朝海 / 第42話

Code8

 ――神様。  ――どうか、カイルさんが無事に帰って来るかを祈らせてください。  サラはエリスとともに祈りを捧げていた。  ――サラさん、エリス。 「え? カイル、さん?」  パチパチと瞳を瞬かせる。 「ねぇ、ママ。パパの声が聞こえなかった?」 「エリスも」 「うん」  ――サラさん、エリス。  また、聞こえた。  愛しい人の声が。  甘い、甘い声で二人への愛情が、詰め込まれていた。その声を聞いてドロドロにとろけてしまう。崩れかけた表情を慌てて隠す。言いたいことはたくさんあった。  眼差しを強くする。 「カイルさん」 「パパ」  ――心配をかけてごめんなさい。  ――ライエル騎士団長から、通信の魔法石を貰って話しかけています。  サラは息を吸った。 「バカ! バカ! カイルさんの大バカ!」  お腹から声を出す。  肩で息をした。  怪我をしているのに、私たちがどれだけ心配をしたか! わなわなと怒りに震えながら、声を張り上げた。サラとエリスの瞳には涙が浮かんでいる。 「パパのバカ!」  サラに負けないとエリスも怒る。  ――言われる覚悟はしていました。  ――決着がついたので二人の声が聞きたくて。  ――ダメだったでしょうか? 「よかった! 生きてくれてよかったですわ!」  サラは五年前と同じ言葉を口にする。あなたは覚えていてくれているか分かりませんが、とつい言ってしまう。  ――サラさんにその言葉を言われるのは二回目ですね。  ええ、そうですわ、覚えていてくれたのですね、と言いながら涙を拭う。あの時から、あなたは無理をしすぎですわ、仕事もありますし、休めないじゃないですかと苦い顔をする。  ――ケアハウスの子どもたちは、どうしていますか? 「アイル先生のケアハウスの子たちと、仲良くやっています」  ――よかったです。  ――もう少しで帰れると思います。  ――アイル先生にも怒られるでしょうね。 「アイル先生も住民もあなたに怒っています。それでも、皆待っています」 「パパ、待って!」  ――エリス? 「さっきは怒鳴ってごめんなさい! 何があってもパパはパパだから! 大好きだよ! だから、早く帰って来てね!」  あらあら妬けてしまいますわ、ライバル出現ですわね、と頬に手をそえる。嫌がっている素振りはなかった。  むしろ、楽しそうだ。    ――サラさん。  ――子どもにしかもエリスに、妬けてどうするつもりですか? 「あら? 私の愛は狂愛だとご存じでしょう? 狂おしいほど愛していると言ったではないですか?」  サラはカイルとポンポンと会話を交わす。なるべく、普段通りにといったサラの配慮でもあった。このやり取りだけで二人の関係性が成立していた。  やはり、カイルはこうではないと思う。歪んでいたとしてもこれが、サラの「愛」でもあった。  愛情だった。  ――覚えていますよ。  ――お姫様。 「エリスも私も待っていますから、早く帰って来てくださいね」 「パパ! 帰って怪我がよくなったら、たくさん遊んでもらうからね! 約束!」  ――約束だ。  ――いっぱい、遊ぼうな。  ――エリス。  サラとエリスと約束を交わしたところで、通信は終了したのだった。

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