最強バトルの人 / 第7話

第5話 ガラスの女王

ゴ ゴ  ゴ ゴ ゴ  ゴ ゴ  ゴ ゴ 女と少女が。 お互いの眼を睨み合う。 シャオ「ハゲ……気をつけるアルよ。こいつ……、――強いアル!」 ドウ「――なっ!」     ドウ「俺はもうやられているんだが」 シャオ「そーだったアル」 先に仕掛けたのは、ジョアンナだった。 ジョアンナ「ムーブ……、オーバーーーッ! 『砕け散れ』ッ!!」 ドウ「気をつけろっ! そいつの能力は……!」 シャオ「!」 ドウの声で警戒し、シャオは一歩下がる。 相手が動いたそぶりはなかった。 しかし、前髪がチラリと揺れたあと、髪が数本、破片になってチリチリと砕け落ちた。 シャオ「……! なにアルかこれは……!」 ドウ「あらゆる文献を読みあさり、似たような能力について読んだことがある……! パワーを持った像(ヴィジョン)! 本人の精神エネルギーが像を結んで現れたもの! その名前は……! ス――」 ジョアンナ「『もうひとりの自分』ということからッ! アタシはこの能力を……!『セカンド』と、呼んでいるッッ!!」 ドウ「スタン……! え? セカンド?」 ・ ・ ・ [[illustration:https://api.kakippa.com/api/covers/illustrations/5f02bf16-12c5-4480-9d7f-82c77220e38d/1790451039668-853bcd03-3376-4615-ae47-c65063e2f6f7.jpg]]【セカンド名:ムーブ・オーバー】 ジョアンナ「セカンドはセカンドでしか倒せない」 ジョアンナ「そして、セカンドは、セカンド使いにしか『見えない』ッ!」 ジョアンナのセカンド。ムーブ・オーバーがシャオに襲いかかる。 なにかを感じたシャオは、すぐさま地面を蹴り、後方へ大きく跳んだ。 すたっ。 シャオ「ふぅ……」 シャオ「――本気でいくアル」 私流の拳法を、構え直す。 そこに、ユラリと、ジョアンナが近づいてくる。 ドウ「気をつけろ! 俺は殴られたようなダメージの後、身体がガラスになった! つまり、触れられただけで必殺――っ!」 ジョアンナ「そのとおりよォッ! 『ムーブ・オーバー』ッ!!」 ジョアンナは、凄みを放ちながらセカンドを操作する。 ジョアンナ「NO!NO!NO!NO!NO!NO!NO!」 凄まじいラッシュがシャオを襲う。 それを、ぴょんぴょんと、できるだけ距離を取るようにかわしていく。 しかし、ジョアンナの攻撃の手はゆるまない。 次第に、身を隠す場所のない荒野へ、追い込まれていく。 シャオ「――かかったアルね」 ジョアンナ「――なにがよォッ!?」 激昂するジョアンナを、挑発する。 シャオ「――ここが良かったアル。この、建物のない砂だらけのここが、必要だったアル」 ジョアンナ「――どォいう意味よ」 シャオ「見えないのなら……、見えればいいアル!」 ざあああああっ! シャオは、地面をこするように旋回蹴りを放つ。 砂けむりが大量に舞い、辺り一面を覆った。 ドウ「そうか! 考えたな! 砂に覆われれば姿が……!」 ジョアンナ「悪いけど」 ジョアンナ「こっちはそういうルールでやってないのよォ! 『ムーブ・オーバー』ッ! ――NO!NO!NO!NO!NO!NO!NO!NO!NO!NO!ノォォ!」 ムーブ・オーバーがラッシュするたび、空中に舞った砂の一粒一粒が鋭利なガラスとなり、散弾銃のようにシャオを襲う。 シャオ「――っ痛!」 ――まさか! シャオの策が裏目に出た。 さらに、辺りに舞った砂けむりは、セカンドどころか、ジョアンナの姿まで隠してしまった。 シャオがやられる――!! ドウ「シャオ!! 逃げ――」     シャオ「見えないのなら、」 シャオ「見なければいいアル!」 そう言って、シャオは敵前で目を覆った。 今にもジョアンナが襲いかかろうとするその瞬間、ドウもその目を瞑った。 * ――――「気」――――。 体に潜むエネルギー。 私が普段から感じている「気」の流れ。 それを集中させれば―― ドウ「シャオーーーー!」 シャオの眼が見開く! シャオ「そこアル! “発勁”っ!!!」 ジョアンナ「そこよォッ! 『ムーブ・オーバー』ッ!!」 バオオオォォッッ!! 二人の拳で、砂嵐が一斉に晴れる。 ドウがその目を開けるなか、立っていたのは……。 ・ ・ ・     ふたりともであった。     全く同時に、相手の眼前への拳。 寸前で止めたふたりは、微動だにしない。 どちらかが動いたらやられる。 膠着状態《こうちゃくじょうたい》であった。     ジョアンナ「……やるわね、アンタ。名前は?」 シャオ「――シャオ。いつか黒龍を倒すものアル」     * カチャカチャ。 屋台で、シャオが頬を膨らませている。 ジョアンナは、ガラスのティーカップを揺らしていた。 ゴックンッ。 シャオ「へー。ジョアンナは、19才アルかー。私は17才アル!」 ジョアンナ「あら! 近いじゃない! それでさぁー、そんときの彼氏ってのがひっどいやつで……」 なぜだ。 なぜ、女はすぐに仲良くなれる。 ドウには、理解できなかった。 さっきまで殺し合っていたようなふたりが、どういう気持ちで、ティータイムを楽しめるというのだ。 俺にはわから――。 きゃははははは! シャオ「――そんときのハゲが『もう一回やるー! うえええん』って駄々こねてアルなー! ほんとにこどものころから、あのハゲは……」 ジョアンナ「あははは。それ、傑作! ねェー店員さん! 紅茶おかわり!」 シャオ「私も、肉まんあと10個おかわりアル!」 カチャカチャ。 シャオ「――ピンクの髪、すっごいアルなー。地毛アルか?」 ジョアンナ「まっさか! 染めてるわよ。アタシ、モデルと、女優と、ロックバンドでギターボーカルをやってるの。あんまり売れてないけどね」 シャオ「えー! すっごいアルー! あははは!」 ジョアンナ「やりたくないことは絶対やらないけどね。細かい作業とか、絶っ対むり! イライラして、すぐグチャグチャにしちゃうの!」 カチャカチャ。 ドウ「……おい! なに敵同士でなかよくお茶してるんだ!」 シャオ「敵? 違うわよ。アタシたち友達よ」 ジョアンナ「そーアル、ハゲ! ともだちアル! あっははは! おかわり!」 ……理解不能だ。女という生き物は。     ドウ「……わかってくれるのは、お前だけだよ。子パンダ」 子パンダ「キュ?」   カチャカチャ。     ムーブ・オーバーは、ガラスから元の状態に戻すこともできる。ジョアンナが教えてくれた。 ただし、「元の形になるまでガラスを組み合わせれば」、だ。 ドウ「――、すまん、子パンダ。それはティーカップだ。こっちの破片だ」 子パンダ「キュ!」 頭に食器を当てられながら、俺はパズルの指示を出した。 ◆━━━ 最 強 バ ト ル ━━━◆ シャオ vs ジョアンナ・ジョプリン ――――――勝者 引き分け ――――――敗者 ドウ・ナットンジャ

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