白津詠仁 / 第3話

第3話 奪回!再会!世のため、人のため。

 俺は変身した。懐かしさと、新しい感覚の両方が押し寄せる。 「何!?」相手は困惑した。それと同時に果敢に攻めてきた。  俺はギリギリまで向かって来た所で回し蹴りを当てる。相手がゴロゴロと回りながら倒れ込む。  相手の下まで向かう最中、 「あの!」とあのクナイ野郎が静止しようとした。 「せっかくなので名乗っていいですか!」  呆れた。 「隙を見せるのが一番嫌いだ」 「ええ......。ヒーローの醍醐味なのにぃ」 「いいから俺に合わせろ」    ふと足元を見るとスマホが落ちていた。ここで戦闘すると、周りにも被害が広がってしまう恐れがある。それはすなわち、俺の美学に反することを意味する。  できるのか?ふとクナイを見た。自信はないが、一か八かやってみることにした。 「モースモノゾーン......」そういって剣先をスマホに向ける。すると、先から光線が出た。 「ええええええええ! 何それ!」あいつは驚いていた。このシステムを知らないようだ。これは俺やシャイニングヒーローに使えるシステム。あいつはどうやらヒーローどもの装備ではないことを悟った。  敵が起き上がり、再び攻撃を入れようとこちらに向かってくるが、俺には無意味だ。  サッカーゴールにシュートするかのようにあの画面目掛けて敵を蹴り、見事に引きずり込むことに成功した。  すかさず俺も画面に入る。 「え? うわぁぁぁぁぁぁぁ!」  五月蠅い......。  ――モースモノゾーンにて――  着いた先の目の前には神社があった。大きなしめ縄が特徴的であった。空は所々曇っていた。  どうやら一部の力は残っていたらしい。  これ以上動かれては困るので、周囲の木を壊す。すると、それは宝石のような破片となり、散らばった。  (これがこいつの力なのか……)  俺は驚いた。  現実ではあり得ないことも、この世界ではあり得る。だが、想定外だった。  相手は破片が体の彼方此方に当たってダメージを受ける。 「お前はいったい――うっ!」  突然相手がひるんだ。 「この女、抵抗してるのか!?」  よく分からないが、好機だ。  俺は相手の首を掴む。そしてパンチを数発、それから蹴りも何発か入れる。  それそろ潮時だ。 「ふわぁぁぁ〜目が回るぅぅ〜」クナイが酔いから醒めた。 「おい。仕留めるぞ」 「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。ここはどこなんです?」 「話は後だ」 「分かりました!」  必殺技を決めようとするが、同じ様に輪っかの部分を引っ張る。今度は感覚で三回も引っ張る。  すると、剣先に砂嵐が集中した。俺は相手に振りかざす。十字の波動斬が相手にクリティカルヒットした。  相手は取り憑いた人間から離れ、消滅しかけていた。  相手の方に駆け寄り、問い詰める。 「シャイニングヒーローはどうした」 「それを知ってどうする」 「俺はあいつ等を全て倒す。それが俺の生きる意味だからだ」 「ふっ......」  相手が嘲るように笑う。 「何が可笑しい?」 「お前、裏切られたな」 「何?」 「いいか、これだけは言っておこう。今の俺たちのボスは――“シャイニングヒーロー”だ」  その言葉に衝撃を受けた。あいつらが、カゲムシャーを?  言い終わると消滅した。  動揺を隠せないが、俺はこの空間を離れた。人間を見殺しにする訳にもいかないので、抱きかかえた。  ――同日午後2時頃。とある空き地にて――  (ううん……ここは?)  私は目を覚ました。目の前には見知らぬ人の顔があった。    それに驚き、咄嗟に体を起こす。  相手の顎に頭が当たり、「痛っ!」と言う声が聞こえた。  どうやら膝枕されていたようだった。  意識を失ってたから、介抱してくれたのかもしれない。 「何すんだよ」 「ああ! ごめんなさい!」 「はぁ……気にするな」  意識が安定してきたところで、大切な事を思い出した。 「あっ! あの、クナイみたいなのを知りませんか? その……なんというか……あのぅ……」 「これのことか」  そう言うと、彼は手に持っていた影月を見せた。 