石鬼 輪たつ🦒 / 第1話

プロローグ 炎の中

 |屋根付き商店街《アーケードがい》。  日本人にとっては心象風景の一つであり、地方都市や田舎《いなか》に出かけるとき、きっと誰もが安らぎを求めてそれを探《さが》し歩くだろう。  その商店街が燃《も》えている。  文字通りの、炎上。    屋根は天面から骨組《ほねぐ》みまで炎《ほのお》に包まれ、何|軒《けん》かの商店も火の海だ。  肉屋がステーキハウスになりつつある。  人々はすでに避難《ひなん》を終えていた。    ただし、この場に因縁《いんねん》ある※※3組※※が残った。    炎上を引き起こした放火魔《ほうかま》の巨大なヒツジ。  ヒツジを捕《つか》まえにやって来た真っ赤な肌《はだ》の少女。  そして商店街の平和を守るヒーローと、その助手。    一見、荒唐無稽《こうとうむけい》な組み合わせだ。  二度見しても荒唐無稽だろうか。  ただ確かに、この燃える商店街が彼らを結びつけていた。 「――『次は殺す』、って前に言ったよな。それでも来たってのか、《《アルウゥス》》?」 「うん。これがボクの使命だから!」  覆面《ふくめん》のご当地ヒーローが訊《たず》ね、真っ赤な肌の少女が答える。  彼女の足元に、巨大ヒツジがひざまずいている。 「だよな。なら、お前も駆除《くじょ》するまでだ……」  言葉に続いて、ご当地ヒーローは右腕を水平に掲《かか》げる。  腕《うで》がグネグネと変形し、あらわれた《《肉色》》の大剣が、少女へと向く。 「覚悟しろ、侵略《しんりゃく》者どもッ!」  開戦の合図《あいず》。  ご当地ヒーローは大剣を構えると、少女に斬りかかった。  火《ひ》の粉《こ》が舞う。  炎の中、熱波が皮ふを焼き、煤《すす》が肺腑《はいふ》を汚す。  守りたいものがある、その通り。  自身のやるべきことだから、そうに違いない。    けれど! 動機など後付《あとづ》けだ。  彼らは戦わずにはいられない。  戦いのために生まれた。戦いは本能である。  ――そういう生《い》き物《もの》として産《う》まれた。  この事実がひたすらに彼らを戦いへと駆り立て、戦士たらしめるのだ。 『性癖全開《せいへきぜんかい》!キャンティマロン』

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