芦名 雅 / 第5話

五日目

火は、目覚めた日と変わらず燃え続けている。 火の番をしていなくても、朝になれば暖炉の火は変わらず燃えている。 だが、消える気配がないというべきなのだろうか。 不気味ではある。 それでも、この炎だけが私の命をつないでくれていることに変わりはない。 あまり深く考えないことにする。 朝食を作ろうと倉庫へ向かった。 そこで私は言葉を失った。 食料がなくなっていた。 昨日まで山積みになっていた保存食が跡形もなく消えている。 一人なら百日ほどは困らないと思っていた量だった。 何度見直しても、倉庫は空だった。 残っていたのは昨日のうちに倉庫から出して台所へ置いていた分だけだった。 パンが少し。 干し肉が少し。 これでは数日ももたない。 誰かが持ち出したのだろうか。 そう思って山荘の中を確かめた。 初日に確認したすべての窓と扉は、変わらず内側から鍵が掛かっていた。 もちろん、床が濡れていたり、雪を踏んで外から入ったような形跡もない。 誰かが侵入した証拠は見つからなかった。 しかし、それを証明することもできない。 山荘を見回っていると、二階の一室に異常があった。 血だ。 部屋一面が血で汚されていた。 床も、壁も、寝台も、赤黒い血で染まっている。 死体と言えるようなものはなかった。 血だけが残されていた。 誰の血なのか分からない。 いつ付いたものなのかも分からない。 念のため自分の体も確かめてみた。 怪我はなかった。 今日は何度も山荘の中を歩き回った。 誰にも会わなかった。 食料も見つからなかった。 暖炉の火は変わらず燃え続けている。 外の吹雪も相変わらずだ。 昨日までと何も変わらないはずなのに、この山荘だけがまるで別の場所になってしまったように感じる。 今日は部屋にも鍵を掛けて眠ることにする。 明日も無事に朝を迎えることができることを願う。

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