芦名 雅 / 第13話

十九日目

王都へ到着した。 私は拘束されたまま、ひと際大きな白い神殿のような建物へ連れて行かれた。 建物の奥へ案内されると、そこで勇者とともに旅をしたというエルフ様とお会いした。 耳が長く尖っていた。 村で話は聞いていたが、実際に目にするのは初めてだった。 私が知る物語に登場するエルフと、ほとんど同じ姿だった。 エルフ様は私を見るなり、拘束を解くよう周囲へ指示された。 兵士たちはすぐに縄をほどき、ようやく身体を自由に動かせるようになった。 その後、私をここまで連れてきた竜騎士がエルフ様のもとへ歩み寄り、何やら事情を説明しているようだった。 話の途中で何度も私へ視線が向けられていたことから、おそらく村で保護された経緯や、私が記憶を失っていることなどを伝えていたのだろう。 その後、エルフ様は私のもとへ歩み寄られた。 記憶を失った経緯や、村で目を覚ましてから今日までのことなど、いくつか質問を受けた。 私は覚えている限りのことを、一つずつありのまま答えた。 一通り話が終わると、今度は私にも話す機会が与えられた。 私は真っ先に勇者の日記について尋ねた。 すると、私が読んだものはあくまで複製品なのだと説明された。 勇者が日記を書いたのは、すでにはるか昔のことになる。 オリジナルの日記は長い年月の中で失われ、現在ではどこにも残っていないらしい。 今流通している完全複製版も、オリジナルを直接書き写したものではないという。 複製品を書き写し、その複製品をさらに書き写す。 そうして何度も複製を重ねながら、現在まで受け継がれてきたものらしい。 その過程のどこかで文字が変わってしまったのかもしれない。 何かの手違いで、本来とは違う文章になってしまった可能性もあると説明された。 もしオリジナルの日記が残っていれば、私が読んだ内容が本当に勇者の書いたものなのか確かめることもできたのだろう。 だが、それはもう叶わない。 少し残念だった。 何かの間違い。 本当にそうなのだろうか。 では、なぜ山荘のことが書かれていたのか。 勇者が生き残ったという山荘と、私が目を覚ましたあの山荘。 あれはまったく別の場所なのだろうか。 それとも、ただ同じ言葉が使われていただけなのだろうか。 考えても答えは出なかった。 それにしても、エルフ様にお会いしてから明らかに周囲の態度が変わった。 神殿の中であれば拘束されることはなく、自由に過ごしてよいと言われた。 もちろん王都の外へ出ることは許されていない。 夕方になると、小間使いと名乗る女性が部屋を訪ねてきた。 飛竜へ乗せられる際に没収された、この日記を返してくれた。 中を確認すると、書き記した内容はそのまま残っていた。 今日はおとなしく、割り当てられた部屋でこの日記を書くことにする。 王都へ来ても、私が何者なのかはまだ分からない。

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