芦名 雅 / 第6話

六日目

昨夜はほとんど眠れなかった。 少し眠っては目を覚まし、そのたびに部屋の鍵を確かめた。 幸い、朝は無事に迎えることができた。 暖炉の火は今日も変わらず燃え続けている。 外の吹雪も昨日と何一つ変わらない。 この山荘だけが、少しずつおかしくなっている。 残っていた食料で朝食を済ませた。 できるだけ少なく食べるようにした。 食料がなくなった理由は分からない。 誰かが持ち去ったのなら、残りも安全とは思えなかった。 念のため台所に置いていた食料を数えてみた。 昨日から減ってはいなかった。 少しだけ安心した。 そのあと、昨日血まみれになっていた部屋へ向かった。 昨日と変わっていなければいい。 そんな期待をしていた。 扉を開ける。 血はそのままだった。 乾いた様子もなく、昨日見たまま残っている。 死体はない。 昨日と何も変わらない。 そう思って部屋を出ようとした。 廊下へ出たところで違和感を覚えた。 向かいの部屋の扉が半開きになっている。 昨日は閉まっていたはずだ。 そう思いながら扉を開けた。 血だ。 また部屋一面が血で汚されていた。 昨日の部屋と同じだった。 床も。 壁も。 寝台も。 赤黒い血で染まっている。 私は言葉を失った。 昨日は一部屋だけだった。 今日は二部屋になっている。 念のため、自分の体をもう一度確かめた。 やはり怪我はない。 山荘の中を何度も歩き回った。 誰にも会わなかった。 外へも出てみた。 吹雪は相変わらずだった。 足跡も見当たらない。 誰かが来た証拠は見つからない。 それでも、この山荘には私以外の誰かがいる。 そんな気がしてならない。 暖炉の前へ戻ると、火は何事もなかったように燃えていた。 まるで、この山荘で起きていることなど最初から存在しないかのように。 今日は机を動かして部屋の扉の前に置いた。 鍵だけでは安心できない。 そんなことを書くことしか、今の私にはできない。

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