朝海 / 第39話

Code5

 カイル・コールエン。  サラ・コールエン。  エリス・コールエン。  ロットは魔力で三人の形跡を見ていた。  ――彼女たちがほしい。  ――俺の物にしてやるよ。  ――カイルから奪ってやる。  心を操られればカイルを殺せる駒にはなる。操れば簡単に手に入るだろう。サラを除いたとしても、最悪エリスだけでもほしかった。  滅茶苦茶にしてやりたい。  組み敷いて抱いて自分好みの女にできたら、どんなに楽しいだろう。  甘い喘ぎ声を聞きたい。  時間はたっぷりある。  ――俺の手で調教してやろう。  ――快楽でドロドロにしてやるよ。  ――逃げられないくらいに。  立ち上がると、グルグルと唸って魔物も後をついてくる。お前は留守番な、と声をかけるとシュンとなった。  ロットはフレイル国立公園に来ていた。カイルたちが休みの日に、よく来ているからと知っていたからだ。周囲を見渡して捜した。  ――見つけた。  エリスとサラとでピクニックをしている。ロットの足元にエリスの帽子が落ちた。  拾ってエリスに渡す。 「お兄ちゃん、ありがとう!」  ――さぁ、俺を見ろ。  ブラウンの瞳が金色に怪しく光る。  ――手を取れ。  人を操る能力を施していく。すると、途中でパチリ、と弾かれた。ロットの目の前に、シールドの壁が立ちはだかった。 「お久しぶりですね。ロット・ウィーズリー。五年ぶりですか?」 「サラ・コールエン」  ロットに私が戦えないと思わなくて? そう言っている。手には魔法石を持っている。 「サラさん、これを」 「魔法石ですか?」 「身を守るお守りとして持っていてください」  ――カイルさんからもらっていて正解でしたわね。 「世間知らずのお嬢様に何ができる?」  ボッと上がった炎がロットを取り囲む。甘いなとぼやくと、炎は給されていく。こんなものかと、ふん、と鼻で笑った。  戦えないサラには勝てる。元公爵令嬢なんかに、負けるはずがない。その自信があって、全力を出し切っていなかった。 「お嬢様は何年も前に卒業をしました。守れられるだけではないですわ。これはどうでしょうか?」  ロットの前からエリスとサラの姿が消えた。姿を消すカモフラージュの魔法石を使ったのだ。  ――ロットよ。  ――失敗をするとは何事だ?  紋章越しにアリスの声が響いた。  ロットは誰もいない公園の端で土下座をする。そこにアリスの気配がすると気付いたからである。 「申し訳ありません! 女王陛下!」 「謝罪などいらぬ」  ロットは息を飲んだ。  姿はないがそこには魔物がいる。飼っている魔物に間違いなかった。ロットの魔物がアリスの手を取って、寝返ったのである。このままだと、魔物に飲み込まれてしまう。  食べられてしまう。  そう察して懇願をした。 「次こそは必ず……! 時間をください……!」 「次などない」 「おやめください! お願いです! やめてください! 女王陛下! どうか、慈悲を! お許しを!」 「我に慈悲などない。いけ。食事だ」 「我の名前を呼ぶな。はっ……つまらぬ玩具だったのう」  ロットの体は魔物に融合されていく。そのまま、飲み込まれていった。

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