白津詠仁 / 第1話

第1話 誰じゃ!?忍者!宝石のヒーロー!!

 ネオンライトの輝く夜の都心。日中の自然光とは違う暖かさを持った光は、街を行き交う人々を、どこか冷たさを混ぜて光らせる。  とある繁華街。仕事帰りの人々で溢れかえるこの場所では、色々な声が聞こえる。喜怒哀楽、様々な感情が混じっている。  一見平和に見える。だが、魔の手はいつも潜んでいる。影のように……。  ――2026年5月9日夜。とある路地裏にて――  一人の女性が走っていた。スーツを着た、いかにもOLといったその人は、人混みを掻き分けていた。通行人にはその姿が、“何か”に追われているかのように見えていた。  路地裏に逃げ込み、やっと一息つけた。だが、追っている者は人間ではない。化け物だ。最近報道され始めた、未だ謎の存在。一説には、巷で話題の連続失踪事件に関係があるとされているが、陰謀めいている仮説のため、信じる者はほぼいない。  近くにあった捨てられていたブラウン管テレビから、音がした。追われている時も鳴っていた不気味な音。彼女は恐る恐る近づく。ゆっくりと、ゆっくりと、足を一歩ずつ近づける。  その時だった。画面に化け物のシルエットが見え、テレビの中から出てきた。  その姿は狼みたいだった。鋭い爪、そして牙。彼女は覚悟した。このまま死ぬのだと。そう思っていた時、突如謎の光弾が化け物の顔を直撃した。  空から人が降りてきた。正確にはコスチュームを纏っていた。変身ヒーローのような姿だ。 「大丈夫か?」そう言って彼は一瞬振り向いた。  よく見えなかったが、顔は大きな目が特徴で、上半身の一部が光に照らされてキラキラと、宝石の様に輝いていた。手にはクナイを持っていた。そう、忍者のように。  彼は化け物に向かってこう呟いた。 「俺を本気に、させるなよ……」  その後、さっき化け物が現れたブラウン管テレビにクナイを向ける。すると、画面が光った。    砂嵐だ。電源は入るはずがないが、確かに光っていた  彼が化け物の胴体を掴み、テレビの中に入れる。すかさず彼もその中に入っていった。  彼らの姿がテレビで途切れ途切れに見える。その中で確かに彼らは戦っていた。  彼女は何がどうなっているか分からなかった。その直後、 「大丈夫ですか?」と一人の女性が駆けつけた。 「はい……」と彼女は答え、 「何が、どうなってるのか……」と独り言の様に呟く。 「ジュエルミン」女性が答える。 「え?」 「誰かの居場所を守る、ヒーローです」  う〜ん、やっぱり“ヒーロー”はカッコいいなー!  えっ?俺が誰かって?まあそんなことはどうでもいいんだよ。    ところで、君は“ヒーロー”と言われたらどんなイメージが湧いてくる?何でもできる超人?蜘蛛みたいに自由に駆け回ったり、巨大な怪物から人々を護ったり、それとも悲しい過去を持った改造人間とか、色とりどりな五人組?もしくはロボット?  どんなヒーローもその世界になくてはならないよね。でも中には、スーパーパワーを持った人だけがヒーローとは限らないと思う人もいるかもね。親とか有名人とか偉人とかね。  ところで、さっき君が見ていたのは、誰か気になるよね?  彼……いや、彼らは〈ジュエルミン〉。 〈シャイ忍グヒーロージュエルミン〉。    名前から分かるかもしれないけど、忍者だ。  早速だけど、ちょっとだけでも彼らについて見てみないかい?    俺が語るよりも実際にその活躍を見てくれたら分かりやすいだろ?百聞は一見にしかずだ。  じゃ、これから始まる物語を見てみるとしよう。    そういえばさっき、俺が誰か気になってたよね?まあ、今は案内人と思ってもらっていいよ。  ――2026年5月10日早朝。マンションの一室にて―― 「おーい、もう朝だぞ」そう言いながら彼、樹心良司は寝ている私の体を揺する。 「う〜ん……おはよう」私は目をゆっくりと開ける。  昨日は大変だった。夜にあんな事が起こると疲れ果ててしまう。 「随分とお眠りだったな。服も着替えずに寝るとは、怠惰にも程がある」 「だって仕方ないでしょ! あの後、介抱するのに一苦労だったんだから」朝からイライラしたくはないが、こんなに言われるとなんかムカついてきた。   「まあまあ、兄者さんも真白さんも頑張ったんですから」クナイが宙を浮きながら喋る。 「影月、お前ってやつはいつもお膳立てが上手だな」良司は普段通りにからかう。