「真白さん! よかった〜無事で」 「そっちも大丈夫そうだね」 「なあ、これはなんなんだ」  その人は問いかけた。 「それは、知人から貰ったんですよ! なんか……最新のAIロボット? って言われて……」  すると、私の目をじっと見つめてきた。顔がそこそこいいので、見つめられると少し照れてしまう自分がいた。よく見ると、何処かで見たことがあるようにも見えた。 「嘘だな」 「えっ」 「目を見れば分かる……らしい」 「もういい、これ以上聞いても話にならん」  彼は呆れてその場を去ろうとした。 「あの! お名前聞いてもいいですか! お礼したくて」と影月が言った。 「名乗る程の者では無い」 「じゃあ僕が名乗ります!」  影月は意気揚々と口を開く。 「僕は影月と申します。僕はいつか、ヒーローになるために、様々な世界のヒーローを研究している者です! よろしくお願いします!」 「ヒーローだと」 「お前はシャイニングヒーローを知ってるのか?」 「え? なんです、それ?」 「私も知らない。なんですかそれ?」 「なんだと」  ――魂魄の脳内にて――  俺は俄然とした。この発言から、この世界には、シャイニングヒーローが存在しないのか?だとすると、俺はあの時に死に、異世界にでも飛んだのか?異世界転生は”あいつ”から聞いたことがある。  しかし、なぜカゲムシャーが存在する?疑問を巡らせるが、どうにもこうにも答えが見つからない。 「もういい。帰る」  これ以上聞いたところでどうにもならない。諦めた。  そうして俺はこの場を去った。だが、行く当ては無い。ただ彷徨うだけだ。  ――同日午後9時頃。とあるマンションの一室にて―― 「今日は大変でしたね。」  影月はどこか疲れているようだった。 「ほんと、なんか変な怪物が出る夢を見たと思ったら、知らない人に膝枕されてたし」 「いやそれ夢じゃないですよ」  (えっ……どういうこと?)  あれは夢じゃないってことかもしれない。 「いやいや、そんなはずは……」 「本当ですよ! だって、この目で見たんです! それに、あの男の人、僕を使って変身しましたもん!」 「えっ――」  影月が嘘をついているようには見えなかった。 「たしか、あの人はあの怪物をカゲムシャー? って呼んでました。」 「カゲムシャー?」  ありえない。こんな事が現実に起こるなんて。 「ちょっと疲れてるんだよ。今日はもう寝よ」  そう言ってさっさと済ませることは済ませて眠りに就いた。  寝る前にふと思ったことがあった。あの時のことは夢でも幻でもなかったんじゃないかって。  意識を失っていても、かすかに感覚があった。殴られたり、蹴られたり、挙句の果てには切られたりされていた気がする。  それにあの人。何処かで見たことがあるような気がした。    そんなに考えていてたら埒が明かないので、もう眠りにつくことにした。  ――2026年3月24日午後7時頃。真白の住むマンションにて――  影月くんと会ってから一週間が経った。 「真白さん! 水やり終わりました!」 「ご苦労さん」  彼には雑用を任せてる。できそうなことだけしかやらせていないけれど、頑張ってもらってる。 「いつもありがと」 「いえいえ、ここに住まわせてもらってる以上、これくらいどうってことないですよ。働かざる者食うべからず!」  本当に明るくてよくできた人だなあと感心する。いや、人では無いか……。  すると、一通のメールが届いた。 『ねぇ、明日って空いてる? どっかでお茶しない?』  静からだった。明日は特に何もない日なので、せっかくだし行ってみることにした。  私は直様はいと二つ返事で了承した。  ――翌日午前11時頃。とある公園にて――  俺は呆然としていた……。あれからシャイニングヒーローの在処を調べようと街中を調べ上げた。    しかし、痕跡は一つもなかった。何人かに聞いても、知らないの一点張り。周りから変なやつだと思われた。    公園に立ち寄り、ベンチに座る。1週間ですっかりルーティン化してしまった。人通りも少ないので人目につきにくいから心地がいい。  ふと空を見上げる。雲はそこそこあるが、青空が広がっていた。この空はあいつらが守った空……ということにしておこう。そう思うと、この空は俺のような奴には似合わない。