綿ダッコ / 第44話

第43話 何してるの!?

 「え?」 「一馬様に向いてほしい気持ちもある。でも、ほっとけないの」  その表情は、いつもと違った。  激昂したときでも、嬉しいときでもない。  真剣な表情だった。 「…………承知致しました」 「今日は遅いし、明日の皆が寝静まってから探すわよ」  見つかったとして、その後どうなるか分からない。  けど、俺はどんなことがあっても舞子に仕えようと思えた。 ◇ ◇ ◇ ◇ 「(雅道、行くわよ)」  全員が寝静まった後、警備している巳之助さんの隙を突いて、町へ出た。  当たり前だが、周りを見渡しても、八子らしい人影はない。 「(雅道、とりあえず本殿の方に行きましょう)」  舞子は、笠を被っていた。  暗い色の布が垂れていて、近づかないと見えない。  本殿の近くの空に月が出ている。  …………あんなところに、装飾あったか?  本殿の屋根にポツリと影があった。  遠くてよく見えない。  けど、装飾にしては非対称だ。 「(舞子様、あんなところに装飾ってありましたっけ?)」 「(無いわよ。何かあるの?)」 「(はい、あれです)」 「(え?)」  今、影動かんかった?  というか、大きさ変わってね? 「(…………あれ、人影じゃないかしら?)」  うーん…………、確かに人影かも…………。  …………じゃなくて、人影!? 「(というか、あれ八子さんっぽいわよ!!雅道、早く!!)」  舞子は、急に走り出した。  笠が落ちたけど、拾っている暇はない。  本殿までは400メートルぐらい。  着くまでに落ちないでくれ…………。 「八子さん、何をしてるの!!」 「八子様、お止めください!!」  何とか落ちる前に着いた。    何度呼びかけても、八子は微動だにしない。  もはや、聞こえてないんじゃないか? 「八子さん…………!!」  ようやく動いたと思ったら、八子が落ちてきた。  舞子と俺でどうにか支えられた。  近くの階段に八子を降ろす。  宮廷で見た豪華な様子は一切ない。 「八子さん、なんであんなことしたのよ!!」  八子は舞子の言葉に耳を傾けようとしない。  まるで、抜け殻みたいだ。 「一馬様も心配されていたのよ!!」  まだ言葉を発そうとしない。  その代わり、フラフラと立った。  何をしようとしてんねんや…………? 「どうして、放置してくれないのよ!!」  舞子に近づいたと思ったら、舞子にビンタをした。  その後に、俺もビンタされた。  左頬がジンジン痛む。 「どうしたのよ、八子さん!!」 「舞子さんは何も分かってない!!雅道も!!」  分かってないって何が…………。 「お父様のやり方が気に入らないのよ!!」 「八子様、何があったのかお教えください!!」 「うるさい!!…………いずれ、分かるわよ」  いずれ分かるって…………。  そういうことじゃなくて…………。 「もう、放っといて」  八子は本殿の裏側に行こうとした。  足が動かない。 「八子さん、待って!!」 「うるっさいわね!!」  舞子は八子の腕を掴んだが、はたかれた。  なんなら、舞子のことを突き飛ばした。  ギリギリ、支えることはできた。 「八子さん!!」  八子は、本殿裏の暗闇に消えていった。
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