〈影月〉とはクナイの名前だ。 「別にそんなつもりはないですよ。むしろ、そういう態度でいるのはどうかと思いますよ」 「もう! 二人とも朝から喧嘩しないでよ! もう此処から出しましょうか〜!」 「ごめんなさい」「すまん」  二人は根が良いので、聞き分けが良い……かも?  私は黒崎真白くろさきましろ。約3週間前に会社を辞め、今はフリーでライターとして働きつつ、ちょっとした探偵的なこともしている。あとは、漫画家を目指していて、時々SNSでちょっとした四コマ漫画を投稿している。仕事が忙しいので、長編の執筆にはまだ時間がかかりそうだ。  私にはルームメイトが居る。樹心良司じゅしんりょうじ。そして、クナイの影月。  良司は多少訳ありで、初めて会った時は、それはそれは驚いた。  彼は今ではヒーローだが、昔はヒール、悪人だった。  だけど、私と影月との出会いで多少は変わった。変身ヒーローだけに……。  影月は別世界からやってきたそうで、立派なヒーローになるのを目標に今まで色々な世界のヒーローを、"とある文書"を通して見てきたらしい。  普段は人目が付きにくいところ以外では透明ではあるが、いざという時にはその力を発揮する。    二人は今では私の右腕的な存在として、事あるごとに手助けしてくれる。  朝食は決まってトーストとヨーグルト。たまに白米を食べるくらいだ。 「食べないの?」良司に話しかける。 「何度も言わせるな。俺は飯を食わずとも生きられる。そういう体だからな」  彼は人間ではない。正確には、半分人間、半分怪物といったところだろう。 「でもさぁ、食べても食べなくても生きられるって言っても、食べた方が得というかさ、幸せなんじゃない? そっちの方が」 「知るか」そっけない態度を取られた。  朝食と身支度を済ませた私達は、取材先に出向く。愛車のカ◯ーラに乗り、一日が始まる。  ――同日午前10時頃、とある民家にて―― 「娘さんが昨日から帰ってこないと……」  この日の取材は中学生の娘さんこと、美咲ちゃんの行方が分からなくなった一家で行われた。父親は仕事だそうで、家には母親しかいなかった。 「はい、電話も何回かかけてはみたのですが、繋がらなくて……警察にも通報したんですけど……」声から不安さが伝わってきた。  話は三十分程で終わった。帰り際、母親は 「ありがとうございました。」  深々とお辞儀して言った。  ――同日午前11時頃。海が近いとあるコンビニの駐車場にて―― 「今日も疲れるね」私はふと良司に聞いてみた。 「別に。お前のお荷物なんだから何もしなくていいからな」 「何それ。皮肉みたいな?」いつもこういう風に話しかけてくるので、もう慣れてしまったが、耐性のない人は苦労するだろう。 「事実……らしい」彼がそう言うと、 「僕も一応お荷物なんですけど……」と影月が会話に入ろうと話しかける。 「そこを張り合う必要は無いだろ」良司のツッコミが始まる。  その時だった。良司は何かに気づいた様な様子だった。  「どうやら近くにいる……らしい」  良司は耳を澄ませ、音を聞こうとする。彼には、同族から発せられる謎の音が聞こえる。私達人間も聞こえる時があるが、滅多にない。 「おい、行くぞ。案内する。」この合図で私達の第二の仕事が始まる。  ――同日午前11時26分頃とある海にて――  彼を頼りに海に向かった。夏では無いので人が少ない。ざっと10人ぐらいだろう。  こういった人の少ない所に、奴らは現れやすい。  辺りを見ていると、影月は見覚えのある姿を見たようで、 「あ! あの人!」  探していた美咲ちゃんだった。私達は砂が入りそうなくらい急いで彼女の元へ向かった。 「美咲ちゃん! はぁ……はぁ……美咲ちゃんだよね?」 「美咲?」彼女は一瞬首を傾げた。 「ああ、この人間の名前か」 「やっぱりな。あの小娘、〈カゲムシャー〉に完全に乗っ取られてる」  彼は薄々気づいていたのかもしれない。彼女は〈カゲムシャー〉と呼ばれる怪物に乗っ取られていた。 「……何故わかる?ハッ!さてはお前、噂の〈ジュエルミン〉か?」 「それはどうかな」彼はそう言うと、影月は透明化を解き、彼の右腕に掴まれた。  そして影月を顔の左側に近づけて呟く。 「受信変装……」  すると、彼の周りに白黒の砂塵の様なものが舞い、それを切り裂く様に影月を振るとあっという間に姿が変わった。