清涼院良水(@kuutei) / 第37話

第25話 使ってみる

翌日。 体育館の一角で、奏多と栞は向かい合っていた。 「で、考えてきた?」 栞に聞かれ、奏多はスマフォの画面を開く。 「一応……」 昨日渡されたスペシャルの一覧。 何度か見返した跡でもあるように、奏多は迷わず大剣の項目を開いた。 「最初に俺が街のモニターで見かけた時に、黒瀬先輩が使ってたのが……破砕撃、でしたっけ」 「うん」 「あとは……一閃と、超重撃」 三つとも大剣のスペシャルだ。 「この辺、使ってみたいです」 「じゃ、やってみよっか」 栞がすぐに立ち上がる。 「まずは破砕撃から!」 「はい」 ゴーグルをつけ、奏多はグリップを握った。 大剣が生成される。 向かいでは栞も武器を構えている。 破砕撃。 昨日、説明を読んだ時には強そうに見えた。 相手の武器耐久を大きく削る。 単純で、分かりやすい。 奏多は大剣を構えた。 「いきます」 振る。 だが――。 何も起こらない。 「……あれ?」 奏多は大剣を止めた。 破砕撃のエフェクトは出ていない。 それなのに、表示された大剣の耐久はしっかり減っていた。 「減ってる……」 「失敗しても一回使ったことになるよ」 「うわ……」 あと二回。 奏多は大剣を構え直した。 さっきの振りを思い返す。 速ければいいわけじゃない。 大剣が最も威力を発揮する速度。 そこへ合わせる。 もう一度。 大剣が振り抜かれる。 今度は――乗った。 栞の武器と激突した瞬間、大きなエフェクトが弾けた。 「おおっ……!」 栞が一歩引く。 その手の武器には、はっきりと損耗が出ている。 奏多はすぐ自分の大剣も確認した。 こちらも傷んでいた。 「相手だけじゃないんだ……」 「でも、ちゃんと当たると強いでしょ?」 「うん……」 強い。 ただ、雑には使えない。 次は一閃。 再び大剣を構えた奏多に、栞が向き合う。 「これ、一回当てればいいんですよね」 「ガードされずにね」 「……ですよね」 奏多は大剣を振った。 速い。 大剣本来の威力が乗る速度を越えて、ブン、と振る。 栞がガードした。 「……。」 もう一度。 ブン。 また防がれる。 当たったところで大した威力にはならない。 普段なら、こんな振りを警戒する理由は薄い。 けれど今は違う。 これを一発通せば、一閃が使える。 だから栞は防ぐ。 「これも止めるのか……」 奏多が小さく呟く。 もう一度、大剣を動かす。 栞がそれを見る。 奏多は振る。 栞がガードへ動く。 その動きを見て、奏多は軌道をずらした。 ブンッ。 大剣の先が栞を捉える。 威力は小さい。 だが――。 「あ」 表示が変わった。 《一閃》 使用可能。 「出た!」 奏多はすぐに発動する。 構えた大剣が――走る。 自分で振った時とは明らかに違う。 一気に理想速度の斬撃が放たれる。 だが。 栞は横へ逃れていた。 空振り。 「速っ……!」 思わず声が出た。 それから、何もないところを振り抜いた大剣を見る。 「……これでも避けられるのか」 「出せたからって、当たるとは限らないからね」 「そりゃそうか……」 次は超重撃。 「これはジャストガード、ですよね」 「そう」 奏多は大剣を防御位置へ持っていく。 栞がブレードを構えた。 「いくよ」 「はい」 栞が踏み込む。 奏多はその攻撃に合わせてトリガーを引いた。 ――遅い。 ブレードがそのまま奏多を捉える。 「ぐっ!」 判定音。 奏多は思わず一歩下がった。 「惜しい!」 「普通にガードにもならないんだ……」 ジャストガードを狙わなければ、防げたかもしれない。 けれど、狙った。 だから食らった。 「もう一回お願いします」 「うん」 奏多は構え直した。 栞のブレードを見る。 動き出す。 まだ。 近づく。 ――今。 トリガー。 鋭いエフェクトとともに、栞のブレードが弾かれた。 「……!」 奏多の表示が変わる。 《超重撃》 「きた!」 すぐに発動。 大剣が強く光る。 ほんのわずかな溜め。 そして、振り下ろす。 その時にはもう、栞はそこにいなかった。 大剣が空を切る。 「……外した」 しかも振り終わった奏多は、すぐには動けない。 栞は少し離れたところからそれを見ていた。 「当たったらすごいけどね」 「当てるまでが大変だ……」 強い。 どれも、間違いなく強い。 でも、選べば強くなるわけじゃない。 奏多は一覧へ戻った。 「あと……」 指が止まる。 「ガトリングのクイックスピンってやつ」 「使ってみる?」 「はい」 大剣を収納。 ガトリングを生成する。 栞が距離を取った。 奏多は銃口を向ける。 クイックスピン。 発動した瞬間、ガトリングの回転が一気に上がった。 「!」 撃つ。 栞が横へ逃れる。 その先へ銃口を振る。 栞はさらに進路を変えた。 奏多も追う。 撃てる。 すぐ撃てる。 それだけで、相手の動きが変わる。 「これ……」 奏多はガトリングを構えたまま、栞を見た。 さっきまでの大剣とは、強さの形がまるで違う。 しばらく試したところで、栞が手を上げた。 「はい、そこまで!」 奏多もガトリングを下ろす。 「スペシャルって、強いけど……」 そこで言葉が止まった。 栞がにこっとする。 「じゃ、次いくよー」 「はい」 栞がニンジャを構えた。 「手裏剣流星群!」 「え」 栞の周囲に、大量の手裏剣が現れる。 「ちょ――」 少し離れたところ。 いつからかこちらを見ていた岡野が、わずかに俯いた。 「うぅ……」

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