えた。 エルフは下品で満足げな笑みを浮かべて、言った。 「それを聞いて嬉しいぞ……だが、忘れないように、一つ強調しておく。お前はリサンディル・カルサスの所有物だ。つまり、俺のものだ。分かったか?」 「はい、旦那様。」あたしは憎悪を唾と一緒に飲み込みながら、そう答えた。 そいつは他の人間たち全員を見回して、言った。 「さあ、お前たち怠け者ども、全員起きろ! 今日はお前たちの仕事が割り当てられる。そして、長続きしろよ……お前たちのような虫けらを買うのに、これ以上金を使いたくないからな……だから、一列に並べ。何をするか言ってやる!」 みんな、まるで犬にでも調教されたかのように従順に動き出す。あの、自分が一番偉いとでも思ってる忌々しい顔をぶん殴ってやりたい衝動に駆られたけど……あたしは歯を食いしばって列に並ぶしかなかった。あたしは最後から二番目。薫様があたしのすぐ後ろに立ってた。 そいつは奴隷たちの役割を一人ずつ告げていく……ある奴は厨房、ある奴は農作業……何人かは「生産ライン」だって。それが何なのかは知らないけど、なんかロクな仕事じゃないのは確実だよね。もし厨房に当たれば、なんとかやっていけるかもしれない。もしかしたら、ここから逃げ出すことも……。まさか、このあたしが爪を汚して料理する羽目になるとは思わなかったけど、ここではそんな贅沢言ってられないみたい。 あたしが近づくと、リサンディルは何か面白いことを思いついたかのように、あたしに向かってニヤリと笑った。 「お前は娯楽だ……」リサンディルはゾッとするような笑みを浮かべて言った。 「娯楽? それって何ですか?」あたしはちょっと怯えながら尋ねた。 後ろを振り返ると、薫様が顔面蒼白でパニック状態だった。 この瞬間、あたしは悟ったね。マジで、あたし、終わった。 あの「娯楽」ってのが何なのか、あたしにはさっぱりだったけど、あの人の顔見る限り、きっととんでもなくヤバいことなんだろうな…。 ちぇっ、なんであたし昨日余計なこと言っちゃったんだろ? 「それで、あのジジイがお前を庇ったんだ。じゃあ…お前のトレーナーになってもいい。許可する。お前は人間軍にいたんだろ? さあ、あたしを楽しませてくれよ。今日からだ。二人とも、さっさと馬車に乗れ。」 そう言われた瞬間、あたしの手と薫様の手が縄で縛られちゃった。縄が手首に食い込んで、地味に痛い。あたしたちは同じ馬車に押し込められて…どこかへ向かい始めた。 薫様のほうをチラッと見る。顔は真っ青で、足がガクガク震えまくってる。もう、ビビり散らかしてるのが丸わかりだった。 「そんなにひどいんですか?」 知りたがったことを速攻で後悔しながら、あたしは尋ねた。 彼はあたしをギロっと睨んだ…まるで「お前のせいだろ!」って言ってるみたいに。でもすぐに、ふーっと深呼吸して、自分を落ち着かせようとしてるのがわかった。 「ひどいどころじゃない…今日、俺たちは死ぬ。」 あたし、凍りついた。全身がカチコチになって動かない。 今日、死ぬって? 首元のネックレスに触れる。助けを求めるみたいにじっと見つめちゃう。でも、また薫様を見て、震える声で尋ねた。 「あの…あたし、知りたい…娯楽の分野って、一体何なんですか?」 「ローマを知ってるか…剣闘士がアリーナで死ぬまで戦ってた場所だ。」 「それが何の関係あるって言うんですか!?」 話の展開が最悪すぎて、あたしは思わず叫んだ。 「お前は誰かと死ぬまで戦うんだ…そして、もしお前が負けたら、エルフどもは俺を殺す。奴らは誰が生き残るかに賭けてるんだ…それが娯楽だ。殺るか、殺られるか。正直、俺の命が、お前みたいな甘ったれのガキにかかってるなんて…俺はもう死んだも同然だ、確実に。」 「あたし…誰かを殺さなきゃいけないの?」 その質問はほとんど声にならなかった。あたし、ショックで思考停止…誰かを殺す?あたし、ハエ一匹叩いたことないんだけど。てか、あたしの体格とか冗談でしょ?どうやって戦えってのよ? 「お前は平和主義者か、まさか?」と薫様が呆れたように言った。 「あたし、誰ともケンカしたことないもん…あたしみたいな可愛い女の子は、ケンカする必要なんてなかったし…大抵、あたしのために誰かがケンカしてくれてたし。」 彼は完全に絶望した顔であたしを見つめて、言った。 「俺たちは、もう終わりだ。」 「ちょっと、あたしたちの飼い主、あなた元軍人だったって言ってたじゃない!何かヒントとかないの?」 「せいぜい、剣闘士がいい奴で、せめて楽に殺してくれるように祈るんだな。」 「人を励ますのは得意じゃないんですね。」 「励ましてるんじゃねぇ、現実を言ってるんだ。」 そして、馬車が止まり、あたしたちは到着した…目の前には巨大な壁と門。 …まあ、ここで死ぬか…それとも、死なないか、だね。

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