清涼院良水(@kuutei) / 第38話

第26話 それなら!

「わわわえ、ちょ?!」 手裏剣が飛んでくる。 一度に五つ。 奏多が慌てて動く。 やり過ごしたと思ったところへ、次。 さらに次。 「ちょ、ちょっと待っ――」 もちろん、待ってはくれない。 五秒。 終わってしまえば短い。 だが、受ける側に回ると話が違った。 「はい、終わり!」 栞が手を止める。 周囲に浮かんでいた手裏剣が消えていく。 奏多は少し息を整えながら、その光景を見ていた。 「これは……発動させる前になんとかしたくなるね……」 「でしょ?」 「でも発動させないの難しいんじゃない……?」 「手裏剣乱舞の発動条件は二つあるよ」 栞が指を二本立てる。 「試合中にニンジャを合計一分使うことと、手裏剣を十回撃つこと」 「両方?」 「うん。両方」 「一分と、十回……」 奏多が少し考える。 「よし、結城くんニンジャ使ってみて!」 「え?」 「なるべく長く持たせてみよー!」 今度は奏多がニンジャ。 向かいに立った栞が生成したのは、大剣だった。 「……大剣相手か」 「いくよー」 奏多は距離を取った。 手裏剣を撃つ。 栞は大剣で対応しながら前へ出る。 もう一度。 奏多はさらに下がる。 手裏剣を撃つ。 栞は追う。 距離を取る。 撃つ。 近づかせない。 そのつもりでも、少しずつ栞との距離が縮まっていく。 大剣が届く。 奏多は刀で受けた。 激突。 「うわっ!」 一度ぶつかっただけで、ニンジャの耐久が大きく削れた。 奏多は慌てて離れる。 これはまずい。 もう一度まともにぶつかれば、持たない。 手裏剣を撃つ。 距離を取る。 栞が詰める。 また撃つ。 「これ、維持するの難しいねー!」 そこで奏多は、ふと思い出した。 森下との練習試合。 岡野が使っていたニンジャ。 そして――スキル。 あの時、岡野はスキルを全部、ニンジャを維持するために使っていた。 「岡野くんのあれ……」 栞の大剣から逃れながら、さらに距離を取る。 「そういうことだったんだ」 ニンジャを使い続ける。 手裏剣を撃つ。 その二つを積み重ねて、手裏剣乱舞まで持っていく。 でも、相手だってそれを待ってはくれない。 栞が距離を詰めてくる。 奏多は二度目の接触を避けようと動いた。 栞の大剣が振られる。 その振りは、むやみに速くない。 それでも、奏多には遅く見えなかった。 逃げる先へ、大剣が来る。 きれいに、理想速度へ乗る。 《破砕撃》 「……!」 激突。 ニンジャが砕け散った。 「あ……」 光の破片が、奏多の手元から消えていく。 栞は大剣を下ろした。 「はい、ここまで」 奏多は空になった手元を見る。 破砕撃。 昨日、自分でも使った。 一度は失敗した。 栞は今、それを攻防の中できっちり当てた。 「そっか……」 奏多が顔を上げる。 「使われる前に、武器を壊すのか」 「そういうのもあり」 栞が笑った。 強いものをどう使うか。 それだけじゃない。 相手の強いものを、どう使わせないか。 それからも練習は続いた。 一つ試して、止める。 武器を変えて、また試す。 勝ち負けを決めるための試合ではない。 奏多が大剣を構えた。 向かいの栞はブレード。 振る。 栞が受ける。 今度は栞から。 奏多が対応する。 何度か打ち合ううちに、大剣には少しずつ傷が増えていった。 奏多はその大剣を通常収納する。 別の武器へ。 そこから、さらに攻防が続いた。 「結城くん」 「ん?」 「リサイクルも入れてる?」 「うん、今回試そうと思って」 奏多はスキルを選ぶ。 発動。 光が手元に集まり、形を作っていく。 少し待って――。 大剣が戻った。 「……なるほど。」 傷が残っている。 さっきまで使っていた大剣。 そのままだ。 「耐久削れたままだ……」 「収納した時の状態で戻ってくるからね」 奏多は大剣を眺める。 新品になるわけじゃない。 「なるほど……」 「でも、使い方次第だよ」 「?」 「会長がよく使う手なの」 「生徒会長の?」 「うん」 奏多はもう一度、大剣を見る。 ボロボロの武器を戻して、何がそんなに強いんだろう。 練習は続いた。 大剣を使う。 収納する。 別の武器を使う。 栞が攻める。 奏多が下がる。 その時だった。 栞のブレードを見て、奏多は思う。 ここ。 大剣なら。 武器を変えようとして――止まった。 残りのエネルギー。 「……大剣生成するには、エネルギー足りないな……」 その表示を見た瞬間。 一つ、古い光景が頭をよぎった。 初めて出た大会。 初めての試合。 欲しい武器があった。 でも、出せなかった。 エネルギーが足りなかった。 そして――負けた。 「結城くん!」 栞の声で戻る。 ブレードが来る。 奏多は下がった。 考える。 装填。 それならエネルギーを戻せる。 でも――。 装填。 武器切り替え。 それから、大剣を生成。 栞はもう目の前にいる。 「……間に合わない」 さらに下がる。 ブレードが追ってくる。 急速充電。 あれを積んで使っていてもよかった。 でも、今はない。 今あるのは――。 奏多の指が動く。 リサイクル。 その次。 リペア。 「……!」 それなら! 中央リングを回す。 選択。 押す。 《リサイクル》 光が奏多の手元に集まり始める。 まだ、大剣はない。 栞のブレードが迫る。 「……っ」 奏多は一歩逃げる。 光が伸びる。 少しずつ、大剣の形を作っていく。 ほんの〇・六秒ほど。 それでも、追われている今は長い。 栞がもう一歩来る。 傷だらけの刀身が完成する。 大剣。 さっき収納した、ボロボロのままの大剣。 生成が終わる。 奏多はすぐに振った。 栞もブレードを構える。 受ける。 大剣が迫る。 その最中。 奏多の指はもう中央リングへ動いていた。 回す。 選ぶ。 押す。 《リペア》 振られている大剣に、修復のエフェクトが走った。 耐久が戻る。 そのまま――。 大剣とブレードが激突した。 一瞬、拮抗する。 そして。 栞のブレードに亀裂が走った。 「あ」 砕ける。 光の破片になって、ブレードが消えた。 奏多は傷の残った大剣を握ったまま、栞を見る。 武器がない。 今なら――。 大チャンスだ。 栞も、自分の空になった手元を見る。 すぐに奏多へ顔を上げた。 「すごい! 今の感じいいね!」 奏多は、手元の大剣を見る。 傷だらけではある。 それでも、まだ手の中にある。 「……うん」 少しだけ、口元が緩んだ。

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