朝海 / 第34話

LAST Code②

 カイルは突然、眩しいぐらいの光に包まれた。光りに包まれている場所は、ふわふわとして心地よかった。  嫌な感じはしない。  むしろ、懐かしさがあった。  大切な人に呼ばれていると自覚はある。  ――もしかして。  その予感は的中した。  ――カイル。  名前を呼ばれて振り返る。  間違えるわけがない。  紛れもないアンとジルの声だった。  ――父さん、母さん。  ――大きくなったね。  ――ごめん。  ――ごめんな。  ――カイルに負担をかけてしまった。  ――父さんと母さんが謝る必要はないよ。  ――あれは、僕自身が下した決断だ。  今なら分かる。  いずれ、敵になる危険分因子が近くにいる。気を付けろと命と引き換えに、警告をしてくれていたのだ。  ――もう、大丈夫?  ――苦しくない?  ――僕は大丈夫。  ――だから、ゆっくり眠って。 「ル……ん? イ……さん? カイルさん?」  ――ほら、呼ばれているわ。  ――いきなさい。  カイルの背中をとんと軽く押す。数回、瞬きをした。アルコールの匂いと風に揺れているカーテンが、そこにあった。見慣れたサラの病室に戻ってきていた。  短い夢を見ていた。  アンとジルに会えた気がする。 「どうかしましたか?」 「ううん。何でもないです」 「変なカイルさんですわ」 「もうすぐですね」  あの時のことを思い出す 「カイルさん……! 子どもが……! 子どもができました!」 「やっぱり。最近、しんどそうでしたし、家事をやりながらもしかしてと思っていました。専門部署は違ってもピンとくるものはあります」 「あら? 気付いていたのですか?」 「一緒に暮らしていますし、気付かないほど鈍くはないつもりです」 「勘がよさすぎて怖すぎるぐらいですわ」 「アイル先生に取り上げでもらうでしょう?」  子どもができた時の騒ぎが、すぐ最近に思えてくる。あれから、一年が過ぎたのだ。その間に、カイルはアイルのアドバイスを受けながら、出産に向けてのフォローに入った。  大きくなったお腹を撫でる。  小さな命の息吹を感じていた。感じる鼓動に瞳を細める。愛おしくて仕方がない。サラに似てお転婆で、力強くお腹を蹴っている。  ――元気に生まれてこい。  ――待っている。  女の子よ、とサラから聞いていた。名前はエリスを付けると決めていた。フレイルでは光の意味が込められている名前だ。光みたいに明るく育ってほしい――そう言った。 「カイルさん。私はあなたに再会をするまで、とてつもない長い夢を見ているみたいでしたわ。こうして、私の傍にいてくれてありがとうございます」 『エリスを含めて大好きだよ』    二人の声が重なって笑う。愛を証明するかの如く、結婚指輪がキラリと輝いた。  つないだ手は二度と離さない。  離れはしない。  この人と生きていくと決めたから。  覚悟はあるから。  フレイルにしては珍しく、柔らかい日差しが二人を照らしだしているのだった。

運営おすすめ

週間ランキング

全ランキング

反応スコアランキング

もっと見る

PV・ブックマークランキング

もっと見る

更新された連載作品

すべて見る
読み込み中…

新着短編

すべて見る
読み込み中…

作品一覧

読み込み中…

作品ダッシュボード

作品全体の公開状況と、読者からの反応をひと目で確認できます。

作品パフォーマンス

選択期間のPVが多い順

上位5作品
ライブラリ

作品の公開状況と構成

最近の更新

最後に編集した作品

要チェック

公開前に確認したい項目

プレビュー
読者に表示される見た目

表示設定

文字サイズ
100%
背景色
縦書き表示
リッチモード
目次
読み込み中…

キーワードを入力して作品を探しましょう

アクセス解析
アクセス解析データは 5分おき に自動更新されます
読み込み中…
ランクイン記録
通知
通知はありません
地形ブラシ
25
スタンプ
ツール
装飾
表示
100%

世界地図

100%

REACTION SCORE

反応スコアの内訳