いわゆる、変身だ。  〈ジュエルミン〉。それが彼らのもう一つの姿だ。  相手もすかさず変身する。彼らのようなヒロイックな姿とは異なり、怪人と言っても差し支えない。この個体は鳥のような姿だった。その姿を見た人々は一目散に逃げ出した。 「兄者さん! 今日は名乗っていいで……」 「行くぞ」影月の話を遮り敵に向かって歩く。敵は彼らの元に駆け寄る。近くまで来た時にはジュエルミンは相手にズドッと足蹴りをお見舞いし、相手は体勢を崩す。 「真白さん頼みます!」影月に言われて私はすぐにタブレット端末を取り出す。 「させるか!」鳥のように翼を広げ、風を起こす。砂浜だったこともあり、目に砂が入りそうになる。敵がそのまま逃げようと羽ばたいていく。 「空までは追いつけないだろ?」  相手の挑発に応え、影月のもう一つの形態、ガンモードに変形させる。  空中に4発の光弾を放つ。相手はひらりひらりと躱す。 「だったら……」クナイモードに戻し、ボタンを押す。 「受信忍法! 追尾手裏剣!」  影月をカセットテープの見た目をしたバックルを付けたベルトの左側にあるホルダーに納刀し、右手を左手で擦る、手裏剣の打ち方をする。  八つの手裏剣が発射され、名の通りに相手を追う。  敵に見事に命中し、羽にダメージを負った敵は波打ち際に落ちた。 「〈モースモノゾーン〉展開!」私のタブレット端末に向けて特殊な光線を放つと、タブレットに砂嵐が映る。相手をそこに目掛けて蹴り飛ばすと、画面に吸い込まれ、ジュエルミンもすかさず入る。    その姿を物陰から見つめる者がいた。    5秒後。ジュエルミンが美咲ちゃんをお嬢様抱っこしたまま画面から出てきた。どうやら敵を倒したようだ。美咲ちゃんが何事もなく戻ったということは大丈夫だったということを表す。どういうことかと言うと、カゲムシャーに憑依された人は二十四時間以内に戻さないと永遠に意識を乗っ取られるからだ。  閑話休題。この間、何が起こったのか。それはこの〈モースモノゾーン〉に秘密がある。  この空間はジュエルミンとカゲムシャーが戦闘をするのにもってこいの空間。地形や建物は敵によって変わる。時間の流れも違う。これも敵によって変わるようだが、こちらよりも流れは速いのは確かだ。  元々この空間は良司が敵だった時、〈シャイニングヒーロー〉が活躍していた時から使われていた。  では、これらのことを踏まえた上で、彼らの戦闘を見てみよう。  ――モースモノゾーンにて――  今回のフィールドはメルヘンチックな城の中。  シャンデリアや広い通路、何個もある部屋の扉など、ディ◯ニー映画に出てきそうな雰囲気だった。  敵はここから抜け出そうとして、正面に扉があるのを発見した。  だが、ジュエルミンは狙った獲物は逃さない。  クナイの斬撃で天井を攻撃すると、天井の破片は宝石のようにキラキラとした岩となり、扉の前は宝石の瓦礫で覆われた。  逃げ場を失った敵は穴の開いた天井を見るが、翼は傷を負い、飛べない。もうどうしようもなくなった。 「とどめだ」影月は呟き、バックルから〈シャイニンディスク〉と呼ばれるアイテムを取り出し、影月にセットする。  このディスクはシャイニングヒーローが使っていたもので、物によって能力が異なる。一度使うと力を失う。  今回はフレアのディスクだ。 「焼き鳥にしてやりましょう!」影月が盛り上がり鼓舞する。そして、  “ダイヤモンドカット! 炎々熱刀えんえんねっとう!”  炎を纏うクナイの斬撃が相手に命中し、敵は倒れる。その直後、美咲ちゃんが敵と分離し、鳥のカゲムシャーはそのまま消滅した。  城はボロボロになっていた。さっきの火が燃え移り、火災が起きていた。 「ここは……」美咲ちゃんは目を開けると、周りを見て困惑し、戸惑っていた。 「話は後だ」良司はそう言うと変身を解き、彼女を抱えた。その姿はさながら王子様のようだ。  そして、二人は現実世界に帰ってきた。  ――同日午後0時頃。とある海にて―― 「美咲ちゃん……だよね。親御さんが心配してたよ。あっ、自己紹介がまだだったね。私は黒崎真白。あっちのお兄さんは樹心良司くん」  美咲ちゃんはずっと困惑していた。目の前が海だし、近くに知らない人が二人もいるのだから。 「どうも……どうやら心配かけてしまったみたいですね。すいませんでした。」 「いいよ、気にしないで。たまたまここにいただけ……だからさ。」 