まるで自分がこの世にいてはならない様な気分にさせる。  不愉快だ。 「ちょっとそこいいかな」  一人の初老の男性が優しい口調で問いかけた。周りにはあと三席ほどベンチはあるのに、何故ここに座ろうとするのか分からなかったが、「ああ」と了承した。  自分でもどうして許したのか分からない。 「君、最近ここによく来るよね」 「え?」 「散歩していると、毎回君の姿を見るんだ。それで、なんだか不思議に思ってね。それだけだよ。気に障るようなら離れようかな」  何故か不快に思わなかった。むしろ心地よいほどだった。 「何とも思っていない……らしい」  自分でもよく分からない心情を表すのにはこれくらいでいいだろう。 「君は今、何をしてるの?」 「別に……」 「そうか。僕はね、誰かの役に立つことをしている。世のため、人のために何かしてあげるのが、僕の生きる意味なんじゃないかなって」  その言葉が不意に胸に突き刺さった。  あの時もそうだ。不良に絡まれた女を助けた時、感謝されて嬉しかった。  俺は、助けることに喜びを見出すのかもしれない……。  その時だった。音が聞こえた。カゲムシャーのものだった。  ――同日午後0時頃。とある喫茶店にて――  私は静と合流し、お茶をすることになった。  お昼時ということもあり、客席はほぼいっぱいだった。   「この前ぶりだね」 「そう、だね」 「なんかあったの? 乗り気じゃない気がするけど。もしかして、妹さんのこと?」  彼女には妹がいる。松葉風花。とてもよくできた人であるのだが、長い間行方が分からなくなっている。連続失踪事件とも関係があると思われてはいるが、真相は藪の中だ。 「今日はその件じゃなくてね……」 「最近、誰かにストーカーされてる気がしてて……」 「そうなの!?」  静は息を飲んで重い口を開いた。 「うん。誰かに見られてるっていうか……警察にも相談したんだけど、とにかく助けてほしいの」 「その人の特徴は? 知ってる範囲でいいけど――」  謎の人が現れた。    ――謎の場所にて――   一人の女性が声を荒げる。 「やられた!? ありえない......カゲムシャーに対抗できるのは私たちしかいないのよ!」 「まさか、生き残りか?」 「いや、それはないでしょ」 「まあまあ、そんなに慌てなくてもいいじゃない」 「良くない!」 「そんなことよりさ、生贄に丁度いい娘がいたんだよねぇ〜今日こそ連れてくるよ。じゃ」  ――同日午後1時頃。とある公園近くにて―― 「それじゃあ、僕はこれで失礼するよ」  そう言うと男性は腰を上げて歩き出した。  その少し後に彼は音がする方へと走り出した。 「迎えに来ましたよ。運命の人」 「貴方、誰ですか?」 「すみません。僕はあちらの彼女に用がありまして」 「ちょっと! やめてください!」 「はぁ……抵抗しますか。そうすると思って持ってきて正解だったね。」 「うっ……あぁっ!」 「静!」  その時だった。 「静さんから離れろ!」  影月くんが姿を現し、静の周りのモヤモヤを斬ろうとする。 「影月くん!? 危ない!」  彼の力だけでは対処できない。直様跳ね返されてしまった。 「くっ……なんてパワーだ」 「そろそろ潮時かな」  静は怪物へと変貌した。蟹のような大きなハサミが特徴的だった。そして彼についていった。  あの時の私と同じだった。あの時のことは夢じゃなかった。 「じゃ、またどこかで会おうね。サラバ〜イ〜」  もうどうしようもない。ただこの状況を受け入れるしかなかった。その時だった。 「真白さん……力を貸してください。あの時と同じ様に、助ける!」 「でも、どうやって……」 「僕を掴んで、受信変装って叫んでください!」  私は覚悟を決めた。 「じ、じゅ……受信、変装!」  すると、私の周りを金色の砂嵐が覆う。萌衣の時と似ていたので、咄嗟に振り払おうとする。  そして、私の身体に纏わり、見た目が変わった。金色のスーツに身を包んだ。ふと左腕を見る、顔を触る。少し違和感がある。 (何これ……でも、考えてる場合じゃない! 静を助ける……絶対に!)

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