朝海 / 第38話

Code4

 おい! カイルが……! カイルが……! 酒屋の扉がバンッと開いた。住民が息を切らして立っている。カイルがどうした? との声が上がる。  子どもたちをかばって魔物に襲われた! 今、アイル先生のケアハウスで治療を受けている! 報告の声は悲鳴に近かった。   「おい! 嘘だろ! 魔物なんて今まで出没しなかったじゃないか! 闇の王国の奴ら……!」 「だから……!」  男はドサッ、ドサッ、ドサッと何冊もの分厚い本を机に投げた。全部、魔物に関するものだ。カイルのために少しでも勉強をしよう。  ページをめくる音だけがする。  結局、分かったのは魂を売って契約をし、魔物たちを操られる力のみとしか書かれていない。倒す方法などは書かれていなかった。 「一つだけ――一つだけ方法がある」  声を絞り出した一人の男に、視線が集中をした。ジャンク屋の武器に強いこの男なら期待ができる。 「何だ?」 「『聖女の涙(セレナーデ・ブラッド)』」  昔、世界にはとある聖女がいたらしい。戦争が続き悲しみ嘆いて、流した涙から作られたとの説明が、フレイルの伝記に残されている。  伝記の中には契約者と魔物を一発で、倒せる銃弾だと書き示されていた。騎士団のよって厳重に管理されている。 「あいつに……! あいつに……! 武器を持てと言うのか……!」  非難の声が飛んできた。  どしん、どしんと地鳴りがした。    外を見ると魔物が列をなして歩いている。そのうちの一匹と目が合った。魔物が口を開いて向かってくる。反射的に武器を掴もうとしたがパッと離した。  ゴロゴロと雷が轟いた。  雷がぴしゃりと落ちる。  魔物が焼けただれていく。  魔法石が発動したのだ。  残りを騎士団が馬で走り回って駆逐していく。青い血しぶきが上がった。 「ライエル騎士団長!」 「怪我はないですか?」 「貴様!」  ジャンク屋の男がメフィスの体を壁に押し付けた。ギリギリと締め上げる。剣呑な空気になった。周囲がジャンク屋の男を引き剥がす。 「俺はあいつの武器を持たせるなんて反対だ! あいつがどんな思いでこの町に流れて来たのか、知っているだろう……!」 「彼の過去を知っているのですね?」 「知っているさ! ジャンク屋の情報網を舐めるよな! だがな! それ以外に、俺たちにとってカイルは家族だ! 仲間だ! あいつを失くしたくねぇだけだ!」  基本、アイル以外には触れさせず、ケアハウスから出ようとはしなかった。怯えて閉じこもっていた。その後、少しずつ笑顔を見せてくれた日を、今でも覚えている。笑顔を見られて、どれだけ安心できたか知らないだろう。  なのに、能力を利用するために声をかけたお前たちに、怒りしかない! と吐き捨てた。 「知っているのなら、話は早いです。生きるのか? 死ぬのか? あなたはどちらを選びますか?」 「なら、俺たちも戦う! それが、条件だ!」  我慢なんてできなかった。  黙るなんてできなかった。  ジャンク屋の男はパチンと指を鳴らした。火器銃やライフル銃やナイフと剣を持った男たちが入ってくる。  外には火器のついた戦車や装甲車まで。  ジャンク屋の男はメフィスの口が僅かに、持ち上がったのを見た。  ――この男……!  ――もしかして、この言葉を言わせたかったために、挑発をしたのか……!  ハッとした。  自分たちならカイルと一緒に戦ってくれる。それに、炊きつけて挑発をしたのだ。  最初から目をつけていたのである。  力になってやってくれといわんばかりに。  回りくどい奴だな、そう言えばいいのにと毒づいた。

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