最強バトルの人 / 第45話

第28話 おつかれさま!

――王宮、回復の泉。男湯。 「……ふう――――。」チャポン アザだらけの身体に、湯治の湯が染み込む。 気持ちが、いい。体が溶けそうだ。聞けば、この湯には魔力とやらが溶け込んでいるらしい。浸かるだけで、全身の疲労が消えていく。 ――こんな良い物はもらって帰ろう。そう思い、竹の水筒にじゃばじゃばと湯を汲んでいると――。 「――そもそもー!! 生命活動の著しく低下した者に対して、平手による打撃を加えるという行為はー!! 医学的根拠の全くない救命行為であり――!!――」 声が聞こえる。ずっとだ。 この部屋だけでない。王宮中に響くほど大きな声で、もう3時間は怒鳴られている。 老師と、シャオが。 (――……ひとまず今は、湯に浸からせてもらおう――。) ドウは、浴槽のへりに身を預け、目を閉じた――。     * ――6時間後。 ジルハート「――であるからしてー!! 敵が襲ってくるかもしれない状況で弟子たちだけで買い物に行かせると言う行為はー!! 指導者としての責任感の欠如という他なくー!!――」 火鍋「……。」 シャオ「   」 子パンダ「キュウ」 ↑なぜかジルハートに懐いている。 * ――9時間後。 ジルハート「――つまりもってー! 筋肉の成長に最も重要な意味を持つ19才という年齢の若者にー! 腕立て伏せのみを一万回続けられるまで強要すると言う行為はー! 優越的立場を利用した、不当なる精神的圧迫、いわゆるパワハラ的行為と断ずる他なくー!!――」 火鍋「…………。」 シャオ「     」 子パンダ「キュウ」 ↑なぜかジルハートの膝で丸まっている * ――――12時間後。 ジルハート「――クドクドクドクドクドクドー!! クドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドー!! ……と、言うことだ。わかったな。」 火鍋「……………………ぉぅ。」 シャオ「  は   い   アル。 」 子パンダ「zzz……。! キュ?」 ジルハート「ならよし。❝行けい!❞」 カッ カッ カッ カッ―― ジルハートが退室する――。 子パンダ「キュウ」バイバイ 火鍋「――――――――」 シャオ「――――――――火鍋。」 火鍋「――――――――なんだ。」     シャオ「とりあえず、ハゲを、殴るアル」 火鍋「おう。そうだな。」     * ――本当に。本当に本当に、災難でしたね笑―― 私は、兵士から、同情にも似たにやけた顔で、憐れまれた。 もう、日が沈んでいる。 幸いにも、今日のところはお休みください。と、来客用の部屋を貸してもらえたのだ。 ハゲは、すでにその部屋で休んでいるらしい。 火鍋はドウを殴るため、イメージトレーニングとしてシャドーボクシングをしている。その目は本気だ。これが当たったらハゲは本当に死ぬかもしれない。 シャオ「この部屋アル」 火鍋「おう。準備はいいぜ」シュッ シュッ ババババ 子パンダ「キュウ」 ガチャリ ドウだ。 ドウが、寝る前の歯磨きをしている。 ドウ「よお、シャオ。遅かったな」シャコシャコ 火鍋のヤンキーパンチがドウの顔面をとらえる寸前――。 「――――なに、やってるアル!!!!」 ――! 自分でも驚いた。 別に、声を出すつもりはなかったのに。 「――なに、やってるアル」 ハゲの顔を見た瞬間。 自分でもわからぬままに、言葉だけが出る。 火鍋もハゲも、私を見てくる。 私は誰の顔も見られなくなり、下を向いた。 「――ウーミンは。私の仇アル」 ハゲが言う。 「――すまん。しかし、この前も言ったはずだ。俺の仇でもあると――」 「――だったらっ!!」 声が出る。勝手に。 「――だったら、ウーミンなんかにやられてるんじゃないアル」 身体が震える。子パンダが心配している。 私は顔を上げ、目の前のハゲをキッと睨んだ。 「私に勝つんじゃなかったアルか。ウーミンくらいお前の手で倒せアル」 「……。ああ。そうだな」 火鍋が割り込む。 「おい……。ウーミンくらいって、お前の仇じゃ……」 「――早い者勝ちアル!!」 みんなが驚いている。 「――ウーミン倒すのは、早い者勝ちアル」 ハゲが、少し固まった後、ふっと笑った。 おい。笑うなハゲ。真剣だぞ。 「――ああ! 早い者勝ちだ! このドウ・ナットンジャ! 今回は不覚をとったが、次こそは、この俺の千手八脚拳で、ウーミンの野郎をぶっ倒してくれる!!」 「いったなアル!!」 「いった!!」 「私が先に倒すアル!!」 「俺だ!!」 「「――負けないぞ(アル)!!!」」     ふたりで盛り上がっているのを見て、火鍋は居た堪れなくなったらしい。 お……おう。とりあえず復活記念だ。チューハイ、飲むか? と、聞いてきた。 私は未成年アル。 * チュン  チュン 「――――ふわあ」 朝だ。異世界で目覚める朝。 ここまでくるのに、本当に大変だった。 中国とヨーロッパのはざま。 深い霧に覆われたこの大地は、一般に『異世界』と呼ばれる。 空からでは見つけることができない不思議な場所。 火鍋は、若い頃修行の旅をしていたら、偶然見つけたらしい。 この場所を知る者は、かなり少ない。 「――不思議な形の、雲アルね」 「おう。起きたか、シャオ」 振り返ると、ドウがもう着替えていた。 「出発の準備は終わったぞ。着替えに、水。異世界の珍しい食料に、土産の品もある。旅費も、あいつらにもらったカネがまだ残ってる。わずかだが、これを王宮の兵士に渡しておいた。今日こそ、老厨中華飯店に向かおう」 ――行動の早いやつめ。 そうだった。こいつは、こうだった。 なんだか、こいつと旅をするのは久しぶりな気がした。 チラッと横を見る。 火鍋はまだ、昨日のチューハイが残っているようで、ごがあ、ごがあといびきをかいている。 子パンダちゃんも眠っている。     「――まだ、眠いアル」 私も、えい、と布団に潜り込んだ。

運営おすすめ

週間ランキング

全ランキング

反応スコアランキング

もっと見る

PV・ブックマークランキング

もっと見る

更新された連載作品

すべて見る
読み込み中…

新着短編

すべて見る
読み込み中…

作品一覧

読み込み中…

作品ダッシュボード

作品全体の公開状況と、読者からの反応をひと目で確認できます。

作品パフォーマンス

選択期間のPVが多い順

上位5作品
ライブラリ

作品の公開状況と構成

最近の更新

最後に編集した作品

要チェック

公開前に確認したい項目

プレビュー
読者に表示される見た目

表示設定

文字サイズ
100%
背景色
縦書き表示
リッチモード
目次
読み込み中…

キーワードを入力して作品を探しましょう

アクセス解析
アクセス解析データは 5分おき に自動更新されます
読み込み中…
ランクイン記録
通知
通知はありません
地形ブラシ
25
スタンプ
ツール
装飾
表示
100%

世界地図

100%

REACTION SCORE

反応スコアの内訳