「なんか間があった気がするんですが」  君は怪人に乗っ取られただの、ヒーローが助けてくれただのと言うと絶対に信じてくれないので、言葉を濁そうと必死だったが、かえってそれが怪しさを出してしまった。 「あーうん……気にしないで。それよりお家に帰ろ」 「……いやです」  耳を疑った。そんな言葉が出てくるとは思っていなかった。 「どうして?」 「親なんて、どうせ私なんてどうでもいいって思ってますよ」 「なんでそう思うの?」 「……私、寂しくて、一人が嫌で……でも誰とも関わりたくなくて。それで、それで……」  美咲ちゃんは涙を浮かべてしまう。溢れ出たものを抑えきれなくなったように。 「美咲ちゃん。よく聞いて」私は励まそうとした。 「お母さんは貴方がいなくなって、とても心配してた。貴方の帰りを待っててくれてたんだよ。そんなのただの思い込みだよ。確かに、一人になるのは辛いよ。そう思うともっと辛い。でもね、貴方には居場所があるんだよ。おかえりって言ってくれる居場所が」 「お母さん……ううっ……」   その後は母親のもとに帰してあげ、後のことは警察に任せた。  ――同日午後2時頃。車内にて―― 「見つかってよかったよ」 「そうですね」  私と影月は談笑していた。良司はずっと景色を見ていた。 「良司くんもさ、ヒーローが足についたんじゃない?」 「好きでこんな事してるわけじゃない。それに、ヒーローだとは思っていない。」 「素直じゃないですねえ、兄者さん」 「はぁ……言っておくが、お前に渋々付き合ってやってるだけだ。」 「そんなこと言って〜」影月はおちょくるように言うが、 「そんなことない。世・の・た・め・、・人・の・た・め・。だろ」相変わらず冷たい。  こんなふうに私達は、日々を過ごしている。辛いこともあるけど、少なくともこの仕事にやりがいはある。これからどうなるか分からないけど、やるしかない。これは、私達にしかできないことだから。  ――日時不明。とある場所にて―― 「また一体やられたみたいじゃない。これ以上倒されたら、もうおしまいなんじゃないの?」  お姉さんと言って差し支えない容貌の女性が問いかける。 「姉貴。そんときはそんときだ。俺がぶっ潰す。この力の限りなぁ!」ガラの悪い筋肉質な男が言う。 「“ガベルお兄様”。口が悪いですよ。」小柄な少女が言う。 「おお、すまない“ドキューン”」 「そんな心配しなくても、あの“博士ちゃん”には、なんか策でもあるんじゃない?知らんけど」  今度は別の男が話に入る。 「そうね。私達、〈ネオカゲムシャー〉の目的はただ一つ。“あのお方”を呼び起こすこと……」  そう言って“姉貴”は不適な笑みを浮かべる。  いや〜どうだった?ジュエルミンの華麗なる活躍は!  なんかさ、最後の人達……怖そうだよね。なんか色々言ってたし。これからに注目だね。  ところで、君達はどうやって良司と真白が知り合ったか、そしてジュエルミンの本当の始まりを知りたくない?  知らなくてもいい人もいるかもね。でもその分知りたい人もいると思う。  じゃあ次からはその辺りの話を見ていこう。  というわけで次回、シャイ忍グヒーロージュエルミン!『出会い、戦い、始まりの話!』に御期待ください。  そんじゃ、またね〜。

運営おすすめ

週間ランキング

全ランキング

反応スコアランキング

もっと見る

PV・ブックマークランキング

もっと見る

更新された連載作品

すべて見る
読み込み中…

新着短編

すべて見る
読み込み中…

作品一覧

読み込み中…

作品ダッシュボード

作品全体の公開状況と、読者からの反応をひと目で確認できます。

作品パフォーマンス

選択期間のPVが多い順

上位5作品
ライブラリ

作品の公開状況と構成

最近の更新

最後に編集した作品

要チェック

公開前に確認したい項目

プレビュー
読者に表示される見た目

表示設定

文字サイズ
100%
背景色
縦書き表示
リッチモード
目次
読み込み中…

キーワードを入力して作品を探しましょう

アクセス解析
アクセス解析データは 5分おき に自動更新されます
読み込み中…
ランクイン記録
通知
通知はありません
地形ブラシ
25
スタンプ
ツール
装飾
表示
100%

世界地図

100%

REACTION SCORE

反応スコアの内訳