人生平坦道 / 第4話

城門前

 城門前に付くと見張りの衛兵一人鼻血を大量に流して倒れており、もう一人の衛兵が介抱するように声を掛け続けていた。 「おいッ!しっかりしろッ! 一体何があったって言うんだ! 衛生兵ーーッ!」  すんごい大声で叫んでいる……こわッ。  倒れていた男の方はがくっと頭を揺らしていたが命に別状は無さそうだったので、声を掛けずそのまま見て見ぬ振りをした。何たって今はそれ所じゃ無いからな。  城門前のすぐ近くにてセラを見つけた。股を開くようにしゃがみ膝に肘を付いていた。普通にパンツが見えている。 「セラァアア! 何て恰好をしているんだお前⁉」 「アンタおっそいのよ、別に見られて恥ずかしい物でも無いわよ大袈裟な……」 「そんなことを言ってるんじゃないんだ! 何で修道服とスタッフしか持ってないんだと聞いているんだッ!」  さっきと身に着けている物がほぼ変わってないではないか、冒険を舐めているのかこいつは。  セラはようやく振り向きこちらに目をやると目を見開いたかと思うと眉間に皺を寄せ、まるでチンピラかのようにこちらを睨み付けている。 「あんたこそ何て格好してんのよ⁉」 「何って騎士団長をしていた頃はいつもこの格好だが?」  グレイシア王国代々に伝わる防具。  騎士団長になった時に「どうせお前以外誰も着れないから」と授かった鎧一式。  防具の総重量は百五十キロであり常人では持ち運びすらも困難だろう、先祖代々誰もそれを装備することは出来なかったと聞く。  十五歳の頃、両親を驚かせようとフル装備で玉座の前に現れたら二人共が白目を向いて石の様に固まってしまったことを思い出す、その時のしてやったという感情は今も忘れられない。 「あんた今からどこに行く気よ、死地に出向く訳⁉」 「まぁ何が起きるか分からないから最善の準備をしたまでだが……」 「ってかあんた誰か分かんないわよ、そんな恰好で本当にいいの? ずっと顔見えないわよ、デザイン的な意味で」 「そ、それはいかんな、今すぐ着替えてくるここで待っていてくれ」  そういうのは良く分からないが何故か駄目な気がしたからとりあえず着替えてくることにした。  確かにこんな格好ではオークたちに合わせる顔が無いからな、「後にええっと……誰でしたっけ?」と言われても困るし……。  暫し待っていてくれエルフの皆、必ず救いに行きますので……。    しばらくして再度城門前に到着した。  まだ介抱していた衛兵がこちらを見た瞬間鼻血が噴水のように大きく弧を描きその場に崩れ落ちた。  痙攣するようにピクピクとしていたが命に別状は無さそうだったので声を掛けずそのまま見て見ぬ振りをする。  帰ったら職場改善案を提言しよう……そう思った。  セラを見つけ、汚れを気にせず地面に長座位になって体を反らせていた、胸の膨らみは全く強調されていない。 「悪い、待たせたな。」   セラがこちらを振り向き目の下がピクッと一瞬動きを見せる。 「アネット……。あんた一体どういうつもりなの?」 「何が?」 「何がって……。何なのその服は?」 「ああ、これか。どうだ? 似合ってるだろう?」 「そういう問題じゃないわ。そんな服を着てどうするつもり? 一体何が目的なのよ。」 「まあ確かに目立つことは目立つかもしれんが……。だが似合ってるだろ?」 「……。」 「似合ってない?」 「だからそういう問題じゃないのよ、そんな恰好でいられたら私も同格に見られるでしょう⁉」 「私は似合ってると思うんだがなぁ……、似合ってないのか……」 「……もう帰る」 「分かった着替えてくる、着替えてくるから帰らないでくれ、許してくれよ! な! な!」  せっかく着替えて来たのに、なんて言いようか。酒場で無理を言って借りた踊り子の着ていた服を私は返しに行く。  豊満な胸を寄せて出来た双丘の美しい谷間を作るハーフトップと健康的なヒップラインが見て取れるダンス用腰巻き布。  強調こそはしていないがはっきりと見て取れる腹部の腹筋と露出した両手足はしなやかであるが筋肉による膨らみが見て取れる。  上半身と下半身にはアンバランスな凹凸が出来ているがそれは見た者は性別を問わず美しさを感じ取れる肉体美。  自信あったのに……ウケなかったなぁ。  その道中、子供の目を隠す母親、歩きながら壁にぶつかる男、女にビンタされる男を目にした。 「あぁ、たまらん見られているッ……。」  恥ずかしくないのかと問われたら一蹴してやる。恥ずかしいと思うから恥ずかしいのだと。  だが後に母君の耳に届き祖父の次に恥晒しだと言われてかなり落ち込んだ。  夜中にパンツ一丁で屋根の上を駆けまわり下着泥棒をしている祖父と比較されること、それと同類に思われることはいくら私であっても屈辱であった。
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